蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

2014ホーフトクラッセ前半戦レポート

 
 大変長いことご無沙汰しておりました。私の完全なる怠慢で更新を怠っていました。申し訳ありません。と、ここで、急な変更になりますが、ブログの名前を『蘭学事始~オランダ野球』から『蘭野球事始』に改名したいと思っております。私自身、以前から「学」という言葉が入っていることに違和感を感じておりまして、加えて「オランダ野球」というものを語っているんだよ、ということが分かりやすい名前のほうがいいのかな、と。ブログ自体の基本的な姿勢は一切変わりませんので、ご心配なく。その前に、もっと更新しろよ、と言われそうですが、、、(笑)

 さて、時は早いもので、オランダ野球リーグ・ホーフトクラッセは既に前期21試合に加え、後期の12試合、計33試合を消化しています。現在はオールスターを挟んで、ハーレムホンクボルウィークによりリーグ休止期間に入っておりました。が、今夜からいよいよ後期の残す3カードの戦いが再開されます。そこで、この大事な終盤戦に向けて少しでも今年のホーフトクラッセの様相を総括しておこうと思い、筆をとった次第です。これまでのリーグ全体の総括、好調選手の紹介を通してそれを見ていきたいと思います。



以下に順位表を引用しております。

Team GW W G V MIN P RV RT
1 DOOR Neptunus 33 29 0 4 0 58 229 65
2 L & D Amsterdam P. 33 26 0 7 0 52 253 71
3 Vaessen Pioneers 33 23 1 9 0 47 244 120
4 Corendon Kinheim 33 22 0 11 0 44 165 117
5 UVV 33 10 2 21 0 22 108 208
6 Mr.Cocker HCAW 33 9 1 23 0 19 118 176
7 AdoLakers 33 6 1 26 0 13 77 275
8 Mampaey The Hawks 33 4 1 28 0 9 101 263

KNBSB(http://www.knbsb.nl/verenigingen/competitie/honkbal/!/standen/2505/hoofdklasse/honkbal-hoofdklasse-totaalstand)より



【前期レポート】
 まずここで、今期から変更になったフォーマットをおさらいしておきます。全8チームが戦うシーズン全42試合を半分に分け、前期・後期のそれぞれ上位2チームがプレーオフへの進出権を得ます。後期の上位2チームが、前期のそれと被った場合はそれぞれ3位、4位のチームが繰り上げで進出権を得ます。この4チームで戦うプレーオフの上位2チームがオランダシリーズを行い、オランダ一が決定されます。また、進出できなかった他4チームはプレーダウンへ。そして、そこでの最下位が二部リーグ優勝チームとの入れ替え戦に望む、という流れです。

 さて、既に前期が終了したということは、2チームがプレーオフ進出を決めているということです。最後の最後までもつれた結果、ネプチューンズとパイオニアーズがその切符を手にすることになりました。例年通り、トップ4(ネプチューンズ・パイレーツ・パイオニアーズ・キンハイム)が早い段階で上位争いを繰り広げたのですが、キンハイムが一足先に脱落すると、ネプチューンズ・パイレーツ・パイオニアーズの三つ巴の様相を呈しました。
 最後の二節でパイレーツ対ネプチューンズ、パイレーツ対パイオニアーズの直接対決が有り、前者の直接対決を2勝1敗と勝ち越したネプチューンズが、先にプレーオフ進出を手中に収めました。先発ローテを4人で回し、打線には安定感があった彼らは、順調に勝ちを伸ばしたと言えるでしょう。

その後の焦点はパイレーツ、パイオニアーズのどちらが2位で抜けることができるか、ということだけでした。そんな中迎えた決戦、三連勝するしかほぼ道がないパイレーツは、初戦は確実に取らなければなりませんでした。そこで先発を任されたのは、それまで負けなし、防御率0点台のヘイステックでした。が、まさかの5失点。奇策が裏目に出てしまします。打線もパイオニアーズの助っ人エース・ヘルナンデスに完封を喫してしまいます。
2戦目は、パイレーツはJ,デヨングが今期一の投球を披露し、星を五分に戻します。
3戦目、勝てば進出を決めるパイオニアーズは今期から加入し、先発ローテーションを守り続けているファンフローニンヘンを先発させます。対するパイレーツはオーストラリア人助っ人モーデイを先発させます。前期救援失敗を繰り返してきたモーデイはいい意味で期待を裏切り、5回を2失点で先発の役割を果たすと6回にパイレーツが若手ボックの犠飛で勝ち越し、7回にはパイオニアーズのリリーフエース・ブリンフから4番ベルケンボスがダメ押しの2ランホームランを放ち、パイレーツがこの試合を制し、2位通過の可能性を、雨で流れていたパイオニアーズ対ユトレヒトの結果を待つことになりました。
 結果はパイオニアーズが大勝し、望みは絶たれてしまいましたが、このパイレーツの粘りは後期に確実に生きてくるでしょう。パイオニアーズはBクラスのチームから星をこぼさずに、先発ローテが思いのほか安定していたのが勝因でしょう。

