ハーレムホンクボルウィーク2026グループリーグ
2年に1度のヨーロッパ最大の招待型国際大会、ハーレムホンクボルウィークが今年も開幕した。

平均して3,000~4,000のファンが訪れる(Photo:Honkbal TV)
1961年の初開催から数え、今回で31回目を迎える。この大会がハーレムという都市を欧州の野球の首都にしたと言っても過言ではない。また、普段のオランダのリーグ戦では多くて500人程度の観客しか集まらない中、この大会ではオランダ代表の試合では4000人程度を集客する。この国に野球というスポーツを文化として根付かせているもののひとつだ。
元々、地域企業や行政を巻き込んだイベント作りがこの大会を魅力あるものにしているが、近年はSNSも駆使し、積極的な情報発信を行なっている。前回大会ではハーレム市長が登場し、ハーレムという都市のプロモーションにも一躍買っているのではないだろうか。
今大会でもeスポーツ、DJを活かした音楽、地域食を中心としたフード、ベースボール5、野球教室などのファンとの交流など、魅力的な仕掛けを挙げるとキリがない。
ハーレムという街にとってかけがえのないイベントに育てた先達や、現主催者であるヘルケメイさんには頭が上がらない。また、あらゆる場面でイベントを支えるボランティアの方々にも感謝したい。

マップはイベントでびっしり
さて、グループリーグは2位通過。首位のイタリアと同じく4勝1敗と並ぶも、直接対決で敗れたため2位となった。決勝ラウンドではそのイタリアと早速激突。勝者が決勝戦への切符を手にする。リベンジを果たし決勝へ挑みたい。
さて、ここまでのオランダの戦いぶりを振り返りたい。

一新されたホームユニフォーム(photo:Louie Jay Sienders)
グローブトロッターズ(多国籍軍) 1-6 オランダ
勝利投手:ハイヤー
多国籍軍はオランダ人選手のファンデサンデン、ベルギーの至宝モスタートらが出場。オランダ国内リーグホーフトクラッセ所属の2人の活躍で先制する。
一方、オランダはマルティーナの2点タイムリー二塁打で逆転。投手は先発のスルバランから3回途中でハイヤーに継投。なんとしても初戦を勝ちに行く采配にハイヤーが応え、ピンチを凌いだ。
結果的にはセラッサが3安打2打点でヒーローに。ケンプ、マルティーナも2安打も、デビューを飾ったコリンズ、スメーンクには1本出なかった。一方の投手陣ではヒュチェゾンがデビューで好投。幸先よく初戦を勝利した。
オランダ 0-2 イタリア 8回落雷コールド
敗戦投手:ポステルマンス
この試合は一新されたホームユニフォームでプレー。国旗をあしらい、オランダ王国構成国の国旗も入ったお洒落なデザイン。
ライバルイタリアとの一戦の先発はポステルマンス。今季リーグ戦では防御率0点台で首位のチームを牽引している。シーズンの好調のまま150キロ超の速球を使い、6回途中を投げ8奪三振。2アウト満塁のピンチを作ったところで降板するも後続が打たれて負投手。
打線はチャンスを作るも一本が出ず無得点。代表デビューのルーベンがマルチ安打と存在感を示したが、2イニングの攻撃を残し落雷によりコールドゲームとなった。
オランダ 15-4 台湾
勝利投手:ヒュチェゾン
セーブ:ケリー
初回にホームランで先制を許すも、4回に4番ニュートンのツーランで逆転。好調セラッサのタイムリーで追加点を加える。
6回にオランダのまずい守備が続き、3-4と逆転を許すも、7回表に四球やバスターヒットなどで満塁のチャンスを作ると、初招集のコリンズが3点タイムリー二塁打で逆転。リリーフもルァンデルレリー、ヒュチェゾンら、ルーキーが踏ん張る。
すると、9回表にセラッサのツーランホームランが飛び出すなど9得点と打線が大爆発。最終的には、セラッサ、ルーベンが猛打賞となり、打線の目覚めは今後に期待が持てる結果となった。8、9回はケリーが完璧に抑え込んだ。ヒュチェゾンは代表初白星。
キュラソー 4-6 オランダ
勝利投手:マーティス
セーブ:ケリー
初回に先制すると、2回にはカイパーとコリンズのタイムリーが飛び出し3点を先行する。
しかし、先発マーティスが3回に満塁のピンチを作ると、E,レオノラに大会2本目の満塁弾打たれ逆転許す。
それでも、その裏に4番ニュートンの同点弾、ルーベンのタイムリーで逆転し、その後はリリーフ陣が無失点リレー。
オランダ 7-4 チェコ共和国
勝利投手:プリンス
セーブ:ハンチントン
先発はプリンス。初回に先制されるも、その後はゴロを量産し、散発4安打1失点の好投。
打線はニュートンが3号本塁打。セラッサ、コリンズの1、2番がともにマルチと牽引。
終盤にチェコの追い上げを許すも、中継ぎ陣がなんとか踏ん張った。
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決勝ラウンドは唯一土をつけられた、永遠のライバルイタリア。リベンジを果たし、決勝へ駒を進め、2大会ぶりの制覇を成し遂げたい。
オランダ野球ホーフトクラッセ 前半戦寸評
オランダの野球リーグ、ホーフトクラッセの今季は全部で36試合。7チームなので、敵6チームとの3試合を2カード実施する形式だ。
5月終了時点で、ほとんどのチームが半数の18試合を消化した。現時点で昨季王者のネプチューンズ・ロッテルダムがトップを走っている。後を追うのがアムステルダム。続くのがキンハイム、ツインズ、HCAWの3チームだ。

