蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

次回五輪へ求められる次世代の台頭~U18野球ユーロ~

 コロナ禍で行われた東京五輪。開催の是非が連日報道されていた大会前の雰囲気はなんのその。始まってしまえば、多くの国民がスポーツに夢中になった。コロナで外出が難しい時世も相まって、様々なスポーツが脚光を浴びた。選手みんなが笑顔で競技そのものを楽しむスケートボードは新しいスポーツの楽しみ方や一面を見せてくれたし、女子バスケットボールは体格差で敵うはずのないと思われていた欧米チームに対し互角の戦いを繰り広げた。

 そんな中、日本で一番の視聴率をたたき出したのは野球だった。東京五輪野球決勝・日本-米国の平均世帯視聴率は、関東地区で37・0%。今回の五輪でも分かる通り、日本でも様々なスポーツが台頭し、子供たちにも多くのスポーツが身近になった。それでも野球がここまでの注目を集められたのは喜ぶべきことだろう。

 ただ、野球は次回パリ五輪では競技から外れる。比較的野球の認知が低いヨーロッパ、パリであるだけに野球を開催する意義は大きかったはず。NPBを中心とした日本球界には、今後の世界の球界を引っ張る存在としてもっともっと大切な役割を担っていって欲しい。

 「自国開催の東京五輪で勝てた」「初めて野球で金が獲れた」これで終わりではない。五輪で野球を実施できた意義、今後も復活を目指さなければならない理由をもっともっと発信していって欲しい。日本で、スケートボードやフェンシング、バスケットボールを初めて見た人たちがたくさんいたように、イスラエルなどほかの国では初めて野球を見て、その虜になった人たちがたくさんいるはずだ。WBCでは担えない役割を五輪は持っていると思う。

 

 さて、前回の記事でお伝えしたように、オランダ代表は世界最終予選で敗退。オランダで野球フィーバーを巻き起こす夢は潰えた。東京五輪の結果を見ると、オランダに勝利して出場権を得たイスラエルドミニカ共和国はやはり強かった。メジャー経験のある選手が現役に復帰したり、試合をひっくり返す長打力なども現状のオランダ代表では敵わなかっただろう。こうして考えると、野球復帰が期待されるロサンゼルス五輪までの7年間はオランダ代表の強化のために必要な年月なのかもしれない。

 

U18野球ヨーロッパ選手権

 東京五輪の開催前の7月、ヨーロッパでは高校生世代のU18ヨーロッパ選手権が開催された。結果はオランダの優勝。宿敵イタリアを下しての優勝だった。次回五輪でもヨーロッパのライバルたちを倒さなければ、出場権を得ることができない。まずは、新しい世代で一歩を踏み出した。この大会で台頭してきた選手を紹介していこう。

 

【試合結果】

イスラエル 0 – 18 オランダ

オランダ 5 – 7 イタリア

フランス 7 – 11 オランダ

オランダ 6 – 2 リトアニア

○準決勝

ドイツ 2 – 4 オランダ

イタリア 7 – 5 スペイン

○3位決定戦

ドイツ 10 – 0 スペイン(6回コールド)

○決勝

イタリア 2 – 6 オランダ (試合動画はこちら)

 

 【オランダ代表ロースター】名前・(所属チーム)・年齢

○投手

ブランドン・ヘルボルド (キュラソーネプチューンズ) 16

リック・リズフィック (DSS/キンハイム) 17

コディ・ヘンドリクス (+IF) (オコートクス・ドーグス・アカデミー (カナダ)) 17

クーン・ファント・クロースター (ホーフトドルプ・パイオニアーズ) 17

ドリアン・リッペンズ (L&Dアムステルダム) 18

コノル・プリンス (L&Dアムステルダム) 17

マティス・オーステルベーク (ホーフトドルプ・パイオニアーズ) 17

ステイン・ファンデルスハーフ (HCAW) 17

○捕手

セム・カイパース (DSS/キンハイム) 17

メース・ロベルセ (+ OF) (クイック・アメルスフォールト) 17

ルカ・パストル (L&Dアムステルダム) 18

内野手

マティス・クラウウェル (DSS/キンハイム) 16

レイドリー・レヒト (L&Dアムステルダム) 18

エミルソン・ハスウェル (L&Dアムステルダム) 17

ラファエル・スメーンク (アムステルダム・パイレーツ(ルーキーチーム)) 17

バスティアーン・ファンデルホルスト (L&Dアムステルダム) 18

○外野手

イェッセ・フェルダース (HCAW) 18

マルト・ブレイレフェン (DSS/キンハイム) 17

ロドマー・アンジェラ (キュラソーベースボールアカデミー) 16

パリ・アギレラ・ザヤス (DSS/キンハイム) 17

 

 今回の選手たちはほとんどがオランダ国内リーグのホーフトクラッセでプレーする選手たち。オランダでは、トップリーグのクラブがユースからトップまでチームを編成しており、若い選手でも才能ある選手は16~18歳で1軍に上がりプレーしている。今回、レギュラーで出ていたほとんどの選手は既に1軍を経験した選手が多い。特に、ホーフトクラッセは上位チームと下位チームの戦力差が激しく、若い選手たちは下位チームに所属し、試合経験を早い時期から積んでいる。そこから主力選手になると上位チームに移籍するという流れだ。

 今回のメンバーでは、キンハイムのリズフィックは既に先発ローテーションを任されている左腕だし、キャッチャーのロベルセ、内野手のレヒト、ハスウェルも1軍に帯同し、少しずつ出場機会を増やしている最中だ。

 

 今回のチームの特徴は、投打にはっきりとした中心がいなかったこと。2年前に開催されたU18ワールドカップでは現在カンザスシティ・ロイヤルズ傘下のシングルAでプレーするダリール・コリンズや蘭ツインズでプレーするピーターネラ等、主軸を中心に戦ったが、そうした主軸となれる選手は今回いなかった。細かい継投や、打線をつなぐことで優勝を勝ち取った。その原動力となったのは投打に2人。

 

 まず、投手は大事な場面でのロングリリーフが光ったファンデルスハーフ。長身で長髪、スラっとした身のこなしは、どこかオランダ代表で長年リリーフを務めたファンドリールを思わせる。今回の大会では球速が分からなかったが、速球をどんどん投げ込みながら、曲がりの大きいスライダーを駆使しながら、相手打線を封じ込んだ。先発が下りた後に、ロングリリーフで試合を作り、決勝では3回途中から4イニングを投げ抜き、大会MVPを獲得した。オランダフル代表では、リリーフの中心だったファンミル、スタイフベルヘンがいなくなり、WBCなどの国際大会で勝ち上がっていくためにはブルペンの強化が欠かせない。数年後を見据えてこうしたリリーフ投手が成長するのは必要不可欠になる。

 

 打者でMVP級の活躍をしたのはフェルダース。当初は下位打線や控えに回っていたが、勝負所で打点を挙げ、決勝では4番。終わってみれば打率.500、OPS1.517、3二塁打、2三塁打、10打点と打線の中心として大きな活躍をした。決勝でも1-1で同点の最終7回に、三塁線を破る決勝の2点タイムリ二塁打を放った。きわどい球は見極める選球眼も持っており、中距離打者として今後の活躍が楽しみな選手である。フル代表でも外野は高年齢化が進んでおり、KNBSB(王立オランダ野球ソフトボール協会)は中堅のオデュベルやランペを代表の構想外としている。今後の成長が楽しみな選手である。

 

徐々に原石現る投手陣

 他にも存在感を示した選手は多い。オランダでは若手投手の強化プログラムとして、「ファストボールプロジェクト」というものがあり、有望な選手たちの投球メカニックなどを解析しながら、才能の強化を図っている。時にはアメリカに遠征したり、オランダ本土の強みである投手力の向上に力を入れている。そのメンバーに入っているリズフィックやリッペンズはこの大会でも主力として投げた。リズフィックは決勝イタリア戦で、チェンジアップを駆使し強力打線を抑え込んだし、リッペンズは90マイルを超える速球を投げ込み準決勝のドイツ戦で勝利投手となった。リズフィックは球速、リッペンズはコントロールを鍛えれば、今後の飛躍も期待できる。先に挙げた2人だけでなく、いろんなポジションで今後の希望となるような選手が発見できたのはオランダにとって大きな収穫になった。

 

この「ファストボールプロジェクト」からは、ここ数年MLBの球団とマイナー契約を結ぶ選手も数名出てきている。五輪最終予選に選ばれたフランセン(レッズ傘下)やドニー・ブレーク(ツインズ傘下、7月にリリース)、カシミリ(トロント傘下)などが挙げられるが、今最も注目されているのはトロントブルージェイズ傘下のセム・ロベルセ投手だろう。

 

 ブルージェイズのプロスペクトランキングにも名を連ね、今季はシングルAで12先発5勝4敗、防御率3.90、57イニング2/3で61個の奪三振を記録している。速球は150キロ超をマークし、切れ味鋭いスライダーも素晴らしいものがある。8月9日にはHigh-Aに昇格し、初先発では打ち込まれたが、今後もメジャーの舞台を目指しさらなるステップアップが期待される。

 

背中を追いかけて夢の舞台へ

 こうした期待の存在は投手陣に多いが、ロベルセの背中を追いかける野手が今回のU18のメンバーにいた。同じ名前のメース・ロベルセ捕手だ。なんとセムの実の弟。兄が野球をやっていた影響で4歳のころからメースも野球を始めた。セムが投手だったので、メースは捕手になった。家の庭では毎日のように兄の球を受けていた。そんな兄がアメリカに渡ったのを見て、メースもアメリカの舞台を夢見ないはずがなかった。

 今季、捕手として成長するために、子どものころから所属していたHCAWからクイックに移籍した。HCAWには正捕手のダールがいるし、野手の層も厚い。クイックなら捕手としても打者としても、より多くの出場経験を確保できると考えたからだ。そうした決断を下したのはU18ユーロ、更にはU18ワールドカップが2021年に開催される予定だったからだ。この2つの大会でMLB関係者にアピールし、マイナー契約を勝ち取ろうと青写真を描き、覚悟を決めた。

 ユーロでは全試合に2番でスタメン出場し、打率.292と結果を残した。次は世界を舞台に大暴れするだけだった。ところが、コロナウイルスの影響でワールドカップは延期。来年アメリカで開催される。現在17歳のロベルセは来年も出場できる可能性は残されているが、進路を決めるには1年1年が勝負。マイナー契約を目指し、今季は所属するクイックで捕手としての経験値を磨くしかない。兄のセムは17歳の時に、ホーフトクラッセデビュー。ルーキーとは思えない投球で上位のネプチューンズアムステルダムを抑え込んでいた。2019年のU18ワールドカップには出場していないにも関わらずマイナー契約を勝ち取った。それを考えれば、メースも今年中に契約をとれる可能性は十二分にある。まずはホーフトクラッセで圧倒的な成績を残すしかない。その先に、アメリカでの兄弟バッテリー復活という夢が待っている。

 

 8月24日からはU23ヨーロッパ選手権が開催されるが、そこには2019年U18ワールドカップのメンバーも数名選出されている。優勝したU18メンバーから、この次のU23ユーロやワールドカップに選ばれる選手が出ることをのを大いに期待したい。オランダ野球飛躍のために、次の五輪に向けた戦いは既に始まっている。

 

U23オランダ代表ロースター】 名前・(所属チーム)

○投手 

アーロン・デフロート (キュラソー ネプチューンズ

ラフ・コク (ツインズ オーステルハウト)

ジェイデン・ゴネシュ (シリコン ストークス)

ナウト・クラハト (L&Dアムステルダム

スコット・プリンス (ホーフトドルプ パイオニアーズ)

ジオ・デフラーウ (L&Dアムステルダム

ヤスパー・エルフリンク (HCAW)

クーン・ポステルマンス (ツインズ オーステルハウト)

