蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

オランダ野球ホーフトクラッセ2015前期 WPTオランダ代表

2015-07-07 15:18:53 の記事です。

 

 大分ご無沙汰しております。私事ですが、将来に向けて忙しい時期でして、、、その間に、オランダ在住の"NL Honkbal"がヨーロッパカップのレポートを詳しく書いてくれました。やはり、生で見ると言えることは違いますね。写真でイメージもしやすいですし。過去記事で是非チェックして下さい。

  今回は、ホーフトクラッセの現在の状況を簡単にレポートするとともに、7月に控えているオランダ主催の国際大会ワールドポートトーナメント(ロッテルダム)のオランダ代表メンバーの選考について少しばかり語ってみたいと思います。

(1)ホーフトクラッセの前期1位はアムステルダムネプチューンズ 前期の1位通過で、プレーオフ進出を決めたのはこの2チームになりました。両者ともに16勝5敗。

 昨季王者のキュラソーネプチューンズロッテルダムは予想通りの1位といったところでしょうか。まず、いい意味で予想外な出来事といえば、リーン・フェルノーイ(Rien Vernooij)の復帰。10代の頃はニューヨーク・メッツ傘下でプレーし、2012年迄はネプチューンズの主砲として活躍していました。ところが2013年のシーズン開幕と同時にいきなり消息不明に。その年、アルバからブークハウトなどを獲得したとは言え、チームにとって前年の4番打者で打点王が抜けるのは大きな痛手でした。今季復帰した彼は、主に5番ファーストで出場し打率.392、1本塁打、17打点。ブランクを全く感じさせないパフォーマンスを見せてくれています。また、今季ADOから移籍してきたクリスチャン・ディアス(Christian Diaz)も打率.404、16打点、1本塁打。チームの要で代表常連のデゥエイン・ケンプ(Dwayne Kemp)も打率.362、18打点、1本塁打。彼ら上位打線だけでなく、9番打者のシャルディマー・ダーンティ(Shaldimar Daantij)さえも打率.356、24打点、2本塁打と気を抜けるところのない強力打線が出来上がっています。 

 一方の投手陣はというと、UVVから移籍してきたベルギー代表ケニー・ファンデンブランデン(Kenny van den Branden)が大車輪の活躍。8試合に先発し59イニングを投げ、6勝2敗、防御率1.21、54奪三振。独特なサイドスローで投げるボールをなかなか捉えることが難しいようです。もちろんエースのディエゴマー・マークウェル(Diegomar Markwell)も防御率2.34で8勝2敗、46奪三振。そしてなんといっても日本から復帰した絶対的守護神ルーク・ファンミル(Loek van Mil)。18試合に登板し22イニングを投げ、防御率0.40、1勝1敗、6セーブ、27奪三振。彼が出てきたら最後、と他チームに言わしめる完璧な内容のピッチングを続けています。ちょっとレベルが違いますね。 

 あえて優勝への課題をあげるなら不振にあえぐ4番ブークハウトと、先発インテマの復調でしょうか。昨季オランダシリーズMVPのファンドリールを先発に回してもいいかも。

 L&Dアムステルダムパイレーツは主砲のバス・デヨング(Bas de Jong)、ペルシー・イセニア(Percy Isenia)が抜け、打線に大きな穴が空き、得点力不足が心配されていました。しかし、前期21試合でのチーム得点はリーグ3位の123得点。1位ネプチューンズの134得点と比較しても11点差しかありません。この結果に大きく寄与したのが瞬足好打のレムコ・ドライヤー(Remco Draijer)。現在34試合を終え、打率.345、21打点とチームを牽引しています。元々彼は1,2番タイプの打者ですが、B,デヨングの移籍に伴いクリーンナップを任されました。不調の1,2番陣の代わりに出塁する役割もこなし、前半戦の不調な打撃陣の中一人奮起し、結果的に1位になれた原動力といっても過言ではないでしょう。こうした国内で地道に頑張っている選手が代表に選ばれて欲しいのですが、、、 

 一方の投手陣。今季もダブルエースが凄まじい成績を残しています。オランダのレジェンド、ロビー・コルデマンス(Robbie Cordemans)は11試合に先発し67イニングを投げ、5勝2敗、防御率0.54、72奪三振。オランダの次世代エース、ケフィン・ヘイステック(Kevin Heijstek)は9試合に先発し64イニングを投げ、8勝1敗、防御率0.97、1セーブ、59奪三振。この二人の大活躍により、チームの失点はわずか41点。また、今季から先発に転向したローテ3番手のカイル・ヴァルド(Kyle Ward)も5勝2敗、防御率2.01と安定しており、先発投手人の安定がこの位置につける所以になったのは言うまでもありません。 