 一方、下位のチームはホークスが最下位。昨年とはガラリとメンバーが変わったチームは、未だ昨年のようなチーム力を見せられていません。昨年4番としてチームを引張った若き主砲・ファンドンセラールが思うように打点を稼ぐことができてないのが大きいのかな、と。逆に内容のいいチームはHCAW。オランダの若手育成所とも言えるこのチームですが、今年は育成だけでなくチームとしても侮れない。デビューから既にエースに上り詰めつつあるリーテルは即戦力として活躍しています。現状、下位4チームはトップ4に水を開けられていますが、まだ後期も9試合残っております。この4チームから、トップ4を脅かすチームが出てくることを待ち望むばかりです。




【好調選手紹介】

○ミーシャ・ハルクセンMisja Harksen
(DOORネプチューンズ)右投手 1995,4 age19

 昨シーズンオフにMLB球団と契約を結んだ一人。ほかのルーキー達が早々と渡米をする中、ルーキーリーグ開幕までは一人オランダに残ってホーフトクラッセでプレーを続けることを選択しました。
 前期を1位通過したネプチューンズのローテの三枚目を同級生のティメルと共に争いながら結果を残しました。8試合に登板し、5勝0敗、防御率1.59。新人としては目を見張る成績を残し自信を持ってアメリカへと旅立ちました。近年、MLBへ挑戦するオランダ人の多くがホーフトでのプレーを経験せずに、直接アメリカへ渡るケースが多いので、今回ハルクセンがホーフトで実力を披露してくれたのは、非常に貴重であったのと同時に、個人的に非常に嬉しいものでした。


○フローリス・ティメルFloris Timmer
(DOORネプチューンズ)右投手 1996 age18

 今シーズンからルーキーリーグ(高校生リーグ)からホーフト一軍に昇格してきた新人。ドジャースと契約を結んだハルクセンに負けじとローテ三枚目を争いました。8試合に登板し4勝0敗、防御率3.47。これもルーキーリーグ上がりの新人としては突出した成績。しかし、ハルクセンと比べると防御率や被安打数(ハルクセン22、ティメル9)などは見劣りする。完成度はまだまだ。
 しかし、これからホーフトでしっかりと右腕に磨きをかけて代表入りを果たして欲しい逸材であることは間違いありません。


○マイケル・リーテルMaickel Rietel
(Mr,Cocker HCAW)右投手 1995 age18

 シドニー・デヨング、ルーク・ファンミルを始めオランダ代表クラスの選手を輩出してきたHCAWに、「オランダの若手育成所」という名前を個人的につけているのですが、HCAW在籍時に突出した成績を残す選手自体は多くありません。しかし、今期HCAWのエースを実力で掴みチームをひっぱている投手がこのリーテルです。当初はロングリリーフとして起用されていたのですが、そこでの好投により次第に先発を任されるようになりました。
 パイオニアーズ戦では7回を3安打2奪三振に抑え、チームに金星をもたらしました。防御率は3.29ながら打線の援護がなく、3勝5敗と勝運がついてきていませんが、粘り強く投げていけば勝もあとから付いてくるでしょう。
 細く華奢に見えるような体格ですが、体のバネを生かした投球が魅力。メガネの向こうは無垢で童顔な若者ですが、彼の頑張り次第ではトップ4にも勝てる。更には、来季のトップ4への移籍も見えてくるかも…


○ケニー・ベルケンボスKenny Berkenbosch
(L&D Amsterdam pirates)一塁手・外野手 右投げ右打ち 1985.3 age29
 
 近年はパイレーツの主軸としてのみ知られる彼ですが、以前は二刀流選手としてプレーしていました。実は、2006WBCにも選出されています(出場機会はありませんでしたが)。
 昨年、打率.359でキャリアハイの成績を残しましたが、今季はさらに進化を遂げています。33試合で打率.333、6本塁打、37打点。確率だけでなく長打力にも磨きをかけています。本塁打数はエンヘルハルトに次ぐ二位、打点は一位につけています。また、特筆すべきは三線が10と少なく、四死球が23と多いこと。打率.439でトップのB,デヨングや、エンヘルハルトと比べても三線は半分近く少なく、倍近く四球を選んでおります。純蘭性スラッガーとして、チームの4番として確実性・長打・出塁と、あらゆる面において完成度は非常に高くなっています。
 貧打に苦しみ4番を固定できていないオランダ代表にもってこいの人材だと思うのですが…


○ジルメール・ランぺGilmer Lampe (UVV)
 外野手 右投げ右打ち 1990.1 age24

 アルバ出身の彼は、昨年までシアトル・マリナーズ傘下でプレーしていました。今期からUVVに加入。3番打者としてチャンスメイクをしてチームに貢献しています。打率は.345、7打点、11盗塁。後期の課題としては打点を増やすこと。自慢の足で広い守備範囲を誇り、ピンチの芽を摘んでいます。
 彼と4番のベルギー人助っ人デクイント、更には5番バーゼインの活躍次第ではUVVを4位に導くことも夢ではありません。




 以上、オールスター後の休み期間までの33試合の総括と、好調選手の紹介でした。もし、ホーフトクラッセのスコア速報や試合結果をお目にする機会がございましたら、今回取り上げた選手を気にかけて見ていただけると幸いです。
 さて、後期の展望はいかに。プレーオフをかけた負けられない試合が始まります。スコア速報、試合結果はツイッター(@macchakiromen)にて随時つぶやいていきますのでよかったらフォローの方を。