ケフィン・バッカー (キュラソー ネプチューンズ

○捕手

デイフ・ヤンセン  (ツインズ オーステルハウト)

ヨーディオン・マルティー (シリコン ストークス)

内野手                     

デラーノ・セラッサ (L&Dアムステルダム

タイリック・ケンプ (ツインズ オーステルハウト)

トミー・ファンデサンデン (DSS/キンハイム)

シェディオン・ジャマニーカ (シリコン ストークス)

ダイアモンド・シルベリー (ツインズ オーステルハウト)

○外野手

ユリアン・リップ (HCAW)

マックス・コップス (ツインズ オーステルハウト)

ジアンドロ・トロンプ (HCAW)

ルーンドリック・ピーターネラ (ツインズ オーステルハウト)

悲願のオランダ野球フィーバーへ!2020五輪最終予選

 オランダは自由の国と呼ばれる。街中で大麻が吸える。安楽死が認められており、自らの意思で死を選ぶことができる。LGBTに寛容で、首都アムステルダムでは毎年運河でゲイパレードがある。売春が許されており、アムステルダムの飾り窓地域は夜の街として世界的に有名だ。“自由”を享受するために、ほかのどの国よりもルールが少ない国、とでも言えるだろうか。

 そんな“自由”の国がゆえに、新型コロナウイルスはオランダを大混乱に陥れた。これまで述べた色々な“自由”は、自己責任の裏返し。自分がしたいことはやっていいけど、その責任はちゃんと自分でとってね、ってこと。この“自由”はオランダにおける新型コロナウイルス感染対策で、マスクの着用についても個人の“自由”に委ね、強力な感染対策を講じることができなかった。ゆえに、昨年2020年感染初期のオランダでは爆発的な感染拡大を招いてしまったのだ。人類にとって未知なる感染症の前には、“自由”よりもルールが必要だったのかもしれない。

 

 話しを野球に移そう。オリンピックパラリンピックがコロナ禍により1年延期されたことは周知のとおりだが、蘭球界も“自由”に振り回された。開幕は4月から大幅に遅れ、結局7月末に無観客で開幕(元々観客なんていないだろとは言わせない)。試合数は例年の半分の21試合しかできなかった。また、秋の第2波の直撃により、なんとオランダシリーズは途中で打ち切り。アムステルダムが2勝していたが、2020年の優勝チームはなしということになった。

 オランダでは、毎年国際大会が開催されているが、それも中止。欧州内の国際大会もなかったため、国際大会がなかったのは数十年ぶりではないだろうか。

 

 そんな苦難の年を乗り越え、2021年は延期された五輪が待っている。オランダではまだまだ野球はマイナースポーツ。そんな野球にスポットライトが当たるまたとない機会がこのオリンピックだ。日本ではラグビー日本代表がワールドカップで躍進し、国内でラグビーフィーバーが巻き起こった。それと同じように、どうにかオランダ国内で野球をメジャースポーツにしよう、子供たちが野球に夢をみるような未来を創ろう、という使命を背負って戦っているのが野球オランダ代表だ。これまでのWBCでは2大会連続でベスト4に入り、着実に国内での知名度は上昇しているものの、国内リーグホーフトクラッセの観客動員数が増えたりするまでには至っていない。五輪ともなれば、注目度はWBC以上。オランダで野球フィーバーを巻き起こすには、絶好のチャンスになる。

 

東京五輪への険しい道のり

 

 オランダは2019年に開催された欧州・アフリカ最終予選でなんとイスラエルに敗北し、世界最終予選に回ることになった。最終予選のオランダ以外の参加国は台湾、中国、オーストラリア3か国の辞退により、ドミニカ共和国ベネズエラの2か国だけ。全部で3か国と少なく、オランダにとっては大チャンスが到来だ。ただし、中米の2か国はメジャー経験者を擁しており、客観的に戦力はオランダを上回る。オランダは弱者の戦いができるかがカギとなる。

 発表された五輪世界最終予選、オランダ代表のメンバーをこの通りだ。

 

 

 

〇投手(12人)

ジェイアー・ジャージェンス(メキシコリーグゲレーロス)キュラソー

フアンカルロス・スルバラン(L&Dアムステルダムキュラソー

トム・デブロック(L&Dアムステルダム)蘭

マイク・ボルセンブルーク(ドイツリーグヘイデンヘイム)蘭

ディエゴマー・マークウェル(ネプチューンズキュラソー

ラルス・ハイヤー(HCAW)蘭

オーランド・インテマ(ネプチューンズキュラソー

ケフィン・ケリー(ネプチューンズキュラソー

フランクリン・ファンフルプ(無所属)シントマールテン

シャイロン・マーティス(L&Dアムステルダムキュラソー

ウェルデル・フローラヌス(メキシコリーグタイガース)キュラソー

マイク・フルーン(L&Dアムステルダム)蘭

 

〇捕手(2人)

シクナルフ・ロープストック(無所属)アルバ

ダシェンコ・リカルド(ネプチューンズキュラソー

 

内野手(7人)

ユレンデル・デカスター(キュラソーリーグワイルドキャッツキュラソー

カルトン・ダール(無所属)キュラソー

ドゥエイン・ケンプ(ネプチューンズ)蘭

ジョン・ポローニアス(ネプチューンズキュラソー

ジュレミ・プロファー(無所属)キュラソー

シャーロン・スホープ(L&Dアムステルダムキュラソー

カート・スミス(米独立リンコルン・ソルトドッグス)キュラソー

 

〇外野手(5人)

ロジャー・バーナディナ(ネプチューンズキュラソー

ランドルフ・オデュベル(パイオニアーズ)アルバ

デンゼル・リチャードソン(L&Dアムステルダム)シントマールテン

アデマル・リファエラ(無所属)キュラソー

ジャンディード・トロンプ(イタリアリーグサンマリノ)アルバ

 

◎進まぬ世代交代

 まず、全体的な感想としては世代交代が進んでいないということ。マークウェル投手は41歳、デカスター内野手は42歳で共にアテネ北京オリンピックを経験している大ベテランだ。二人とも代表での経験が豊富で頼りになることは間違いないが、彼らがまだ代表入りしているということはそれを突き上げる若手が出てきていないということ。20代前半ごろから既に彼らが選出されていたことを考えると寂しい気もするが、おそらく最後になるであろう彼らの有志を目に焼き付けたい。

 

 一番の弱点は中継ぎ陣の手薄さ。これまでの国際大会でもオランダ代表の投手層の薄さは勝負所で大きな弱点となってきたが、ベスト4まで勝ち上がったWBCの際は勝ちパターンが定まっていた。オランダ国内では最高峰の投手スタイフベルヘン、ファンミルの存在があった。なんとかのらりくらりでも彼らまで継投すれば、ある程度は勝利が計算できていた。しかし、今回は守護神もリリーフエースもすぐに名前を挙げられるほどの存在がいない。恐らくは代表経験豊富でWBCでも7回参考記録ながらノーノーを達成したこともあるマーティスがクローザー。その前に現在メキシカンリーグでプレーしているフローラヌスや、ネプチューンズで長年クローザーを任されているケリーが投げることになるだろう。しかし、マーティス以外の二人は国際大会での経験が未熟で安心して任せられる投手とは言えない。彼らの状態次第ではホーフトクラッセ(オランダ野球トップリーグ)でもクローザーの経験があり、150キロ超えの速球を投げられるデブロックを後ろで起用するのも検討すべきだろう。

 

 ただし、先発投手陣も一筋縄ではいかない。確定的なのは元メジャーリーガーで代表でも中心投手のジャージェンス、マイナーでの経験が豊富なスルバランぐらいか。ほかにはデブロック、ボルセンブルーク、ハイヤー、マークウェルら国内組が控えているが、ドミニカ共和国ベネズエラを抑えるのは至難の業だ。

また、今回は大会のフォーマットや対戦相手の戦況を把握しながらうまく起用していくことも重要になる。この最終予選はまず3チームの総当たり。そしてオランダのベネズエラとの初戦は、大会2試合目になる。初戦は全力で勝ちにいくにしても、もしオランダが初戦に負けてしまえば、次のドミニカ戦に勝ったとしても自動的に敗者復活戦に回らざるを得ない状況も考えられる。そうした際は、大会3試合目には主戦級の投手を休ませるなど状況に応じた投手起用が求められるだろう。

 今回はMLB傘下でプレーする選手を呼べなかった影響もあり、全体的に投手層が薄くなったことは否めない。人数的にも、投手は12人しかおらず、野手を1人減らし、投手を増やすべきだったようにも思う。日程を考えると4連戦になる可能性もあるため、中心となる投手は大事な場面では連投させるなど巧みな投手運用ができるかが見どころになる。

 

◎主砲カリアン・サムスの不在

 一方の野手陣。今回のサプライズは長年代表の中軸を担ってきたカリアン・サムスの落選。年齢的にはすでに35歳を迎えるシーズンに入っており、代表の一線を退くには不思議でない年齢だが、国内にも、マイナーの選手にも、彼に代わるような選手は出てきていない。昨年のホーフトクラッセでは20試合で8本塁打を放っていた。ここをどう埋めるかが課題になる。

 コロナ禍でマイナーリーグの縮小などのあおりを受け、フリーエージェントになっているリファエラやトロンプ、パドレスでプレーするジュリクソン・プロファーの弟ジュレミらがどこまでサムスの穴を埋める活躍ができるだろうか。今回もまだまだ大ベテランのデカスターに頼る必要がありそうだ。

 ホーフトクラッセからの選出で楽しみなのはアムステルダムでプレーするリチャードソン。普段はジムのインストラクターなどをこなしながらプレーするシントマールテン出身の選手だが、身体能力に溢れたプレーで昨年は21試合の出場で5本塁打。今年もここまで打率.444、本塁打4と絶好調。マイナーリーグ時代は活躍できなかったが、今オランダで花開いている選手だ。スピードある守備も魅力な選手なので、スタメンでも十分働けるはずだ。

 

◎野球フィーバーへの通過点

 ここまでざっくりと選出された選手たちを見てきたが、あまり楽観視できない戦力なのは見てのとおりだ。お世辞にも全勝で最終予選を突破する未来図は予想できない。2009年のWBCでは、たった2人しかメジャーリーガーがいない中、ドミニカ共和国に2度勝利し、2次ラウンドへ進出した。あの戦いのように、投手を小刻みにつぎ込み、少ないチャンスをものにするしか勝機はないのではなかろうか。

ただし、何度も言うように今回は超短期詰め込み日程。先発させた投手は、再度登板させることは不可能に近いし、それを12人でやりくりしなければならない。投手陣の中心となるデブロックを先発として使うのか、リリーフとして大事な局面で数試合使えるようにするのか、個人的な注目点を最後に挙げておきたい。

 

 コロナ禍で“自由”を奪われたオランダに野球フィーバーを巻き起こすための通過点となるこの最終予選。本戦に進めばマイナーリーガーやNPB選手を招集できる可能性もある。オランダ野球フィーバーへの挑戦、第1歩が間もなく始まる。

 

 

 

 

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 2017年WBC時に書いたオランダ代表に関するコラムもご覧ください。これを読むとオランダ代表のざっくりとした歴史や構成がわかります。

『バレンティンら強打者そろうオランダ代表 WBCで目指す“野球フィーバー”』

2017WBCオランダ代表選手名鑑

 「オランダ王国」は、みなさんがご存知の「オランダ」とは多少差異があります。「オランダ」とは「オランダ王国」の構成国の一つに過ぎません。この中には他に、「キュラソー」や「アルバ」「シントマールテン」といったカリブ海の国も加わります。これら4つの国は互いに対等な立場で「オランダ王国」を構成しています。よって、マスメディア等でしばしば「オランダ領」と称される「キュラソー」や「アルバ」は、正確には「オランダ領」ではございません。

 日本球界でもお馴染みのバレンティンが前回のWBCにオランダ代表として出場していたのを見て、不思議に思われたかともいるでしょう。つまりWBCオランダ代表は、「オランダ王国」代表だったのです。

 

 ですので野球オランダ代表には白人も黒人もまぜこぜです(もちろん「オランダ」にも黒人の方はいます)。オランダ人、キュラソー人、アルバ人などなど、様々な地域で育ち、様々な文化を持ち合わせる選手たちが「オランダ王国」という名のもとに団結し情熱をかけてプレーしているのもオランダ野球の魅力の一つです。

 また、彼らの中にはオランダ国内リーグホーフトクラッセセミプロとして活躍する選手。はたまた、アメリカのMLB傘下でプロとして活躍する選手が存在します。こうした異なる舞台、レベルでプレーする選手たちが一堂に会して優勝を目指すのはなんともロマンがありませんか?

