蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

オランダ代表最終ロースター決定から練習試合を経て

 

 2月20日に各国のWBCにおける最終ロースターが決定した。一回目のロースター発表から国内組が4人追加された。投手のケビン・ヘイステック、捕手のバス・ノーイ、クインテン・デクーバ、内野手マイケル・デュルスマの四人だ。もちろんこれは、メジャーリーガのジャージェンス、ヤンセン、マイナーリーガーのスルバランが辞退した代替である。しかし、彼ら四人は、今のオランダ代表、これからのオランダ代表を象徴するような存在だ。
 
 普段馴染みがなく、情報源が少ないような国に対する日本メディアの評価は酷い。特にオランダだ。日本メディアによると、オランダに対する評価の中でクローズアップされているのは、たいていヤクルトスワローズバレンティン楽天のジョーンズだ。彼らを筆頭とする打撃陣は一発があり怖いが、国内リーグの投手を擁する投手陣が弱点である。という評価が一般的である。しかし、全くの逆である。そんなチームであるならば、2011年のワールドカップキューバを二度破っての優勝などできるはずもない。ましては、ドミニカに二度も勝てるわけがないのである。
 オランダがここまで国際大会で勝てるようになったのにはちゃんとした理由がある。それは、安定した投手陣が最少失点に抑え試合を作り、もぎ取ったりもらったりした点をダイナミックな鉄壁の守備でリードを守り抜くというチームスタイルを持っているからである。このスタイルは抜群に国際大会に強い。特に日本などの初見の投手に弱いチームだと、投手の球筋に慣れてくるまでに次の投手をつぎ込んでくる。このチームスタイルを支えてきたのが、オランダ国内リーグ・フーフトクラッセに所属する投手たちである。ロブ・コルデマンス、ダーフィット・ベルフマン、ディエゴマー・マークウェルら三人がその代表格に挙げられる。彼らは決して剛速球を投げるわけではない。140に届くか届かないかの真っ直ぐを投げる。しかし、その球は動いている。癖のあるわざと動かした球だ。コレにより打者はいい具合に芯を外してくれ、ゴロになり、オランダの鉄壁の守備の網に掛かってしまうというのだ。これにより、強国ドミニカに勝ち。キューバとは毎回いい試合をするまでのチームになった。
 最終ロースターで選ばれたヘイステックは24歳の若手先発右腕だ。国内ではネプチューンズの右のエースとして活躍してきて、今年からアムステルダムに移籍した。彼は去年のハールレムベースボルウィークでキューバ戦に先発。9安打を浴び、6回途中4失点で降板した。しかし、私はその中で、彼が将来のオランダを背負う可能性を感じた。キューバの主軸打者セペダ、デスパイネ、アブレウから連続三振を取った場面である。彼も決して三振をバッタバッタと取るタイプではない。しかし、ストレートでキューバの主軸から空振りを取り、チェンジアップで三線に仕留めるところは大エースコルデマンスとかぶるところがあった。先ほどあげた国内先発三人衆も、なかなかいい年だ。コルデマンス39歳、ベルフマン31歳、マークウェル32歳。ヘイステックが若い力で彼らを追い越し追い抜くための飛躍の舞台として今回のWBCを楽しむのも面白い。
  