ここまでのシーズンをそれぞれチームごとに目立った選手をピックアップして、紹介していきたい。
1位 キュラソー・ネプチューンズ・ロッテルダム
圧倒的な戦力を有する常勝軍団。他チームに隙を与えず、前評判どおりにリーグを牽引している。そんかチームから投打にピックアップするならば、この2人。
クーン・ポステルマンス 先発投手
ネプチューンズ移籍3年目右腕。ツインズから移籍し、それまで2〜3点台だった防御率を2024年には1.25とし、一気に飛躍。2025年侍ジャパンとの強化試合メンバーにも入った。
今季はなんと6試合を投げ防御率0.30、4勝を挙げている。速球は90-93マイルを計測し、スライダー、チェンジアップで緩急をつける。
5月30日のアムステルダムで、初回に内野安打で得点されるまで、26イニング無失点だった。
代表でも先発としての活躍を期待したい投手であり、まだ25歳という年齢を考えれば海外でのプレーも模索したい。MLB傘下でのプレーがない選手で先発として150キロに迫る投手は稀。今後のキャリアの飛躍にも期待したい投手。
6試合4勝1敗 防御率0.30

(Photo:Martine van Wely)
ダリール・コリンズ 外野手
MLBカンザスシティロイヤルズ傘下でプレーした外野手。U18、U23代表経験もある今後代表を背負っていく選手だ。
マイナー時代もプロスペクトランキングに入るなど、将来を期待させたが、怪我や守備の不安によりリリースされ、2024シーズンよりネプチューンズに復帰している。
ここ2年間は安定して3割を超えるアベレージを残しているが、今季はさらにレベルアップ。18試合消化時点で4割を超えており、本塁打も2本、長打率も.607と長打が打てるようになった。
代表の外野は層が厚くない。守備においてもレベルアップし、代表の外野陣に割って入ってほしい選手だ。

(Photo:Gizzo Media)
2位アムステルダムパイレーツ
昨季2位のHCAWより大量の選手が移籍してきたアムステルダム。思いがけない補強でネプチューンズの対抗馬となった。開幕当初は、下位チームに取りこぼす試合はあったものの、結果わずか2ゲーム差で2位につけている。
ジーンドロ・トロンプ 外野手
アンダー世代代表経験もあるリーグ屈指のアベレージヒッター。長年HCAWの主力として活躍して方が、今季よりアムステルダムへ移籍し、トップバッターてして打線を牽引している。
現在打率は.434。5月は月間MVPを獲得した。加えてキャリア初のホームランも放つなど、長打率は6割を超え、昨年までよりパワーを増している。
センター守備でも貢献しており、彼もオランダ代表に割って入れるだけのポテンシャルがある外野手だ。
ラース・ハイヤー 先発投手
言わずと知れたオランダ代表のベテラン投手。彼もHCAWから移籍し、例年とおりの安定した投球を続けている。
トロンプと共に月間MVPを獲得。6試合で4勝1敗、防御率1.58で奪三振46はリーグトップだ。
16試合目まで無敗だったネプチューンズを7回5安打6奪三振で、17試合目で初の黒星をつけた。
まだ33歳。次回プレミア12、オリンピックに向けて、老け込むわけにはいかない。