 昨年、オランダ代表はユニフォームのデザインに微修正を加えました。今まではオランダを意味する「NEDELAND(ネーデルランド)」と胸に表記していました。が、今回の修正で「Kingdom of the Netherlands(オランダ王国)」とし、キュラソーやアルバなども含めた意味にしました。

 選手もさることながら、コーチ人の顔ぶれも「地域色」豊かです。監督がMLB日本、韓国でもプレーした「キュラソー」人のヘンスリー・ミューレンス。ヘッドコーチがベルギーからキャリアを求めて「オランダ」に渡ったスティーフ・ヤンセン。打撃コーチが「オランダ」球界のレジェンド、シドニー・デヨング。1塁コーチ、3塁コーチがそれぞれ「キュラソー」のベン・セイセン、「アルバ」のヴィム・マルティナス。「オランダ王国」総出の、コーチング体制が築かれています。もちろんそれは代表候補の選手たちもそのような構成になっているからです。

 

 更には、皆さんご存知のアンドリュー・ジョーンズ(元楽天)がコーチングスタッフに入閣。日本球界の選手たちを熟知しているAJが入ったことで日本戦も厳しい戦いになるのは間違いないでしょう。

 それでは、「オランダ王国」のもとに集まった代表選手たちをご紹介します。

 

【例】

○名前日本語/ローマ字 身長/体重 生年月日 年齢

所属チーム 投打 「出身地」

 

【投手】13人

〇リック・ファンデンハルク(バンデンハーク)/Rick van den Hurk 198cm/105kg 1985年5月22日31歳

 福岡ソフトバンクホークス 右右 「オランダ」

 オランダのエース。 皆さんご存知の通りNPB福岡ソフトバンクで活躍しているオランダ人助っ人だ。ストレートは常時150キロ超え。変化球はスライダー、ナックルカーブ、チェンジアップ。特にナックルカーブは決め球にも使える伝家の宝刀。1番の武器はストレート。本人も自信を持っているようで、三振をとるのもほとんどストレート。

アイントホーフェン出身。16歳でメジャーリーグフロリダマーリンズと契約。2007年にはメジャーデビューをはたします。しかし、三振を取るだけの球威はあるものの、一発病と制球難に悩み、メジャーには定着できずにいました。 転機が訪れたのは2012年、移籍していたパイレーツAAAでのこと。投手コーチとともにオーバースローからスリークウォーター気味にフォームを修正。ストレートの球速が伸びるとともに、決め球のスライダーの曲がりが格段に大きくなりました。この年はAAAで13勝を挙げ、リーグMVP。韓国サムスンへ移籍する足掛かりとなります。

サムスン1年目は右肘の故障に悩まされ7勝に終わりますが、韓国シリーズで大活躍。そして、2年目には元横浜などの門倉投手コーチとももに取り組んできたフォーム改造が実を結び、先発の柱として連覇に貢献。個人成績でも最優秀防御率奪三振王を獲得しました。

来日後の活躍については御周知のとおり。来日から14連勝の記録を作った。オランダ代表は2009年WBC以来の2大会ぶり。投手陣の中心としてチームを引っ張る。

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リック・ファンデンハルク

 

○ロビー・コルデマンス/Rob Cordemans 190cm/93kg 1974年10月31日42歳

 L&Dアムステルダムパイレーツ 右右 「オランダ」

オランダ球界のレジェンド。WBC3度、オリンピック4度出場と、輝かしい経歴を持つ。球速以上に威力のある真っ直ぐと、伝家の宝刀チェンジアップが特徴。2011ワールドカップではキューバを八回途中まで2安打1失点で勝利投手。

チェンジアップは抜いた球と落ちる球の二種類を投げ分ける。日本ファンには鳥谷に先頭打者ホームランを打たれたことで記憶されてるかもしれないが、それ以降は投球スタイルを多少チェンジ。カーブを有効に使うようになった。それが功を奏してか、2015年春の対侍ジャパン戦では先発して2回をきっちりと零封した。

ピッチングへの探究心は40歳を超えても大きくなるばかりだ。代表でもチームでも若手へ指導、ノックもこなす。昨年は右肩の疲労からシーズンの終盤まで投球を控え、チームにはコーチとして尽力した。7月のハーレムで復帰したが、オランダシリーズでは優勝決定戦で5回3失点。チームを優勝に導くことはできなかった。昨秋の侍ジャパン戦も不参加だったが、状態はどこまで回復しているのか。球種はストレート(130前半)、カーブ、チェンジアップ。

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○ディエゴマー・マークウェル/Diegomar Markwell 188cm/88kg 1980年8月8日36歳

 ロッテルダムネプチューンズ 左左 「キュラソー

オランダの左腕エース。この人も長年代表の主力として活躍している。WBCで韓国戦やキューバ戦の勝利投手だったのも彼。世界一ドミニカ戦でも中盤までしっかりと試合を作った。侍ジャパン首脳陣も彼を一番警戒していたという話もあり、メッツなどの複数のメジャー球団が彼に興味を示した。

スリークォーター気味に投げ込み、スローカーブを効果的に使って打たせてとる。ロングリリーフもこなす使い勝手のいい投手だ。

昨季のオランダシリーズでは相手エースのコルデマンスと対決し、同じく5回3失点。ベンチでは怒りをあらわにし、グラブを投げつけた。昨秋の侍ジャパン戦では第2戦に先発し3回を1失点にまとめた。今大会では先発もしくは第2先発の役割になるだろうが、フル回転の活躍が求められる。球種はストレート(130中後半)、カーブ、スライダー、チェンジアップ。

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ディエゴマー・マークウェル

 

○マイク・ボルセンブルーク/Mike Bolsenbroek 203cm/95kg 1987年3月11日29歳

  レーゲンスブルクレギオネーレ 右右 「オランダ」

ドイツ代表経験もある異色なオランダ人右腕。18歳でオランダ・ホーフトクラッセでデビューを果たす。ホワイトソックスにドラフト指名されるも断り、ドイツの強豪レギオネーレへ。翌年ドラフト外フィリーズとの契約を掴む。3年間マイナーでプレーするもリリースされ、次の活躍の舞台として選んだの再びドイツだった。レギオネーレのエースに成長し、2012年のWBC予選ではドイツ代表として出場した。

しかし、彼の活躍を嗅ぎつけたオランダ野球連盟は彼にオファーをかけた。2014年のハーレムベースボールウィーク(オランダ主催の国際大会)では初めてオランダ代表入りした。また、その年の欧州野球選手権ではローテを守り、ギリシャ戦で7回ノーヒットノーランの活躍でMVP候補にもなった。昨季は東京六大学選抜相手に7回を4安打6奪三振無失点に抑えており、今大会は第2先発としてロングリリーフを任せられることになるだろう。

 侍ジャパン戦の解説をした福岡ソフトバンク和田毅投手は彼のストレートの球威を評価。ストレートは140キロ中盤を誇り、落ちる球で三振をとる本格右腕だ。

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マイク・ボルセンブルーク

 

○ジェイアー・ジャージェンス/Jair Jurrjens 185cm/90kg 1986年1月29日30歳

 フリーエージェント 右右 「キュラソー

アトランタブレーブスでメジャーリーガーとして活躍した投手。今回はエース格か。2009年には14勝を挙げ、通算でも53勝。2011年5月には月間MVPを獲得し、オールスターにも選出された。現在のオランダ球界では最も輝かしい経歴を持つ投手だ。今シーズンはコロラド・ロッキーズと契約しメジャーにも復帰したが、結果を残せず降格。そのまま解雇になってしまった。ストレートは140中盤だがスライダーなどを低めに制球し、ゴロを打たせていく。高めの釣り玉などを使い三振も取れる。メジャー時代の輝きをオランダ代表で取り戻せるか。

 昨年のプレミア12ではキューバ戦に登板したが、チームを勝利に導くことができなかった。大会を途中でリタイアし、不完全燃焼。侍ジャパンとの強化試合では、第1戦に先発し得意のチェンジアップで侍打線を苦しめた。WBCでアピールしMLBに返り咲きたい。

 

○フアン・カルロス・スルバラン/Juan Carlos Sulbaran 188cm/99kg 1989年11月9日26歳 カンザスシティ・ロイヤルズ(AAA) 右右 「キュラソー

何度もオランダ代表に入っているプロスペクト。今年はAAAまで昇格した。2009WBCではアメリカの強打者たちに強気のピッチングを披露していた。だが、その後の代表では2012年のユーロで打ち込まれたりとあまり活躍できていない。特徴はストレート、スライダー、チェンジアップのコンビネーション。ここ2年ほどで磨きがかかってきた。球速は140中盤ほどであるが、それゆえ力で押そうとすると打ち込まれる場面も。

 昨年のプレミア12では大事な場面でのロングリリーフが期待されたが、いい働きはできなかった。期待されてきたプロスペクトも既に27歳。美人メキシコ人妻のためにも代表で結果を出してメジャーへの足掛かりにしたい。

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フアンカルロス・スルバラン

 

○シャーロン・マーティス/Shairon Martis 185cm/102kg 1987年3月30日29歳

 リンカーン・ソルトドッグス(米独) 右右 「キュラソー

若い頃から長年代表を経験してきた右腕。WBC2回出場、MLBでも26試合登板した。昨年は台湾で28試合8勝7敗の成績を残した。2006WBCでは7回参考記録ながらノーヒットノーランを達成した。落ちるスライダーが武器。調子が悪いと球が真ん中に集まる制球難が欠点。ここ数年は急速が目に見えて落ちており、侍ジャパンとのグローバルマッチ第1戦で敗因となったピンチを作ったのはこの人。球種はストレート、スライダー、チェンジアップなど。

 プレミア12では、球速の状態が戻りロングリリーフで活躍。145キロ前後をマークしていた。ノックアウトされた先発の後を継ぎ、ロングリリーフとして勝利を手繰り寄せる働きを見せた。

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シャーロン・マーティス

 

ルーク・ファンミル/Loek ven Mil 216cm/120kg 1984年9月15日32歳

 ロッテルダムネプチューンズミネソタ・ツインズ(AAA) 右右 「オランダ」

全世界の野球選手で最高身長の216cm右腕。昨年は楽天で7試合に登板した。角度あるストレートは威力万点で最速は150前半。高速のカッターも投げ込む。ウインイングショットは落差あるスプリットだ。

日本では星野監督の指導の下、カーブも覚えた。制球力が課題だ。2015年はホーフトクラッセネプチューンズに復帰し、守護神を務め防御率は圧巻の0.36。オランダ主催の国際大会にキューバ目当てで訪れていたツインズスカウトの目にとまり、アメリカに復帰したが、再びリリースされオランダに戻ってきた。ここ2年はシーズンオフにオーストラリアウィンターリーグに参加し、守護神として活躍。リーグのオールスターにも選出された。

2016年もネプチューンズの守護神として君臨。17試合8セーブをマークし、2年連続でオランダシリーズの胴上げ投手となった。今大会はドジャースヤンセンが辞退したため守護神役が期待される。

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ルーク・ファンミル

 