 現在では、ケニー・ベルケンボス(Kenny Berkenbosch)やバス・ノーイ(Bas Nooij)らの調子も上がってきており、以前よりは得点力も増してきました。足が速い選手が多いだけにもう少し機動力を使えるかが優勝の鍵になってきそうです。

 

 

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レムコ・ドライヤー

 

(by Henk Seppen)

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ロブ・コルデマンス

(by Henk Seppen)

 他のチームについても多少述べておきます。前期21試合を15勝5敗の3位で通過したコレンドン・キンハイム(ハーレム)はキャプテンとして長年チームを引っ張ってきたルネ・クレーマー(Rene Cremer)と、セカンドのブヨールン・ヘンリクス(Bjorn Henrichs)が引退。これに伴い、ザ・ホークスからオランダ代表にも入っているケフィン・モスキート(Kevin Moesquit)が、また米マイナーからリリースされ、2014年にはU21オランダ代表にも選出されたダドレイ・レオノラ(Dudley Leonora)が加入。マイナー経験のあるキュラソー組の若手が加わり、大幅に布陣が変更しました。主にセカンドにモスキート、ショートにレオノラ。ともに3割近くのアベレージをマークしており、現在の所は昨年に引けを取らない打撃陣が実現しています。主砲、ブライアン・エンゲルハルト(Bryan Engelhardt)も復帰し、ホーフトクラッセ2年目のダシェンコ・リカルド(Dashenko Ricardo)が現在32試合に出場し打率.371、4本塁打、23打点と覚醒。名実ともに“強打の捕手”になりつつあります。侍ジャパン戦で野球ファンの度肝を抜いたエース、トム・スタイフベルヘン(Tom Stuifbergen)も9試合に先発し、防御率1.94、4勝1敗、46奪三振とそこそこの成績は残しています。よほどのことがない限り、このチームも順当にプレーオフに進出してくるでしょう。

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トム・スタイフベルヘン

(by Henk Seppen)

 4位通過したファエッセン・パイオニアーズ(ホーフトドルプ)は元シカゴカブスのプロスペクトのラルス・ハイヤー(Lars Huijer)がアメリカから復帰。10試合に先発し、防御率2.15、6勝2敗、49奪三振。エースとして十分な働きをしています。スペイン代表のヘルナンデスも6勝を上げており、先発陣は安定。打線も元代表のクロースター(Dirk van’t Klooster)、フィンス・ローイ(Vince Rooi)、代表の(Danny Rombley)が中軸を担い、キンハイムから移籍のクインティン・デクーバ(Quinten de Cuba)が打率.325、4本塁打、21打点と活躍。守護神コルネリッセも既に8セーブをあげており、大きな弱点は見つからず。このチームも順当にプレーオフに駒を進めてきそうです。

 下位の4チームでは5位にUVV(ユトレヒト)。左右エースが奮闘。右腕ファンゼイル(Jurjen van Zijl)が5勝4敗、防御率1.98。左腕のプルーヘル(Jim Ploeger)も5勝4敗、防御率2.03。昨年も一人奮闘した先発のファンデンブランデンがネプチューンズに引き抜かれているように、彼らも来年は引き抜かれる予感。特に左腕不足は近年オランダ代表の喫緊の課題。プルーヘルは2009年のワールドポートに選ばれているホープ。彼を近い将来オランダ代表で見るのも遠くはないでしょう。 6位は2部から昇格1年目で大奮闘。ネプチューンズからも大金星を挙げた。アムステルダムのルーキーチームから移籍したマイク・フルーン(Mike Groen)が先発に中継ぎに奮闘。防御率は未だ1.75。元アムステルダムのケフィン・へーストマン(Kevin Geestman)がなんと18試合に登板し、防御率0.44、2勝0敗。守護神として大車輪の働きを見せています。のちのちはアムステルダム戻るのではないでしょうか。また、マックス・プルーフストラ(Max Ploegstra)も中継ぎで既に20試合に登板、奮闘中です。打撃陣ではトップバッターのマックス・スミット(Max Smit)、クリーンナップのティノ・ファンエルク(Tino van Erk)がほぼ毎試合に出場し好成績を残し続けています。前者が打率.280、後者が打率.296。両者ともDSSの生え抜きで2部から昇格1年目のチームの主力の成績としてはまさに「御の字」です。課題は長打力。パワーをつけましょう。これからに期待の若手がたくさんいる楽しみなチームです。