 今回は前回までのような中心になり得る捕手がいない。実力・精神面ともに代表の中心的存在であったシドニー・デヨングが引退したからである。彼の引退後、正捕手の確定がオランダ代表永遠の課題である。しかし、今回のWBCで正捕手を無理やり固定する必要はない。現時点でそのような存在が出てきていないのはもちろんだが、選ばれた3人がそれぞれの役割を全うし合えば充分その穴は補えるからだ。
 今回優先的にスタメンマスクをかぶるのはおそらくダシェンコ・リカルドだ。以前ジャイアンツ傘下のマイナーチームに在籍した彼は、大きい身体を活かした力強い打撃が長所である。オランダからすると決して格上ではないオーストラリアなどと対戦するときはからの打撃に期待したい。
 もう一人、捕手として選ばれたバス・ノーイ。彼は、国内リーグ、代表チーム共々S,デヨングとともにプレーしてきた。デヨング魂の継承者と言っても過言ではない。彼の強みは強気のリードと、ガッチリとした体を生かしたワンバウンド止めだ。国内リーグではまだ高校生チームから上がったばっかりの投手を強気のリードで勝たせたこともある。また、常日頃から国内組の投手陣の球を受けていて、ひとりひとりの特徴をよく把握している。また、デヨングよりもワンバウンド止めが上手く、投手も安心して落ちる球を投げることができる。韓国戦など、エース級の投手を注ぎ込まなければならない試合での彼のリード、守備に期待だ。
 三人目のデクーバは、打撃が力強い。野球ユーロの決勝でホームランを放つなど、かなりのパンチ力を秘めている。ビバインドの場面で二塁打を放ち、二塁に頭から滑り込むなど気迫あふれるプレーも魅力だ。捕手の中では彼だけ左打ちだ。今回はここぞという場面での代打などからの勝負強さを発揮してもらいたい。

 Jsportsの各国戦力分析ではオランダの成長度が高く評価されていた。今回のオランダはまたさらに進化している。安定した投手陣、鉄壁の守備力の他に、一発のある打撃が加わったのだ。オランダが各国の前に立ちはだかるのは確実だ。今回のオランダは強い。
 
 
 最後に今回のキーマンを挙げておく。おそらく7,8番を打つことになるであろうクルト・スミスとカリアム・サムスだ。クリーンナップを打つバレンティンとジョーンズがかなりの警戒をされるのは必至だ。その後ろの彼らがいかに残ったランナーをホームに返せるかが鍵になる。


The finale WBC-roster is as follows:

Pitchers (13):
Jonathan Balentina (University of Maine Black Bears/Baltimore Orioles), David Bergman (Corendon Kinheim), Leon Boyd (Burnaby Bulldogs, Canada), Rob Cordemans, Kevin Heijstek (both L&D Amsterdam Pirates), Berry van Driel, Diegomar Markwell, Orlando Yntema (all DOOR Neptunus), Jonatan Isenia (Baltimore Orioles), Shairon Martis, Tom Stuifbergen (both Minnesota Twins), Loek van Mil (Cincinnati Reds) and Mark Pawelek (no club).

Catchers (3):
Quintin de Cuba (Corendon Kinheim), Bas Nooij (L&D Amsterdam Pirates) and Dashenko Ricardo (Free Agent, San Francisco Giants in 2012).

Infielders (7):
Xander Bogaerts (Boston Red Sox), Yurendell de Caster (Winnipeg Goldeyes, Independent League), Michael Duursma (L&D Amsterdam Pirates), Jonathan Schoop (Baltimore Orioles), Andrelton Simmons (Atlanta Braves), Curt Smith (Free Agent, Miami Marlins in 2012) and Hainley Statia (Milwaukee Brewers).

Outfielders (5):
Wladimir Balentien (Yakult Swallows, Japan), Roger Bernadina (Washington Nationals), Andruw Jones (Tohoku Rakuten Golden Eagles, Japan), Randolph Oduber (Baltimore Orioles) and Kalian Sams (Seattle Mariners).

The staff looks like this:

Coaching Staff:
Hensley Meulens (Manager), Brian Farley (Bench Coach), Ben Thijssen (1B Coach), Wim Martinus (3B Coach), Tjerk Smeets (Hitting Coach), Bert Blyleven (Pitching Coach), Steve Janssen (Bullpen Coach).

Supporting Staff:
Pepijn van Ingen (Physical Therapist), Ton Meiresonne (Equipment Manager), Peter Meijers (Team Manager), Duco Abspoel (Media Officer), Robert Eenhoorn (Technical Director).

(from Grand Slam http://catcher.home.xs4all.nl/bb13-2202nl.htm )

1 シモンズ ss
2 スコープ 2b
3 バーナディナ cf
4 バレンティン rf
5 ジョーンズ dh
6 ボガーツ 3b
7 サムス lf
8 スミス 1b
9 リカルド c
 
先発 
コルデマンス、マークウェル、イェンテマ

リリーフ
ファンミル、ボイド、パべレック