○トム・スタイフベルヘン/Tom Stuijfbergen 190cm/115kg 1988年9月26日28歳

 コレンドン・キンハイム 右右 「オランダ」

オランダの次期エース候補。18歳でミネソタツインズと契約し、オランダ代表でも20歳の頃からプレーした。兄も元オランダ代表の投手。2011ワールドカップでは最優秀防御率に輝き、大会を通じて無失点だった。1年前にトミージョーン手術を受け、昨年1年間はリハビリに費やした。夏、ホーフトクラッセプレーオフで復帰すると、9月の欧州野球選手権では、決勝のイタリア戦で1アウト満塁の場面をリリーフし2者連続三振。オランダの優勝に大きく貢献。

ストレートは重さがあり、WBCではドミニカ共和国オルティスからも三振を取った。侍ジャパンとのグローバルマッチ第2戦ではフォーシームとツーシームのコンビネーションのみで、嶋と山田哲人を2者三振にとり、最後を締めた。落差の大きいスライダーをウイニングショットにもできる。

幾度となく軽度の故障を繰り返す。今シーズンも何度も怪我で離脱しシーズン通しての活躍はできなかったが、ハーレムでは先発陣の中心として活躍。決勝の日本戦でも5回を無失点。体重を落として怪我を少なくすれば、正真正銘代表の中心投手になれるはずだ。球種はフォーシーム(最速150弱)、ツーシーム、スライダー、チェンジアップ。

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トム・スタイフベルヘン

 

○オーランド・インテマOrlando Yntema 190cm/81kg  1986年2月21日30歳

 ロッテルダムネプチューンズ 右右 「ドミニカ共和国

オランダ人の父を持つドミニカ出身の右腕。2重国籍。2010年のインターコンチネンタルカップから代表入りした。昨年はホーフトクラッセ最優秀防御率を受賞、チームの優勝に大きく貢献した。先発も中継ぎもできるパワーピッチャー。重いストレート、落ちるスライダーが特徴。このスライダーの出来次第でこの投手の調子が左右されると言っても過言ではない。2011ワールドカップではスライダーが低めにことごとく決まり、キューバ戦で勝利投手になった。2016年シーズンでははノーヒットノーランを達成した。ストレートは140前後。

課題はフィールディング。2015年のプレミア12のアメリカ戦で中継ぎ登板すると投ゴロ処理で2度暴投し、敗戦の原因になった。

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オーランド・インテマ

 

○ジム・プルーヘル/Jim Ploeger  190cm/102kg 1991年6月21日25歳

 HCAW 左左 「オランダ」 リリーファ

今シーズンからオランダホーフトクラッセに復帰した若手左腕。2009年にはオランダ野球ソフト協会の最優秀若手投手賞を受賞し、同年には早くもワールドポートトーナメントにて代表入りしていた。その後は一度も選出されず、その間2011~2014年はアメリカの大学でプレー。復帰した今季はBクラスのチームで一際目立った活躍をして、再びワールドポートトーナメントで代表へ復帰した。長年のオランダ代表の課題である左腕投手の不足に彼が穴を埋めることができるのか。何より目立つのが奪三振数。

 今季は代表で初の先発を経験。ハーレムとユーロで2度先発し、しっかりと勝ち投手になった。マークウェルの後釜として成長中の投手だ。

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ジム・プルーヘル

 

〇ラルス・ハイヤー/Lars Huijer 1993年9月22日23歳

 パイオニアーズ 右右 先発

 2年前まで4年間アメリカマイナーの有望株として活躍していた若手右腕。昨年、スプリングトレーニングの時点で自らのキャリアを見直しオランダに帰国。2015年冬には台湾のアジアウィンターリーグにヨーロッパ代表として参加し、チームのエースとして活躍。NPBKBOCPBL等のアジアのプロ選手の2軍相手に好投を見せ、飛躍へのきっかけをつかんだ。今季は最多勝最多奪三振を獲得し代表にも初選出。ハーレム、ユーロの両大会で先発として奮闘。ユーロ決勝では病み上がりのベテランコルデマンスの後を継ぎロングリリーフ。チームのサヨナラ勝利へ結びつけた。

 持ち球はスライダー、チェンジアップ。高速チェンジアップ気味の落ちる球は効果的。ファストボールは140キロ前後。

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ラルス・ハイヤー

 

〇トム・デブロック/Tom De Blok 1996年3月8日20歳

 アムステルダム 右右 リリーフ 

 17歳でシアトルマリナーズと契約した超有望株。しかし、1年目のスプリングトレーニングで数週間を過ごした後、契約を解除し帰国。本人曰く、アメリカで野球が仕事でしかなく、オランダのように楽しく野球がプレーできなかった。

 帰国後は1年目からホーフトクラッセ1軍デビューし、下位のHCAWに所属しながらも上位チームの強打者相手に球威ある真っすぐを投げ込み、三振を奪っていた。2014年にはU23ワールドカップで代表に初選出。世界の舞台を経験する。昨年からはオランダリーキーリーグ時代に所属したアムステルダムパイレーツに復帰し、リリーフエースとして活躍すると、今季は守護神に定着。クラブ対抗のヨーロピアチャンピオンズカップでは、胴上げ投手になった。

 持ち味は何といっても93、94マイルを計測する真っすぐ。変化球としては大きなスライダーがある。シーズン最後は、オランダシリーズで相手に勝ち越し点を許し、優勝を逃した。昨年の侍ジャパン戦での投球に目を付けた楽天が彼をトライアウトし合格をもらったが、本人の意思でオランダに残ろことを決意した。今回さらなる快投を見せれば、NPBMLBからオファーが来る可能性もある。ファンミルらとともに勝ちパターンのリリーフとして期待がかかる。

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トム・デブロック

 

【指名投手枠】

○ケフィン・ヘイステック/Kevin Heijstek 193cm/97kg 1988年4月19日28歳

 L&Dアムステルダムパイレーツ 右右 「オランダ」

オランダの次世代エース。2013年はホーフトクラッセ最優秀防御率、2015年は最多勝を獲得。2014ユーロではエース的な役回りでチームの優勝に貢献した。伝家の宝刀は落差の大きいカーブ。2013WBCでは日本戦で失点は許したものの、変化球などで日本の打者を翻弄した。

ストレートは140前後だが、キューバ人で2014MLB新人王のアブレイユやロッテのデスパイネを空振り三振にとったこともある。是非とも日本で見てみたい投手の1人。

2016年は開幕からコルデマンスが不在の中、一人でチームを引っ張り、クラブ対抗のヨーロピアカップでは決勝に登板し、西武に入団したキャンデラリオに投げ勝った。ただその試合の守備中に脚を故障し、残りのシーズン全休を強いられた。WBCへ向けてリハビリに励み指名枠に入り込み、代替選手の一番手に上がるだろう。球種はストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップ。

 

○ベリー・ファンドリール/Berry van Driel 193cm/90kg 1984年12月26日32歳

ロッテルダムネプチューンズ 右右 「オランダ」 リリーファ

「オランダ」のリリーフエース。2014年オランダシリーズのMVPにもなった。最速140キロ代後半を誇るまっすぐはキューバの強打者も振り遅れてしまう。近年は成績が落ち着いてきてはいたものの、2014年後半に始めて先発を経験し、先発に適用。アムステルダムとのオランダシリーズでは王手をかけられた2試合に先発し、どちらの試合でも勝ち投手になった。カウントを稼ぐスライダーとともに、決め球には落差あるスプリットも使う。今季は怪我の影響もあり、少し不調だった。

 プレミア12でもリリーフとして活躍。味方守備に足を引っ張られ、決勝トーナメント敗北に繋がる失点を許したが、国内経験のみでも世界に通用することを示した。

 

〇ケヴィン・ケリー/Kevin Kelly

 ネプチューンズ 右右 リリーフ

 オランダの強豪ネプチューンズのリリーフエース。キュラソー出身で2013年までアメリカの大学で勉学にいそしみながら野球をプレーしていた。その間に、オランダ開催のワールドポートトーナメントにキュラソー代表でした経験も持つ。

 その後、大学卒業を機にオランダホーフトクラッセネプチューンズへ入団。入団当初から、リリーフとして活躍。オランダ入り後1年目で代表に選ばれた。国内組だけでの編成の代表ではしばしば招集されていたが、米マイナー組も含めた代表では昨年の侍ジャパン戦で初招集され、鈴木誠也に満塁弾を浴びた。

 ファストボールは90マイルを超える球威が魅力。

 

○ヴェンデル・フローラナス/Wendell Floranus 180cm/72kg 1995年4月16日20歳

 ボルティモア・オリオールズ(Rk) 右右 「キュラソー」リリーファ

Rkでプレーしていた若手リリーファー。ところが今季終了と共に解雇された。今シーズンは4年間プレーしたうちでも最高に近い成績を残しただけに残念だ。再就職のためにも将来性をかっての招集か。2014ユーロ、プレミア12に続いての代表入り。90マイル以上を計測するスピードが持ち味だが、どんな変化球があるのか、詳細は不明だ。

 大谷翔平に屋根に突き刺さる大飛球を打たれた投手。

 

バイロン・コルネリッセ/Bayron Cornelisse 1993年11月4日23歳

 ファエッセン・パイオニアーズ 右右 「オランダ」 クローザー、リリーファ

2012年、パイオニアーズにて19歳でデビュー。ルーキーイヤーに19試合に登板し防御率0.00、3勝1敗8セーブの成績で守護神の座を掴んだ若武者だ。2009年彼が野球アカデミーに参加した時のコーチが、以前オランダ代表のクローザーとして活躍していたポール・アネ。パイレーツやパイオニアーズでコーチの経験があるアネから、クローザーとしての技を教え込まれた彼もクローザーを目指すようになった。

福岡ソフトバンク森唯斗のように思い切りよく投げ込んでくる。落ちる高速スライダーも武器。数年前にはメッツのスカウトが興味を示していたとの噂も、、、

オランダ主催の国際大会では、代表で中継ぎエース的な役回りを任されるが、昨年のプレミア12ではいい活躍ができなかった。球速も140キロ前後。鮮烈なデビューから、さらなる成長が求められる。

 

【捕手】2人

○ショーン・サラガ/Shawn Zarraga 182cm/111kg 1989年1月21日27歳

 ロサンゼルス・ドジャース(AAA) 右両 「アルバ」

現在のオランダ球界ではナンバーワン捕手。2010年のIBAFインターコンチネンタルカップでオランダ代表に初選出。その後は2011ワールドカップ、2014ユーロ選手権で代表に選ばれている。2010、2011の代表の際は、当時の正捕手で現打撃コーチのシドニー・デヨングに才能を見込まれ、打撃からキャッチングに至るまでみっちり指導を受けた。プロ入り前には全世界の若武者がホームラン競争を行うパワーショーケースで長打力を見せつけた。近年はその長打力は少し影を潜めているが、両打席からシュアな打撃でコンスタントにヒットを放つ。2014ユーロではしっかりと投手陣をリード。

 プレミア12では代表で初本塁打。手首を痛めながらも強行出場し、正捕手として背中でチームを引っ張った。今季はアメリカでも初めてメジャーのベンチに入り、出場はなかったが夢の舞台へ一歩近づいた。

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ショーン・サラガ

 

○ダシェンコ・リカルド/Dashenko Ricardo 182cm/93kg 1990年3月1日26歳

 コレンドン・キンハイム 右右 「キュラソー

守備型キャッチャーで、2013WBCでの正捕手。WBCでは的確なリードでチームをベスト4に導いた。オリオールズジャイアンツでプレーしたが、課題の打撃がふるわず解雇になり2014年からホーフトクラッセへ。2014年はホーフトクラッセでも打率は上がらず.266だった。が、2015年は一転。打撃が開花し、リーグ2位の打率を残した。痛めていた肘も少しずつ回復に向かっているようで、盗塁阻止率は.390。サラガのバックアップとして、守備固の起用が予想されるが、近年の打力向上によりスタメンも十分考えられる。

