蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

WPT 2015 日本 第4戦 vs オランダ

2015-08-01 02:00:28 の記事です。

 

7月22日(水) 第4戦 vs オランダ

日本 1-2 オランダ
勝:ジム・プルーヘル(オランダ) 負:坂本 龍聖(日本)

日本先発メンバー
1・サード 庄野 雄斗 大阪体育大・3
2・レフト 三矢 大将 大阪産業大・3
3・キャッチャー 木村 侑輝 大阪体育大・4
4・ショート 田村 強 大阪体育大・4
5・DH 上田 哲平 関西国際大・3
6・セカンド 木戸地 一希 大阪体育大・4
7・センター 堅田 啓太郎 大阪体育大・2
8・ファースト 原田 和舞 関西国際大・4
9・ライト 小中 悠平 天理大・4
ピッチャー 中川 一斗 天理大・2

オランダ先発メンバー
1・サード ドゥウェイン・ケンプ(キュラソーネプチューンズ
2・ショート スタイン・ファンデルメールキュラソーネプチューンズ
3・ライト ダニー・ロンブリー(ファエッセン・パイオニアーズ)
4・DH ジアニソン・ブークハウト(キュラソーネプチューンズ
5・キャッチャー ダシェンコ・リカルド(コレンドン・キンヘイム)
6・レフト クリスティアン・ディアス(キュラソーネプチューンズ
7・ファースト ダドリー・レオノラ(コレンドン・キンヘイム)
8・セカンド ケフィン・モスキート(コレンドン・キンヘイム)
9・センター シャルディマー・ダーンチ(キュラソーネプチューンズ
ピッチャー ロブ・コルデマンス(L&Dアムステルダム・パイレーツ)

日本&オランダ国歌

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予選ラウンド最終戦の相手は地元オランダ。夕方の試合という事もあり超満員。観客席には在蘭日本人も数多く見え、始球式は日本でも活躍したオランダ人元K-1ファイターのアーネスト・ホースト。日本語で積極的に話すに日本のファンは驚いていました。

さて、ここまで1勝2敗と負けが先行している日本。ここまで全勝のオランダを倒し、星をタイに持ち込みたい所。

立ち上がりはほぼ互角の内容。日本先発の中川は3回を被安打1、奪三振7の堂々の内容。内に切り込んでくるストレート、低めに集まる変化球にオランダ打線はタイミングが合わず。ただ四球も4つ献上し、ピンチを招く場面も少なからず見られる。ボールになる変化球を上手く使ったリードなので、三振と四球が比例するのも仕方がないところ。オランダとしては追い込まれると分が悪いので、中盤以降は早いカウントから打ちに行きたいところ。

一方、オランダの先発はケビン・ケリー。先発ローテーション通りではオランダのベテラン左腕ディエゴマー・マークウェルのはず。しかし既に首位通過を決めているためマークウェルを温存。リーグでは中継ぎで投げているケビン・ケリーを先発に持ってきました。おそらくケリーを長くても4、5回で替え、残りを1、2回ずつ数人で回して行く模様。

そのケリーは初回3回を被安打無しで切り抜ける。日本の8番原田に、ショート、ファンデルメールのエラーで出塁を許す以外は完璧なピッチング。ゴロにフライに打たせて取るピッチングを披露。中川、ケリー共に好投し、両チーム無得点で3回を終了。

試合が動いたのは4回表、日本の攻撃。1アウトから3番木村がセンター前で出塁すると、相手の守備エラーの間に二塁へ。4番田村がセカンドライナーに倒れ、次は前日のチャイニーズ・タイペイ戦5の4と当たっている5番上田。上田はこのチャンスをしっかり生かし、甘く入った88マイルの直球をレフト前に弾き返し日本が先制。

日本の先制にオランダも黙ってはおらず、直後の4回裏、7番レオノラが1ボールからの2球目をキレイに一二塁間を抜き出塁。デュールスマがレフトフライに倒れた後の9番シャルディマー・ダーンチ。このダーンチはリーグでも代表でも9番センターが定位置。実質1番を勤める事が出来る俊足好打のバッター。1ストライクからの2球目をレフト前に弾き返し、守備エラーの感に、レオノラ、ダーンチ共に進塁、1アウト2、3塁とチャンスを広げます。打順は1番のランプ。レオノラがファーストストライクを安打したように、ランプも初球から積極的に打ちにいきます。三遊間を抜かれ1点を返し同点に追いつきます。失点後ワイルドピッチもあり、1アウト2、3塁とピンチは続くも2番ファンデルメールをセカンドフライ、3番ロンブリーを見逃三振に仕留めチェンジ。オランダを勢いづかせず1失点のみで切り抜けます。