  7位はHCAWバッセッム。若いチームがさらに若くなった今季は苦戦。ベテラン勢も苦戦。8位は昨年同様マンパエイ・ザ・ホークス。キュラソーから助っ人を多数補強するも、打線、投手陣ともに低迷。下位4チームの中でも明らかにチーム力が劣っています。プレーダウンを勝ち抜くためにいは、補強が不可欠ではないでしょうか。

(2)ワールドポートトーナメント2015のオランダ代表発表 

オランダ主催で2年に1度開かれる国際大会。今年に出場国はオランダ、キュラソー、日本、キューバ、台湾。 

投手 (11) 

Arshwin Asjesアーシュイン・アシェス, 

 Tom Stuifbergen トム・スタイフベルヘン(both Corendon Kinheim), 

Mike Bolsenbroek マイク・ボルセンブルーク(Regensburg Legionare, Germany), 

 Rob Cordemansロブ・コルデマンス, 

 Kevin Heijstek ケフィン・ヘイステック(both L&D Amsterdam Pirates), 

Bayron Cornelisseバイロン・コルネリッセ (Vaessen Pioniers), 

Berry van Drielベリー・ファンドリール, 

Kevin Kellyケフィン・ケリー, 

Diegomar Markwellディエゴマー・マークウェル, Loek van Milルーク・ファンミル 

Orlando Yntemaオーランド・インテマ (all Curacao Neptunus).

 

捕手 (3) 

Gianison Boekhoudtジアニソン・ブークハウト (Curacao Neptunus), 

Quintin De Cubaクインティン・デクーバ (Vaessen Pioniers) 

Dashenko Ricardoダシェンコ・リカルド (Corendon Kinheim).

内野手 (6) 

Michael Duursmaマイケル・デュルスマ, 

Nick Urbanusニック・ウルバナス (both L&D Amsterdam Pirates), 

Dwayne Kempデゥエイン・ケンプ, 

Stijn van der Meer ステイン・ファンデルミール(both Curacao Neptunus), 

Dudley Leonoraダッドレイ・レオノラ 

Kevin Moesquitケフィン・モスキート (both Corendon Kinheim).

外野手 (4) 

Shaldimar Daantjiシャルディマー・ダーンティ, Christian Diazクリスティアン・ディアス (both Curacao Neptunus), 

Gilmer Lampeジルマール・ランペ (UVV) 

Danny Rombleyデニー・ロンブリー (Vaessen Pioniers).

Coaching Staff 

Steve Janssenスティーフ・ヤンセン (監督),Sidney de Jongシドニー・デヨング (Bench Coach), 

Evert-Jan ‘t Hoenエフェルト-ヤン・エトゥーン (1B Coach), 

Ben Thijssenベン・セイセン (3B Coach), 

 Mike Hartleyマイク・ハートリー (Pitching Coach) 

Wim Martinusヴィム・マルティナス (Bullpen Coach).

 簡単に今回の選考についての感想を述べておきますと、長距離砲がいないなあ、と。今季はホーフトクラッセでもホームラン争いが例年に比べて本数が少ないのは否めない。それでも、コイツがいれば4番は安心して任せられるというような選手がいないのが実状でしょうか。具体的にいえば、フェルノーイが入ってないのが驚き。また、シーズンで好成績を維持しているドライヤーはセーフティバントなど機動力を使える万能選手。代走や守備固めでも使える筈。彼が入らないのは個人的に長年の謎です。 また、今季はヴァルドやプルーヘルなど左腕投手が数名台頭してきているのにも関わらず、左はマークウェルのみ。この大会は国内で使えそうな選手を試すための国際大会の筈。今回の先行に対しても日本からではありますが苦言を呈しておきます。 まあ、文句ばかり言ってても仕方ないので注目選手を上げておきます。一人はクラブ欧州一を決めるヨーロッパカップ2015でMVPに輝いたステイン・ファンデルミール。現在はアメリカのラマー大学でもプレーし虎視眈々と来年のメジャードラフトでメジャー球団との契約を勝ち取ろうと奮闘しています。大学では3番を担い、チームの中軸に。ネプチューンズでは1番としてチームの得点源になっています。アクロバティックな守備も特徴で、キュラソーの内野陣にも対抗できるオランダの選手としてこれからの成長が期待できる選手です。この大会でもMVPを期待しましょう。

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ステイン・ファンデルミール

(by Henk Seppen)

 現ドジャースのヤシエル・プイグ(キューバ)やカブスのクリス・ブライアント(アメリカ)なども出場経験のあるオランダ主催の国際大会。未来のメジャーリーガーの卵も見られるような面白い大会ですのでぜひ楽しみましょう。大会情報はtwitter「蘭野球事始」の方で随時紹介していきます。

※写真は知人の現地カメラマンによる提供です。無断での転載等はかたくお断りします。