 今季途中に突如引退を表明。キュラソーに帰ると表明したが、結局オランダに残り最後までプレーした。来季からは米独立リーグでプレーする予定だ。

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ダシェンコ・リカルド

 

【内野】8人

○クルト・スミス/Curt Smith 177cm/95kg 1986年9月9日30歳

リンコルン・ソルトドッグス(米独) 右右 「キュラソー」 ファースト

広角に打ち分ける中距離ヒッターであり、代表のオランダ代表の主軸。2011年ワールドカップでは3本塁打で、打点王とMVPを獲得。リーチが長くボールを拾って本塁打にするパワーを持ち、大事な場面で打点を稼ぐ勝負強さが特徴である。2013WBCでも5番、6番に座りクリーンナップが残したランナーをしっかりとホームへ帰していた。例えるとイ・ボムホか。2015年の侍ジャパンとのグローバルマッチでも来日し、藤波ら日本の投手から初戦は3安打の固め打ち。彼のコンパクトで無駄のないスイングは秋山幸二中畑清をも唸らせた。

 2016ユーロでも主軸として活躍し、打率.364と打ちまくったが、今回の強化試合は毎年恒例のニカラグアウィンターリーグに出場するため欠場。

 今大会では6、7番として残ったランナーを返す役割が期待される。

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クルト・スミス

 

○ユレンデル・デカスター/Yurendell de Caster 182cm/97kg 1979年9月26日37歳

 カンペチャ・パイレーツ(メキシコ) 右右 「キュラソー」 サード、セカンド、ファースト、外野

まだまだ元気なベテラン選手。2009WBCではサードで美技を連発し、日本のファンをも驚かせた。ダイナミックな守備と鉄砲肩が武器だが、年を重ねた現在は外野も器用にこなす。バッティングでもパンチ力を秘めており、2009WBCではクリーンナップを打ち、ドミニカ共和国戦でサヨナラ打を放ったのもこの人だ。2014年のニカラグアウィンターリーグでは打点王を獲得し、老け込む様子は見られない。侍ジャパンとのグローバルマッチで、彼が松葉投手から放った3点本塁打を覚えていらっしゃる方も多いはずだ。使い勝手のいい万能選手である。

 侍ジャパン戦では3番として大爆発。日本の解説人をうならせた。今大会は代打の切り札として期待したい。まだまだ衰えを見せていない。

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ユレンデル・デカスター

 

〇ジュリクソン・プロファー/Jurickson Profar 1993年2月20日24歳

テキサス・レンジャーズ 右両 「キュラソー

 トッププロスペクトとして名をはせるメジャーリーガー。アンドリュー・ジョーンズに憧れて野球を始め、2004年にはリトルリーグ・ワールドシリーズでエースとして活躍しチームを躍進させ、準優勝に輝いた。帰島すると島はお祭り騒ぎだったとか。

 内野手としてテキサスレンジャーズと契約すると、メジャーの有望株として名をあげられるようになった。2013年のWRBCでは球団の許可が下りなかったのか、最初から出場することはできなかったが、けが人の代替として準決勝にのみ出場した。

 オランダのメジャー有望株の内野手たちが次々と活躍していく中、ここ数年は伸び悩んでいる。今回の代表選ではメジャーリーガーとしてレベルの高いプレーを期待したい。

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ジュリクソン・プロファー

 

〇ディディ・グレゴリウス/Didi Gregorius 185cm/84kg 1990年2月18日26歳

 ニューヨーク・ヤンキース 右左 「キュラソー/オランダ」

 ヤンキースのレジャンドジーターの後継者。高い身体能力を生かしたショートでの守備とパンチ力を秘めた打撃が売りの選手だ。

 2011年IBAFワールドカップでオランダが優勝した時以来の代表入り。当時は、2番ショートとして美技を披露しチームの優勝に大きく貢献した。

 メジャーリーグでのキャリアはシンシナティレッズで始まり、ダイヤモンドバックスで2年間ショートのレギュラーとして奮闘した。その後チームのキャプテンであり正ショートのジーターが引退したヤンキースに後継者と目されてトレード移籍。移籍1年目は安定した守備でレギュラーを勝ち取ると、2年目の昨季は打撃力が向上し20本塁打を記録した。

 6年ぶりの代表入りと打棒、守備双方に期待できる。

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ディディ・グレゴリウス

 

アンドレルトン・シモンズ/Andrelton Simmons 188cm/77kg 1989年9月4日 27歳

ロサンゼルスエンジェルス 右右 「キュラソー

世界ナンバーワンショート。ゴールデングラブ賞をはじめとしたメジャーの守備関連の賞の常連だ。投手として160近いボールを投げていた強肩をいかしたダイナミックなプレーが自慢だ。

 ドラフト時、各球団が投手として彼を指名する中、唯一内野手として指名したのがブレーブス。3年目にメジャー昇格を果たすと、月間優秀新人賞を獲得するとその勢いのままレギュラーを獲得した。2013年にはオランダ代表に初招集。1番ショートとして全試合に出場すると、キューバ戦では値千金の同店2ランホームランを放つなど大活躍。その試合にサヨナラ勝利したオランダはベスト4入りを果たした。

 その後はメジャーの舞台でナンバーワンショートの称号を自分のものにする活躍で日本のファンにも知られる存在になった。相手ファンもあんぐり、うっとりするような美技を今回も披露してくれるだろう。

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アンドレルトン・シモンズ

 

〇ヨナサン・スホープ/ Jonathan Schoop 185cm/88kg 1991年10月16日25歳

ボルティモアオリオールズ 右右 「キュラソー

パンチ力を秘めた大型セカンド。メジャーの舞台で3年連続2桁本塁打、昨年は162試合に出場し25本のホームランを放っているスラッガーだ。ヤンキース田中将大からも一発放っている。

代表入りは3度目。1度目は2011年のワールドカップ。サードのレギュラーフィンス・ローイが負傷したため、急遽レギュラーに抜擢された。安定した活躍はできなかったが、決勝のキューバ戦で値千金のセンター前タイムリーを放ち優勝に大きく貢献。兄シャーロンと6,7番で並んで打線をはった。

2度目は2013年WBC。一回り成長したヨナサンは2番セカンドのレギュラーとして2本のホームランを放った。この大会の活躍がその後のメジャーでの活躍の足掛かりになったのは間違いない。

また更に一回り成長したヨナサンが前回を上回る活躍で、また更にメジャーでステップアップするための大会にしたい。

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ヨナサン・スホープ

 

〇サンダー・ボガーツ(ボーハールツ)/Xander Bogaerts 191cm/84kg 1992年10月1日24歳

ボストン・レッドソックス 右右 「アルバ」

シルバースラッガー賞を受賞したこともあるボストンの強打のショート。昨年はシーズン途中までイチローのシーズン安打記録を抜く勢いで安打を量産していた(後半は失速)。2015年には.320で、初の三割超え。昨季は本塁打も増加し21本。

 オランダ代表は前回大会来2度目。本職はショートだが、シモンズがいるためサードで起用された、今回も同様の起用が予想される。2013年WBCでは、まだ打撃が粗削りで結果を残すことができなかったが、ここ3年のメジャーでの実績経験で今大会では3番などの中軸に入ることが目される。

 豪華な内野手の中で元雄もだが気力があるのは彼。守備はもちろんだが、バレンティンと共に打撃でチームをけん引してもらいたい。

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サンダー・ボーハールツ

 

〇ステイン・ファンデルミール/Stijn van der Meer 1993年5月1日23歳

 ヒューストン・アストロズ(Rk) 右左 ショート、サード

 オランダ人で史上初、MLBドラフトで34位指名されたオランダの至宝候補。アストロズルーキーリーグでプレーしている。

 2011年のU18ヨーロッパ選手権首位打者を獲得すると、翌年19歳でホーフトクラッセデビュー。ルーキーイヤーからレギュラーを掴み打率は.330。大学に進学すると、大学野

球のシーズン中はアメリカ、オフはオランダでプレーするようになった。アメリカではラマー大学の中心選手として活躍。最後のシーズンは3番ショートとして野球盤フライングダッチマンと称された。オランダでは強豪ネプチューンズに移籍し、ヨーロピアカップなどの国際大会でMVPを獲得した。

 今季は大学最終年だったが、秋のドラフトでアストロズに指名され、すでにプレーしている。9月のユーロではMVPを獲得し、今のオランダで最も注目されている男といっても過言ではない。

 長身スリムな藤波体形で、華麗な守備と柔らかいバッティングを披露する。まだまだ、体ができておらず、肉体加増次第では大化けする可能性もある。オランダ本土出身選手として久々のメジャーリーガーになれるか。

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ステイン・ファンデルミール

 

【外野】5人

ウラディミール・バレンティン/Wladimir Balentien188cm/100kg1984年7月2日32歳

東京ヤクルトスワローズ 右右 「キュラソー

日本シーズン最多本塁打記録保持者。いわずと知れたヤクルトの最強助っ人だ。

前回大会ではWBCに合わせて早めに調整したためシーズンに入っても体調が万全で後半にバテず、夏場に本塁打を連発日本球界最高の60本を記録した。大会では4番としてチームをひっぱったが、本塁打は0。チームもベスト4に躍進するも、自身が本塁打を打つことでチームを優勝へ導くべく雪辱に燃えている。

 今回はメジャーでプレーする強度の後輩たちが代表するが、打線の軸はやはりこの人。4番は彼が打つことになると予想する。彼が4番にどっしり座ることで、メジャー組の後輩たちものびのびとプレーしてくれることだろう。

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ココ・バレンティン

 

○カリアン・サムス/Kalian Sams 188cm/112kg 1986年8月25日30歳

 ケベック・キャピタルズ(加独) 右右 「オランダ」

オランダ行政の中心デンハーグ出身のスラッガー。ワールドカップキューバ戦でのホームラン、ユーロでのサイクルヒットなど印象に残るパフォーマンスをする男だ。シアトルマリナーズやサンディエゴパドレステキサス・レンジャーズ傘下などでプレーしたが、昨年は台湾ポップコーンリーグにてプレーした。オランダシリーズ限定でネプチューンズでもプレーし、優勝に貢献した。欧州野球選手権では5番に座り、決勝のイタリア戦でも2本塁打した。ツボにはまった時のパンチ力は素晴らしく、もの凄い飛距離を出す。足も速いが、守備では後方の打球に対するアプローチに何がある。今回も主砲として期待したい。

彼も2015年春の侍ジャパンとのグローバルマッチで来日し、二塁打や犠牲フライでチームに貢献した。

 プレミア12でも活躍したが、やはりアメリカ、カナダのレベルの高い投手陣には苦しんだ。昨年の侍ジャパン戦では阪神タイガース藤浪晋太郎から強烈な本塁打を放った。

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カリアン・サムス

 

ランドルフ・オデュベル/Randolph Oduber 191cm/86kg 1989年3月18日27歳

左右 オリオールズ 「アルバ」左右

右打席から内野安打を生み出すほどの快速。その足を生かした守備範囲の広さも魅力だ。2013WBC戦士であり、怪我人の影響でスタメンにも周り、キューバ戦では彼の足を活かした機動力でキューバの守備をかき乱した。昨年のユーロの際には一回り身体が大きくなっており、長打力が増し、イタリアとの決勝でも効果的な本塁打を放った。彼の機動力はチームの大きな武器になっており、チャンスメイクの役割が期待される。

 今季はナショナルズからリリースされ、シーズン途中からオランダでプレー。怪我がちで、出たり出なかったりだったが、オランダシリーズでは存在感を示した。来年からは米独立でプレーする。

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ランドルフ・オデュベル

 