5回以降は両チームともまた沈黙が続きます。日本先発の中川は5回の先頭、左の強打者4番のジアニソン・ブークハウトをショートゴロに打ち取った時点で交代。この試合は早めの継投策を見せ、中川は4回1/3を1失点、8奪三振で今大会初登板を終えました。続いて一昨日のキューバ戦でも好投した田村凌太郎がマウンドに上がります。その田村も5回1アウトから7回1アウトまで、2イニングを被安打ゼロで抑え早々に交代。続く1アウトをキューバ戦にもショートリリーフで登板した服部が取り、2アウトからは同じくキューバ戦以来の坂本が登板。7回を締めます。8回は共に得点圏にランナーを進めるも無失点。いよいよ最終回に突入します。

9回表日本の攻撃は3番の木村から。相対するオランダのマウンドには、8回途中から上がっている左腕のジム・プルーヘル。左投手の少ない近年のオランダ代表において、確実に将来の代表を担う存在です。木村はその初球、ニ遊間を痛烈に抜き出塁。4番の田村もチームプレーに徹し、絶妙に勢いを殺した犠牲バントで木村を二塁に進める。続く上田はセカンドゴロに倒れるも、その間にランナーは三塁へ。2アウト3塁で一打出れば勝ち越しの場面。打席には6番キャプテンの木戸地。完全アウェーの中、一部で起こる木戸地コール。(この木戸地くんだけ、そのキャラクターからか中南米系の熱烈なファンが付いています)2ストライクと追い込まれた3球目、惜しくも外角の変化球を空振りし三振に倒れます。

日本はチャンスを潰した後にピンチを迎えます。先頭でこの大会不調の4番ブークハウトはなんとかセカンドゴロに抑えます。そこでホッとしたのもつかの間、打席にはこの日完璧に抑えていた5番ケンプ。5番ですが長打はあまりなく、怖いのはどういう形であれ塁に出す事。リーグ戦の安打数はリーグ2位、打率はリーグ3位の.369、盗塁は26回中21回成功でリーグ1位、出塁率が非常に高く、安打も四球も、高い確率でイコール二塁打になります。するとそのケンプに三塁線を抜かれます。ケンプは快足を飛ばして楽々と2塁へ。一打サヨナラの大ピンチ。続くはここまで4割近い打率をおさめている6番のデクーバ。バッテリーは四球もいとわずひたすら外を突きます。カウントは2–0とボール先行の3球目。外のストレートに手を出し、センターに打ち上げます。センターの堅田は完全にボールを捕らえていたようですが、突如後方へ追い始めました。フライ自体はキャッチしたものの、完全に体重が後ろに乗った状態での補球。2塁のケンプは迷わずタッチアップ、3塁を目指します。その3塁へ投げた堅田の送球が高めに浮き、投げた瞬間に中継のショート田村が届かない高さとわかると三塁ベースコーチのベン・タイセンは迷わず腕を回します。ケンプも少しでも送球が逸れたら本塁を狙う走塁。完璧なコーナリングで本塁へ突入します。3塁で捕球したサードの庄野も、本塁送球までに少し手間取っていると時すでに遅し。ヘッドスライディングで生還のケンプに沸く観客。オランダのサヨナラ勝ちで3時間を超える熱戦は幕を閉じました。

9回裏オランダのサヨナラ犠牲フライ


勝利のオランダは4戦全勝で予選を首位通過。日本は1勝3敗で、キュラソーチャイニーズ・タイペイと並び、直接対決、得点差などから3位での通過が決まりました。

総評

日本は先発中川の好投が光りました。オランダにとっては予選消化試合でメンバーを若干入れ替えて来たものの、予選3試合平均9.33得点の打線。そのオランダ相手に4 1/3イニング、奪三振8、失点1は上々の出来だったのではないでしょうか。86球での降板でしたので、あと10球ほど少ない投球で4回まで投げ、100球前後で5回まで投げていれば、また状況は変わったかもしれません。ただその後の田村凌、服部、坂本もランナーを塁に出しながらも抑えていたので、結果としてこの継投策は当たりだったと思います。

勝負の分かれ目は、この試合も最後の一本が出なかった事でしょう。試合を決める決定打がなかなか出ない。全体的に安打数が少ない試合で、せっかくセーフティーバントや盗塁と積極的な攻めでチャンスを作っても最後が出ない。それが全ての試合でした。

流れを引き寄せる事が出来ず負けが続いている日本。決勝トーナメント初戦の相手は第1戦でコールド勝ちしたキュラソーキュラソーに勝てばまだ優勝のチャンスはあります。仕切り直しをして、新たな戦いに臨んで欲しいです。

予選最終順位

1. オランダ / 4勝0敗
2. キューバ / 3勝1敗
3. 日本 / 1勝3敗
4. キュラソー / 1勝3敗
5. チャイニーズ・タイペイ / 1勝3敗