蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

WPT 2015 オランダ 第3戦 vs キューバ

2015-07-25 18:43:09 の記事です。

 

7月21日(火) 第3戦 vs キューバ

オランダ 12-7 キューバ
勝:ベリー・ファンドリール(オランダ) 負:ダニー・アギレラキューバ

オランダ先発メンバー
1・セカンド ケフィン・モスキート(コレンドン・キンヘイム)
2・ショート スタイン・ファンデルメールキュラソーネプチューンズ
3・ライト ダニー・ロンブリー(ファエッセン・パイオニアーズ)
4・DH ジアニソン・ブークハウト(キュラソーネプチューンズ
5・キャッチャー ダシェンコ・リカルド(コレンドン・キンヘイム)
6・レフト クリスティアン・ディアス(キュラソーネプチューンズ
7・ファースト クエンティン・デクーバ(ファエッセン・パイオニアーズ)
8・サード ニック・ウルバヌス(L&Dアムステルダム・パイレーツ)
9・センター シャルディマー・ダーンチ(キュラソーネプチューンズ
ピッチャー オーランド・インテマ(キュラソーネプチューンズ

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オランダの3試合目はキューバ。オランダはチャイニーズ・タイペイに6対5、続くキュラソーに10対6と2連勝中。一方のキューバチャイニーズ・タイペイに4対2、日本に13対5と同じく2連勝中。勝った方が予選ラウンドの首位通過が決まる注目の一戦です。

オランダの先発は地元ロッテルダムのチーム、ネプチューンズでもマウンドを預かるオーランド・インテマ。ここ数年は常にオランダ代表に選出されていて、2011年ワールドカップ優勝、13年WBCベスト4、14年欧州選手権優勝、15年3月日欧野球選出、11月のプレミア12の予備ロースターにも既に入っている29歳右腕。良い悪いが非常にハッキリしているピッチャー。球は重いもののストレートは140キロ程なので、丁寧に低めに集めて打たせて取るピッチングが出来るかが一つの鍵となります。

試合は1回表、オランダが先制します。2番スタイン・ファンデルメールを2塁、4番ジアニソン・ブークハウトを1塁に置き5番のダシェンコ・リカルド。完全に打ち取られた当たりにも関わらず、結果セカンドのタイムリーエラーとなりファンデルメールが生還。

そんなインテマ、今日は「良い」インテマが出ている様子。140キロ前後のストレートを中心に打たせて取るピッチングを見せます。初回に1点を失ったものの、その後もランナーは出すものの要所を締め5イニングを被安打7、60球で投げきります。普段のリーグではこのインテマ、1、2失点の好投でも勝っていなければ5イニングでマウンドを降ります。勝っている展開では7イニング投げてサヨウナラが彼のパターン。それが今日は1対1の同点で6イニング目もマウンドに上がったので、「珍しい、まだ60球だからかな…。」と思っていたら6イニング目に失点します。この回先頭の3番ユリスベル・グラシアルに初球を三塁線を抜ける2塁打で出塁を許すと、続く4番オズワルド・バスケスにレフトへ2ランホームランを打たれます。日本戦でも2本をかっ飛ばしたキューバの主砲が火を噴きました。1対3とキューバに勝ち越された時点でインテマ降板。この交代を見る限り、イニングとしてはもともと5回で替える予定だった模様。

変わってマウンドに上がったのはアーシュウィン・アシェス。しかし前回の日本戦同様、勢いづいたキューバを止める事が出来ず。1アウトしか取れず1失点でベリー・ファンドリールへ。ネプチューンズの中継ぎエースとして活躍をする昨年のオランダシリーズMVP男。このファンドリールは1安打を打たれ2失点するも、最後は好守に助けられこの回終了。なんとか流れを切る。結局キューバは打者一巡、5得点の猛攻。6回表に1点入れただけのオランダを突き放し2対6。

ビッグイニングを作る力ではオランダも負けてはいません。今大会の打線は長打は出ないもの単打を重ねる高打率打線。そのオランダが5失点の直後の7回表、これまで攻めあぐねていたキューバ先発フランク・モンティートが変わった途端、一気に試合をひっくり返します。先頭を1球で打ち取った後、デクーバ安打、ケンプ三塁打、ダーンチ四球、モスキート安打で2得点。ファンデルメールのセンターフライで2アウトになったものの更に粘りを見せ、ロンブリー安打、ブークハウト四球、リカルド三塁打、ランプ四球、デクーバ敬遠、ケンプ四球、押し出しで更に5点追加。この回一気に7得点で、9対6と逆転に成功。キューバはこの回で投手6人をつぎ込む大惨事となりました。

とはいえまだ3点差、キューバも望みを捨てていません。先頭の3番グラシアルが1–0からの2球目、低めの変化球をレフトスタンドへいとも簡単に運び2点差に詰め寄ります。するとオランダのヤンセン監督が早めに動き、わずか6球投げただけのファンドリールを諦めます。続いて出てきたのは初戦のチャイニーズ・タイペイ戦で途中から登板して見事勝ち投手となった、バイロン・コルネリッセ。足を上げる時に体を少し内側に捻り、スリークォーター気味に力強いストレート投げるオランダの若手エース。4番、5番、6番を三振、三振、サードゴロと完全に流れを断ち切ります。結局キューバの反撃もここまで。流れを再度引き寄せるべく、8回表に2点、9回表に1点追加し12対7。7回に好投したコルネリッセも8回裏をレフトフライ、セカンドフライ、三振とまた三人で打ち取り、9回裏を抑えのルーク・ファンミルに託します。ファンミルの3人で終わらせゲームセット。オランダの投手層の厚さが顕著に出た試合で3勝目を上げ、1位での予選突破を決めました。

9回裏オランダ代表ルーク・ファンミル


総評

今回のオランダは単打を重ね、徐々に流れに乗るチーム。キューバはホームランで火を点け、一気に流れに乗るチーム。その差が結果となって見えた試合でした。オランダはコツコツとヒットを打ち、また足もあるため凡打でもセーフとなったり、守備側の一瞬の判断ミスで塁に出たりと、なかなか途切れる事のない打線です。キューバはドカンとホームランや外野オーバーの長打で流れに乗りますが、大きく打ち上げる事でオランダの俊足外野陣の餌食になる事もあり、一度切れたらまた次の長打まで待つような状況。その点ではオランダはホームランを打たれた時点で投手を交代、相手に流れに乗せない事を非常にフォーカスした投手起用だったように思います。逆にキューバは6回を2失点、75球だったモンティートをなぜあのタイミングで変えたのか。今大会のレギュレーションでは、決勝トーナメントに進む上で予選1位と2位に違いはありません。つまり試合開始時点で既に2位以上がほぼ確定していた事で、深い勝負は避け、次の登板を考えての温存だったのかもしれません。決勝トーナメント初戦も両者の対決なので、好ゲームを期待します。