【代表合宿参加選手】

○シャーロン・スホープ/Sharlon Schoop 188cm/86kg 1987年4月15日28歳

 ボルティモア・オリオールズ(AAA) 右右 「キュラソー」 ショート、サード

メジャーリーガーであるヨナサン・スホープの兄。2009WBCから代表入りし、2011ワールドカップでは弟と並んで6番、7番に座り優勝に貢献した。その大会の準決勝韓国戦では逆方向に3点本塁打を放ったような長打力もある。2014年のユーロでも代表入りし、ショートを務め、守備面でも高い能力を見せた。中位でのクリーンアップが残したランナーを返す、勝負強い打撃に期待したい。

 弟がメジャーで活躍する中、兄はAAA、AAでプレー。弟の背中を追うためにも、代表で結果を残したい。

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シャーロン・スホープ

 

〇ニック・ウルバナス/Nick Urbanus 1992年3月29日24歳

 アムステルダム 右左 セカンド

 オランダの野球一家の御曹司。彼の祖父がオランダで野球の普及活動をしたため、その当時を知る世代の大半が「ウルバナス」家の存在を知っている。父親も野球選手で、元オランダ代表のエース投手だ。国際大会で大活躍し、野球界のレジェンドだ。現在はニックが所属するアムステルダムで監督を務め、2016のベストコーチ賞を獲得した。

 ニック自身はアムステルダムでホーフトクラッセデビューしたのち、テキサスレンジャーズと契約し、アメリカへ渡った。4年間戦ったが、2015年春にリリースされた。本人としては、オランダでプレーするとウルバナス家の息子として期待をかけられるが、アメリカではのびのびできるためアメリカの球団との再契約を望んでいたようだ。だが、検討むなしくオファーがなかった。

 オランダ復帰後1年目の2015年は3割をクリアできず、中途半端な成績に終わったが、今季は打線の核としてチームをヨーロッパ制覇へ導いた。パワーが向上し4本塁打をマークした。代表には2012、2014のユーロで選出され、それぞれの大会で活躍をしていた。今季もハーレム、ユーロで活躍。ユーロ決勝では貴重なタイムリーを放った。向上中の打撃とともに、自慢の好守で代表のレギュラーを掴みたい。

 

〇クリス・ガリア/Chris Garia 182cm/74kg 1992年12月16日23歳

 テキサス・レンジャーズ(AAA、AA、A) 右両 「キュラソー」 

2015年一気にAAAまで駆け上がったプロスペクト。27盗塁を記録した瞬足もさることながら、打撃面でも8本塁打をマーク。しかも、両打席からとも本塁打を放っており、貴重なスイッチヒッターとなりそうだ。外野守備も無難にこなせるようで、似たタイプの選手であるオデュベルと共に、相手投手を足で揺さぶる役割が期待される。プレミア12では怪我でろくにプレーできなかった。

 今季突如リリースされ、オランダパイオニアーズに加入した。ハーレム、ユーロでも代表に入り、リードオフマンとして活躍した。

 侍ジャパン戦では1番バッターとしてチャンスメイク。オデュベルと熾烈なレギュラー争いを繰り広げる。

 

○ドゥエイン・ケンプ/Dwayne Kemp 172cm/72kg 1988年2月24日27歳

 ロッテルダムネプチューンズ 右右 「オランダ」 セカンド、ショート、サード、外野

19歳からオランダホーフトクラッセで活躍する、オランダ国内の人気選手。尊敬する選手はロビンソン・カノー。20~21歳の2年間はカブス参加のRk、Aでプレーし、経験を積んだ。普段はセカンド、ショートで軽快なフィールディングを見せる。

2011ワールドカップではレフトも担い器用なところを見せたが、見てる方は冷や汗をかいてしまうようなぎこちない身のこなしだった。小柄ながらパンチ力も秘めており、セーフティバントなどで相手を揺さぶることも可能だ。

 2016年シーズンは3割を下回り、不甲斐ないシーズンになったが、最後のオランダシリーズで活躍しMVPを獲得。汚名返上に成功した。

 今大会では、外野の守備固めのほか、代走などのスーパーサブとしての活躍が期待される。

2017WBCオランダ代表予想ロースター

○投手 14

リック・ファンデンハルク(ソフトバンク/NPB

ジェイアー・ジャージェンス(統一/CPBL

トム・スタイフベルヘン(キンハイム/ホーフトクラッセ

ロビー・コルデマンス(アムステルダム/ホーフトクラッセ

ケフィン・ヘイステック(アムステルダム/ホーフトクラッセ

マイク・ボルセンブルーク(レギオネーレ/ドイツブンデスリーグ)

シャーロン・マーティス(ソルトドッグス/米独立)

フアン・カルロス・スルバラン(カージナルス3A/MLB

ディエゴマー・マークウェル(ネプチューナス/ホーフトクラッセ

ルーク・ファンミル(ネプチューナス/ホーフトクラッセ

ベリー・ファンドリール(ネプチューナス/ホーフトクラッセ

トム・デブロック(アムステルダム/ホーフトクラッセ

イム・プルーヘル(HCAW/ホーフトクラッセ

ケンリー・ヤンセンドジャース/MLB

 

○捕手 3

スペンサー・キーボーム(ナショナルズ2A/MLB

ショーン・サラガ(ドジャース2A/MLB

ダシェンコ・リカルド(ネオチューナス/ホーフトクラッセ

 

内野手 6

サンダー・ボーハールツ(レッドソックス/MLB

アンドレルトン・シモンズ(エンジェルス/MLB

ディディ・グレゴリウス(ヤンキース/MLB

ヨナサン・スホープオリオールズ/MLB

ステイン・ファンデルミール(アストロズRk/MLB

ニック・ウルバナス(アムステルダム/ホーフトクラッセ

 

○外野手 5

ウラディミール・バレンティン(ヤクルト/NPB

カリアン・サムス(キャピタルズ/カナダ独立)

ロジャー・バーナディナ(メッツ3A/MLB

カート・スミス(ソルトドッグス/米独立)

ランドルフ・オデュベル(ネプチューナス/ホーフトクラッセ

 

◎まず、福岡ソフトバンクのバンデンハークがファンデンルク、ボストンのボガーツがボーハールツになっていますが、なるべく現地の発音に近づけた結果です。

 投手陣は国内組を中心に、ファンデンハルクやヤンセンら海外組の実力者も加えた。先発陣の中心になるのはもちろんファンデンハルク。彼の出来次第では強豪とも互角に戦える。他にも、元メジャーのジャージェンスや、国内トップレベルのスタイフベルヘンが先発として控える。マークウェルやマーティス、ヘイステックらがロングリリーフをこなせば球数制限も苦にならないだろう。課題の左投手は2人選出したが、国内のワルドらが入ってくることも考えられる。前回大会で課題として見えたのは投手陣のコマ不足。前回大会以降に台頭してきたハイヤー、デブロック、ヘイステックらに期待がかかる。

 野手陣はメジャーのトップでプレーしているボーハールツ、シモンズ、グレゴリウス、スホープらを中心にすえた。本番では全員がそろうことは難しいだろうが、ほとんどの選手が代表でプレーするのを楽しみとしており、不可能なことではない。プロファーが侍ジャパンとの強化試合に選出されており、彼も入ればよりベストだ。辞退者が出た場合は、内野手ではベテランのデカスターや国内のケンプ、プレミア12で遊撃のレギュラーを務めたダールらが入ってくるだろう。外野手ではガリア、ランペ、ドライヤーらが控えており大幅に戦力が落ちることはないだろう。他にも、マイナーに実力のある野手が多数。

 チームを指揮する監督はサンフランシスコジャイアンツのコーチで、元ヤクルトのミューレンスが濃厚。WBC以外で監督を務めるベルギー人のヤンセンがヘッドコーチとして彼を支えることになるだろう。

 メジャー軍団打線が取った得点を、オランダ国内組の投手陣がしっかりと守っていくことができれば、前回大会に続く上位入りも期待できる。

オランダ野球界紹介2016年

1.概要

国内連盟:王立オランダ野球ソフトボール連盟(Koninklijke Nederlandse Baseball en Softball Bond, KNBSB)

協会創設:1912年

登録球団数:170球団以上

WBSC世界ランキング:5位(2015年)

連盟ウェブサイト:http://www.knbsb.nl/

 

2.野球ホーフトクラッセ(Honkbal Hoofdklasse)

 意外にもオランダ語には独自に野球を意味する言葉がある。それが「ホンクボル(Honkbal)」。「ホーフトクラッセ」はトップリーグを意味し、英語ではダッチ(オランダの)メジャーリーグとも訳される。創立は1922年。日本プロ野球の前身である「日本職業野球連盟」のリーグが1936年に開始されたのを鑑みると、その歴史の古さをお分かりいただけるだろう。

 参加球団は8チーム。南北ホラント州近辺に参加チームが集まっている。レギュラーシーズンは1週間に木・土・日の3試合。全42試合で、その後上位4チームがプレーオフ、下位4チームがプレーダウンを戦う。プレーオフ・ダウンは1カード(3試合)×3チームの計9試合。その後、プレーオフの上位2チームが優勝を決めるための「オランダシリーズ(Holland Series)」を戦いオランダナンバーワンが決まるという流れだ。加えて、プレーダウン最下位のチームは、2部リーグ(オーフェルハンフスクラッセ)の優勝チームと入れ替え戦を行う。

 集客人数としては平均200~300人。以前が500人程度を記録していたことを考えると寂しいものがある。しかし「オランダシリーズ」では1500~2000人を越え、更には国営テレビ局での中継も組まれることからある程度の注目はされているようである。また、オランダの最大手紙「de Volkskrant」では日曜日に1週間の試合結果が載る程度で、時たま特集が組まれるぐらいか。(国際大会の際にはよく特集される)

 

3.注目の球団

(1)キュラソーネプチューンズロッテルダム(Curacao Neptunus Rotterdam、2015年ホーフトクラッセ優勝、クラブヨーロッパクラブ優勝)

 球団創設72年、通算優勝数15回を誇るホーフトクラッセの名門。過去10年間で5度の優勝、直近では3連覇。今年はヨーロピアカップ(欧州クラブ選手権)で優勝。過去6年間連続でイタリアリーグ勢に優勝を明け渡していたが、このオランダの名門がその流れを止めた。ここ10年程は著名な選手を多く輩出するアンティル(キュラソー、アルバなどカリブ海オランダ王国構成国)から多く選手を獲得。戦力強化を図ってきた。2013年からは元マイナーリーガーで元オランダ代表のエトゥーンが監督に就任し、いよいよ磐石だ。所属選手としてはキューバキラーとして有名でWBCでは韓国戦でも勝利投手になったディエゴマー・マークウェル投手。他にはベルギー代表の中心選手で2015年「オランダシリーズ」のMVPを獲得したベンヤミン・ディレ内野手などが在籍する。来年から発足するヨーロッパプロリーグにも参加する。

本拠地はオランダ第2の都市で、ヨーロッパ一の港町ロッテルダム。本拠地ファミリースタジアムは収容人数2760人。

 

(2)L&Dアムステルダム・パイレーツ(L&D Amsterdam Pirates、2011年ホーフトクラッセ優勝、2015年レギュラーシーズン1位)

 ネプチューンズと共に来年からヨーロッパプロリーグに参加する強豪。このチームの前身は1959年創立のRAP。RAPの創設者の一人であるルーク・ルーフェンディーは現在でもチームの会長として関わっている。RAPはサッカー部門から野球部門だけが独立し、その後HVAというアムステルダムの野球クラブと合併し、後にアムステルダムパイレーツとなる。2008年からはL&D Supportというコンサルティング会社をスポンサーに迎えL&Dアムステルダムパイレーツとなった。

 チームの特徴としてはあまり補強しないこと。ネプチューンズは補強を重ねてチームを強化してきたが、このチームは育成などを通じ、チームを強化してきた。マイナー帰りのアンティル系の選手は少なく、オランダ育ちのホーフトクラッセのみしか経験のない選手も多い。所属選手としてはオランダのレジェンド、コルデマンス投手(後述)や、長年代表チームでプレーしキャプテンも務めた守備職人マイケル・デュルスマらがいる。

 本拠地は西アムステルダムのオークメールスポーツパーク。収容人数は400人程度だが、室内練習場、バーレストラン、ちょっとしたミュージアムなどを併設している。陽気なDJと共に盛り上がるスタジアムの雰囲気は最高だ。

 

4.オランダ代表

 WBSC世界ランク5位(2015年)の今や世界の強豪。元々はヨーロッパの2強としてイタリアとヨーロッパの中で覇権を争ってきたが、カリブ海アンティル(キュラソー、アルバ等)の選手が加わるようになって世界の舞台でも頭角を現してきた。欧州野球選手権では21回の優勝と9回の準優勝。五輪もアトランタの初出場からシドニーアテネ、北京と4大会に出場している。以前存在したIBAF野球ワールドカップでは2011年の最後の大会で優勝。また、IBAF主催のもうひとつの国際大会だったインターコンチネンタルカップでは2006年、2010年で連続して準優勝しており、ここ10年で強豪への道を駆け上ってきた。真のナショナルチーム世界一を決めるWBCでは2009年大会で強豪ドミニカ共和国を2度破り、2013年にはついにベスト4まで上り詰めたのである。

 オランダはKNBSB主催で「ハーレムベースボールウィーク」と「ワールドポートトーナメント」という2つの国際大会を毎年交互に開催しており、毎年何らかの形で代表として試合をすることができる。これら2つの大会は、ホーフトクラッセ所属の選手のみでメンバーを構成する。一方、ヨーロッパ選手権ではホーフトクラッセの選手プラス、米マイナー所属の選手が加わる。これらの大会では現在ベルギー出身でオランダ球界で指導者の経験を積んだスティーフ・ヤンセンが監督を務めている。WBCやプレミア12では元ヤクルトで、現在はサンフランシスコ・ジャイアンツで打撃コーチを務めているヘンスリー・ミューレンスが監督を務める。

 投手陣にはオランダ本土選手、野手陣にはアンティル系選手が多い。特徴の違う彼らがそれぞれ「オランダ王国」の名の下に結束して戦う姿が魅力的だ。

 

5.注目選手

(1)ロビー・コルデマンス(Robbie Cordemans)

オランダ球界のレジェンド。WBC3度、オリンピック4度出場と、輝かしい経歴を持つ。球速以上に威力のある真っ直ぐと、伝家の宝刀チェンジアップが特徴。2011ワールドカップではキューバを8回途中まで2安打1失点で勝利投手。三振も取れる。チェンジアップは抜いた球と落ちる球の2種類を投げ分ける。日本ファンには鳥谷に先頭打者ホームランを打たれたことで記憶されてるかもしれないが、それ以降は投球スタイルを多少チェンジ。カーブを有効に使うようになった。それが功を奏してか、今年春の対侍ジャパン戦では先発して2回をきっちりと零封した。ピッチングへの探究心は40歳を超えても大きくなるばかりだ。代表でもチームでも若手へ指導、ノックもこなす。球種はストレート(130前半)、カーブ、チェンジアップ。

13試合6勝2敗 防御率0.84 奪三振79

 

(2)ケフィン・ヘイステック(Kevin Heijstek)

オランダの次世代エース。2013年はホーフトクラッセ最優秀防御率、昨年は最多勝を獲得。今年も9勝でマークウェルと最多勝を分け合った。伝家の宝刀は落差の大きいカーブ。2013WBCでは松田も三振にとった。ストレートは140前後だが、キューバ人で2014MLB新人王のアブレイユやロッテのデスパイネを空振り三振にとったこともある。現在では段々と代表内での位置づけも上がってきており、2014年ユーロではローテで周り準決勝にも登板。コルデマンス、マークウェルら国内のベテラン先発陣に取って代わる存在だ。是非とも日本で見てみたい投手の1人。プレミア12でも先発ローテに割って入りたい。球種はストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップ。

13試合9勝1敗 防御率1.32 奪三振69

 

(3) カリアン・サムス(Kalian Sams)

オランダ行政の中心デンハーグ出身のスラッガー。2011年ワールドカップキューバ戦でのホームラン、2012年ユーロでのサイクルヒットなど印象に残るパフォーマンスをする男だ。シアトルマリナーズやサンディエゴパドレステキサス・レンジャーズ傘下などでプレーしたが、昨年は台湾ポップコーンリーグにてプレーした。オランダシリーズ限定でネプチューンズでもプレーし、優勝に貢献した。2014年欧州野球選手権では5番に座り、決勝のイタリア戦でも2本塁打。今季はカナダ独立リーグで主軸として活躍。チームメイトには元DeNAグリエルの兄などもいた。ツボにはまった時のパンチ力は素晴らしく、もの凄い飛距離を出す。足も速いが、守備では後方の打球に対するアプローチに難がある。今回も主砲として期待したい。

彼も今春の侍ジャパンとのグローバルマッチで来日し、二塁打や犠牲フライでチームに貢献した。

84試合 打率.284 本塁打16 打点68 OPS.1.215

2016ホーフトクラッセ球団紹介

各球団の概要

(1)キュラソーネプチューンズ(Curacao Neptunus、2015年ホーフトクラッセ優勝、クラブヨーロッパクラブ優勝、ロッテルダム)

 球団創設72年、通算優勝数15回を誇るホーフトクラッセの名門。過去10年間で5度の優勝、直近では3連覇。今年はヨーロピアカップ(欧州クラブ選手権)で優勝。過去6年間連続でイタリアリーグ勢に優勝を明け渡していたが、このオランダの名門がその流れを止めた。

ここ10年程は著名な選手を多く輩出するアンティル(キュラソー、アルバなどカリブ海オランダ王国構成国)から多く選手を獲得。戦力強化を図ってきた。2013年からは元マイナーリーガーで元オランダ代表のエトゥーンが監督に就任し、いよいよ磐石だ。所属選手としてはキューバキラーとして有名でWBCでは韓国戦でも勝利投手になったディエゴマー・マークウェル投手。他にはベルギー代表の中心選手で2015年「オランダシリーズ」のMVPを獲得したベンヤミン・ディレ内野手などが在籍する。2016年から発足するヨーロッパプロリーグに参加予定だったが、リーグの運営自体に疑問を呈し今期は参加を見送った。

特に注目したいのは正ショートのステイン・ファンデルメール。長身で細身だが華麗な守備で投手陣を引き立て、シュアな打撃でチャンスメイクする。現在はアメリカの大学で武者修行中。大学リーグがオフの間は帰国してネプチューンズの試合に出場している。大学では3番を担いチームの顔に成長。2015年のヨーロッパ・カップでは決勝で決勝打を放ちMVPになった。

本拠地はオランダ第2の都市で、ヨーロッパ一の港町ロッテルダム。本拠地ファミリースタジアムは収容人数2760人。豊富な資金力の下、「YouTube」や「Instagram」などで動画配信などを充実化させている。

 

(2)L&Dアムステルダム・パイレーツ(L&D Amsterdam Pirates、2011年ホーフトクラッセ優勝、2015年レギュラーシーズン1位、アムステルダム)

 ネプチューンズと共に来年からヨーロッパプロリーグに参加する予定であった強豪(後、参加見送り)。このチームの前身は1959年創立のRAP。RAPの創設者の一人であるルーク・ルーフェンディー(ルークおじさん)は現在でもチームの会長として関わっている。RAPはサッカー部門から野球部門だけが独立し、その後HVAというアムステルダムの野球クラブと合併し、後にアムステルダムパイレーツとなる。2008年からはL&D Supportというコンサルティング会社をスポンサーに迎えL&Dアムステルダムパイレーツとなった。

 チームの特徴としてはあまり補強しないこと。ネプチューンズは補強を重ねてチームを強化してきたが、このチームは育成などを通じ、チームを強化してきた。マイナー帰りのアンティル系の選手は少なく、オランダ育ちでホーフトクラッセのみしか経験のない選手も多い。

注目選手としてはオランダのレジェンド、コルデマンス投手。オランダ球界のレジェンド。WBC3度、オリンピック4度、プレミア12出場と、輝かしい経歴を持つ。球速以上に威力のある真っ直ぐと、伝家の宝刀チェンジアップが特徴。2011年ワールドカップではキューバを8回途中まで2安打1失点で勝利投手になった。チェンジアップは抜く球と落ちる球の2種類がある。

 本拠地は西アムステルダムのオークメールスポーツパーク。収容人数は400人程度だが、室内練習場、バーレストラン、ちょっとしたミュージアムなどを併設している。陽気なDJと共に盛り上がるスタジアムの雰囲気は最高だ。創設者のルークおじさんは80歳を超えた現在でもほぼ毎日観戦に訪れ、ビール片手にチームを鼓舞している。

 

(3)コレンドン・キンハイム(Corendon Kinheim、2012年ホーフトクラッセ優勝、ハーレム)

 オランダの野球の聖地と謳われるハーレムに本拠地を構える歴史ある球団。1935年創立という長い歴史を持つが、最初の70年間の優勝経験はたったの2回であった。20年ほど前まで同じハーレムに存在していたニコルズは通算優勝12回を誇った強豪で、その陰に隠れた存在だった。ただ、ここ10年で3度の優勝を勝ち取り、毎年Aクラス入りする強豪の仲間入りを果たした。現在のスポンサーは航空会社のコレンドン。

 2011年にくしくも夭折した元シアトル・マリナーズのグレッグ・ハルマンは15歳でこのチームのユニフォームに袖を通し、なんとMVPを獲得した。このような偉大な選手を輩出チームでもある。ちなみにキンハイムのクラブハウスでは彼とのお別れ式も執り行われた。

 今期から、現役時代に3度のMVPを受賞したクラウヴェルが監督に就任。昨季、オランダシリーズでネプチューンズに完敗したチームの引き締めを図る。注目選手は、ダーフィット・ベルフマン。長年代表で先発を務めてきた投手で、現在は代表を引退しキンハイムでは投手コーチを兼任する。スローカーブで緩急をつけ、チェンジアップで打ち取る正統派だ。2011ワールドカップでは胴上げ投手になった。

 本拠地は1963年建設のピム・ミュリールスタジアム。2500人を収容するオランダでは大きな球場だ。2年に1度オランダ主催の「ハーレム・ホンクボル・ウィーク」がこの球場で開催され、街をあげて大騒ぎになる。

 

(4)ファエッセン・パイオニアーズ(Vaesen Pioniers、1994年ホーフトクラッセ優勝、ホーフトドルプ)

 ここ5年で2度のオランダシリーズ進出を果たしている中堅クラブ。その割に今まで優勝できたのは球団史上1度だけという不運なチーム。ただ、一貫して代表レベルの選手を有する侮れないチームだ。

 2011年から2015年までロバート・クラファー監督の第2次政権ですべてA クラス入りしたものの遂に優勝を果たすことはできなかった。今期からは2年前に現役を引退したフラネヒンが監督に就任。長年捕手としてチームを支えてきたマーク・デュルスマ、左の大砲マーク・ヤン・モールマンらが引退し、一気に若返り・変革期を迎える。

 注目選手は、若きエースとして期待されるラルス・ハイヤー。2011年から2014年までマリナーズ傘下でプレー。2013年にはシングルAで8勝2敗の好成績を収め、プロスペクトとして期待され、2015年シカゴ・カブスへ移籍。しかし、スプリングキャンプ中に自らのキャリアを見つめなおし、自主退団。現在は母国オランダの地でプレーする。2015年秋には台湾で行われたアジアウィンターリーグのヨーロッパ選抜に参加。エースとして、NPBKBOなどのプロ2軍相手に通用する実力を披露した。昨季までのエース、ヘルナンデスが退団した今期、チームの命運は彼にかかっている。

 本拠地はスキポール空港の近郊に位置するホーフトドルプ。2011年からスポンサーに建設会社のファエッセンがついたのを機に、新スタジアム「スポーツパークパイオニアーズ」を建設。2014年に開場した。当初はMLB公式戦を誘致するとの掛け声のもと、3万人収容を目指したが、現在は収容数千人規模でとどまっている。

 

(5)UVVユトレヒト(UVV Utrecht、2010年2部オーフェルハンフスクラッセ優勝、ホーフトドルプ)

 1948年に創設されるも長い間2部リーグ以下のレベルでくすぶっていたクラブ。2010年に2部オーフェルハンフスクラッセを制すると初の1部ホーフトクラッセ昇格を決めた。昇格してからも一度も最下位にはならず、Bクラスの中で最もAクラスに近い位置に立ち続けている。毎年外国人選手を補強し、何とかチーム改革をしようとする意思が垣間見られる。

 ただ、今期は正念場。昨季まで主軸を担ったデニス・デクイント(ベルギー代表)とギルマー・ランプ(オランダ代表)、更には昨期のブレイクで代表入りした左腕ジム・プルーヘルが移籍した。チームの核が抜けてしまい、一気に若返ったが、この中からチームを支える選手は出てくるのだろうか。

 注目選手は若手左腕ジェレミー・アンジェラ。先発陣の中心はファンゼイル、ファンアンクムら右腕が中心。更にプルーヘルが抜けて左腕の希少価値が増している中、彼の存在は重要になってくる。現在はアリゾナの大学リーグで武者修行中の彼。高校時代はU18オランダ代表に選出されるなど才能は認められていたものの、身体も華奢で球速もまだまだだった。しかし、ここ1年で体格に変化がみられるようになった。胸板は倍ほどに厚くなり、腕肩回りも目に見えて大きくなっている。強いフィジカルを手に入れた彼がどのような投球を披露するかは見ものである。また、野手では母親にフランス人を持つノルベルト・ヨンヘリアス外野手が2016年3月下旬に開催されるWBC予選にフランス代表として出場する。

 本拠地はオランダ第3の都市ユトレヒト。バスケットボールやサッカー場も併設される「スポーツパークデパペルクリップ」。

 

(6)DSS (2014年オーフェルハンフスクラッセ優勝、ハーレム)

 DSSはスポーツクラブとして1919年から既にサッカーチームを有していたが1950年に野球チームを創設。長年2部リーグで戦ってきたが、2014年2部を制すると、ドルトレヒト・ザ・ホークス(現2部)との入れ替え戦を3勝2敗で勝ち越し、球団史上初の1部ホーフトクラッセ昇格を果たした。昨年は昇格後最初のシーズンだったが、大きな補強もせず苦戦が予想されたが、大方の予想をいい意味で裏切り6位という健闘を見せた。

 選手たちもさることながら、なんと監督のスタットは31歳。周りを支えるコーチ陣も投手コーチのリック・へーストマンも選手兼任と若い。スタッフ全員更には地域のファンを巻き込んだチーム運営で上位を目指す。

 注目の選手はファンデルサンデン兄弟。兄のスフェン外野手は去年まで強豪キンハイムに所属し、準レギュラーとして活躍。2014年にはルーキーながらシーズン中盤まで3割をキープし、インパクトを与えた。昨年のチーム打率は.214、本塁打は1。貧打解消に向けた起爆剤になることが期待される。また、弟のトミーは昨年U18代表で欧州選手権に出場したホープ。打撃は力不足ながら、昨期後半にはチームでもショートストップを任せられるようになった。彼が、ショートとして固定できれば安定した内野陣を形成できる。

 本拠地はキンハイムのピム・ミュリールスタジアム横のサブグラウンド。全面人工芝で、申し訳程度のスタンドも設置されている。試合中には出店も登場する。

 

(7)HCAW (1996、1998年ホーフトクラッセ優勝、バッセム)

 1957年創設、ホーフトクラッセの古豪。1999年から2005年までにかけては、毎年の様にネプチューンズと首位争いを繰り広げたが、悉く敗れた。地域には根強いファンが多く、近年は長くBクラスだが、それでも他球団以上の集客数を誇る。オランダ代表で元NPB楽天に所属したルーク・ファンミル等、著名な選手も多数輩出してきた。

 昨季はチームの主軸となる選手が多数移籍し、キュラソーからの補強などで何とか最下位を回避できたが苦しいシーズンになった。しかし、今期は代表レベルの選手を多数獲得。シーズンMVPを獲得したこともあるスラッガー、フィンス・ローイ内野手。代表歴のある元盗塁王ルーリー・エンリケ内野手。2015年秋のアジアウィンターリーグでヨーロッパ選抜の4番をになったケフィン・ヴェイヘルツ内野手が加わった。

 特にヴェイヘルツは2014年HCAWに所属していた選手で今回は出戻り。その際は4番としてチームを牽引し3割をマークした。ウィンターリーグでも本塁打を放ち存在感を示したが、未だフル代表に選ばれたことはない。まずはこのHCAWで暴れて、貴重な蘭製大砲に成長すれば、チームの数年ぶりとなるAクラス入りも見えてくる。

 本拠地はアムステルダム近郊の小都市バッセムの「ホンクボルファリー」。スタンドも数百人分設置されており、選手との距離も近い。駅から近くアクセスも良い。

 

(8)デ・フラスコニンフ・ツインズ (De Glaskoning Twins、2015年オーフェルハンフスクラッセ優勝)

 1969年創設。昨年、2部オーフェルハンフスクラッセを制すると、入れ替え戦ではホーフトクラッセ最下位だったザ・ホークスに対して3連勝。文句なしの内容で、12年ぶりのホーフトクラッセ参加を決めた。オーフェルハンフスクラッセでは安定して上位に位置し、昇格を伺っていたが、ようやく実った形だ。

 監督は32歳と若いローフェルス。昇格を機にAクラスからベテランを補強。先発の核として、数チームを渡り歩いてきたクーイマンを獲得。また、アルバ人の左腕フローレクと、ホープ右腕フローリス・ティマーを獲得。これで先発ローテの3枚が揃い、Bクラスのチームでは珍しく先発投手が充実している。一方の野手では、キンハイムから代表歴もあるアレンズ、ユトレヒトからはベルギー代表の主軸デクイントが加入し、打線の核は揃ったといっても過言ではない。

 さらに注目して欲しいのは、ベリー・ファンドンセラール。2014年までザ・ホークスに在籍していた彼は、ホーフトクラッセで戦っていた際は4番に座っていた強打者。3割をマークしたこともあり、オールスターにも選出されている。彼が5、6番打者として打点を稼ぐことができれば、Bクラスチームの中ではとても贅沢な打線になる。

 本拠地は北ブラバント州の小都市オーステルハウト「デ・ストロボッセ・トーレン」。数百人規模のスタンドが設置されている。ファンは熱狂的で、ビジターにも大勢詰めかける。

オランダ、強化試合を経てプレミア12へ

2015-11-07 21:03:38 の記事です。
 
  オランダ代表はプレミア12に向けて強化試合を5試合行ってきました。この試合数だけ見てもこのチームがいかにやる気なのか、お分りいただけると思います。
 
  侍ジャパンプエルトリコとの2試合。韓国もキューバとの2試合のみ。他の代表チームの正確な試合数は分かりかねますが、おそらく5試合は12カ国の中でトップです。
 
  結果としては3勝2敗。
【第1試合】
オランダ 7-0 キュラソー
 
継投
コルデマンス-マークウェル-プルーヘル-フローラナス-バレンティーナ-ファンドリール-ボルセンブルーク
 
1,オデュベル 左
2,ガリア  中
3,A,ジョーンズ 一
4,デカスター 指
5,スホープ
6,サムス 右
7,リカルド 捕
8,ダール 遊
9,スタシア 二
先発 コルデマンス
 
本塁打 ケンプ(ツーラン)
 
【第2試合】
オランダ 8-1 キュラソー
ジャージェンス-マーティス-スルバラン-ファンドリール-スタイフベルヘン-インテマ
 
スタメン不詳
 
本塁打 サムス(スリーラン) オデュベル(ソロ)
 
【第3試合】
オランダ 7-0 新北市
 
継投
マークウェル-スタイフベルヘン-マーティス-プルーヘル-ファンドリール-コルネリッセ
 
1,オデュベル 中
2,スミス 左
3,デカスター 一
5,サラガ 捕
6,サムス 右
7,スホープ
8,ダール 遊
9,スタシア 二
先発 マークウェル
 
本塁打(スリーラン)
 
【第4試合】
オランダ 2-3 アメリ
 
継投
ジャージェンス-コルデマンス-スルバラン-ファンミル-インテマ
 
1,ガリア 中
2,スミス 左
3,A,ジョーンズ 一
5,デカスター 三
6,サムス 右
7,サラガ 捕
8,スホープ
9,ダール 遊
先発 ジャージェンス
 
【第5試合】
オランダ 3-5 ドミニカ共和国
 
継投
ヘイステック-ボルセンブルーク-フローラナス-プルーヘル-ファンドリール-コルネリッセ
 
1.ダール 遊
2.デカスター 三
3.A,ジョーンズ 一
5.スミス 左
6.サラガ 捕
7.サムス 右
8.スホープ
9.オデュベル 中
先発 ヘイステック
 
  格下のチームであるキュラソー新北市に対しては打線も活発に働いた。一方、アメリカ、ドミニカ共和国に対しては4点以上得点できておらず、ジョーンズ、バレンティンの復調が本線では鍵になりそうだ。
 
  そのジョーンズだが、キュラソーでの代表合宿を終え、オランダ本土で会見や練習のため滞在中に父親が他界。急遽キュラソーへ帰島することになり、チームの来台には帯同できませんでした。アメリカ戦で復帰後はなかなか打点を挙げられていません。
 
  また、バレンティン日本シリーズでも打率1割代。彼ら主軸の復調が本戦では鍵を握りそうです。
 
  しかし、サラガ、サムスの5.6番コンビは絶好調。サムスは5試合で2本塁打をマーク。彼らが残ったランナーを返す役割にも注目です。
 
   また、この5試合では毎試合守備陣がエラーを記録。オランダのストロングポイントであるはずの守備に綻びが見られます。とりわけドミニカ共和国戦では先発のヘイステックが2失点したのですが、両方ともエラーによるもの。後を継いだボルセンブルークは3ランを打たれた。が、それもエラーでランナーを出した後に打たれている。
 
  オランダのストロングポイントであるはずの守備が不安要素になってる。本戦ではどのように改善してくるのでしょうか。
 
 
  投手陣は主にマークウェル、コルデマンス、ジャージェンス、スタイフベルヘン、ヘイステックらが先発を担うと見られます。各投手とも上々の調整を見せており、先発投手が崩れてしまうような負け方は心配しなくてよさそう。
 
  リリース陣も期待のコルネリッセ、プルーヘルらがしっかりと1イニングを抑えており、また、ベテランのファンドリールもなかなかのパフォーマンス。守護神ファンミルまで、相手に球筋を見極められる前に小刻みな継投をすれば、強豪相手にも十分勝てる要素があるだろう。  
  加えて、シーズン中、所属球団では先発のインテマがこの強化試合でリリーフとして登板しています。代表入り当初はリリーフとして活躍していたこともあり、十分本戦でも可能性がありそう。
 
  最後に2連敗とあまり良くない流れの中だが、初戦の台湾戦はなかなかの山場。相手の台湾はホームでもあり、熱狂的な応援を背に血眼になって挑んでくるはずです。前回WBCでは惜敗したが、近年の国際大会ではオランダの方が存在感を示しています。プレミア12でも初戦で野球王国「台湾」を倒すことで、勢いをつけたい。
 
  最後に開幕戦のスタメン予想を。
1,オデュベル 中
2,スミス 左
3,A,ジョーンズ 一
5,サラガ 捕
6,サムス 右
7,スホープ
8,ダール 遊
9,ケンプ 二
先発 スタイフベルヘン