(Photo:Martine van Wely)
3位キンハイム・ハーレム
ヨーロッパ野球の聖地、ハーレムを本拠地にする古豪も、15年ほど前の財政破綻により一度リーグから姿を消したが、同じDSSとの連合チームを経て、再び単独チームとして参加できるまでに戻ってきている。
若手主体のチームではあるものの、主軸にはベテランや実績のある選手を抱えることができるようになってきた。侍ジャパン強化試合で活躍したファンボルクロ捕手を獲得し、攻守に中心となっている。
星も9勝9敗の五分。アメリカの大学から復帰する選手たち次第では上位に喰らいつけるだろう。
フース・トゥーメン 外野手
18歳、売り出し中の外野手。ここまで20試合に出場し、長打は少ないものの、打率.397と爆発中。主に9番を打つものの、彼から上位に回し、得点の起点になりつつ、打点も17あげている。
昨季はMLB主催のテストにも参加しており、大学を含めて、アメリカでのプレーに期待したい。

(Photo:Martine van Wely)
リック・リズヴィク 先発投手
アンダー世代代表経験もある左腕エース。ここまで4勝2敗、防御率は2.15だ。昨季もHCAWで6勝3敗防御率1.91の成績を上げており、彼が上位2チームも抑えられるようになれば、面白い。
奪三振率も向上しており、左腕が少ない中で、今年のハーレムホンクボルウィークでの代表入りも視野に入る。

(Photo:Martine van Wely)
4位 オーステルハウト・ツインズ
昨季、3位まで躍進したツインズ。開幕が昨季覇者ネプチューンズだったのも影響し、連敗スタートとなったが、下位チームからは着実に勝利をあげ、星を五分近くまで戻してきた。
元千葉ロッテマリーンズの石川歩投手、ベテラン左腕アンジェラ投手が加入したことにより、先発ローテは安定。助っ人パラー選手頼みの打線がいかに奮起できるかが鍵となりそうだ。
ナンド・モスタート ショート
ベルギー出身の20歳。昨年からチームに加入し非凡な才能を見せているが、今季はなんと打率3割超、OPS1超、本塁打4と覚醒している。
石川投手もその才能を高評価。ベルギー代表にも入る逸材であり、年齢を考えるとアメリカの大学等でプレーしないのが不思議に思えるほどだ。
今後のキャリアプランは不明だが、よりレベルの高い場所でプレーし続けることで、将来が拓ける選手だ。

(Photo:Gizzo Media)
ネルマーソン・アンジェラ 先発投手
キュラソー出身の技巧は左腕で、これがホーフトクラッセ4球団目のベテラン。石川投手とともに、今季より加入し、先発ローテを守っている。
2勝5敗と、勝ち星には恵まれていないが、防御率3.27で、ゲームは作っている。
打線が課題なチームではあるが、石川投手、ハルクセン投手ら、ベテラン先発陣がロースコアに持ち込めば、上位相手にも勝てる試合が増えてくるはず。

(Photo:Gizzo Media)
5位 HCAW
昨季2位、2022年にはリーグ制覇も成し遂げ、近年は常時Aクラスに入っていたが、チームの財政難もあり、主力選手がほとんど流出。その大半がアムステルダムへ移籍した。
がらりと若返ったチームは、なんとか奮闘し、星は8勝10敗。若い選手の中にも、中3となる選手が見えてきた。
数年後にはこれらの選手が大きくなり、再び優勝を狙える位置まで戻ってきてほしい。
メース・ロベルセ 捕手
U18、U23経験のあるキャプテンシー溢れるキャッチャー。今シーズン、打撃好調で3割超、ホームランはないものの、OPSは9割弱となっている。
守備面ではバスボールは一つだけ、盗塁阻止率は.428となっている。投手陣も若い投手が多いだけに、彼の守備力は投手が安心できる要素だろう。
若手捕手には何人かタレントが出てきた。カイパー、ファンボルクロ、パティスト、彼らに負けずに代表を目指して研鑽してほしい。

(Photo:Martine van Wely)
キミ・フェルクライセン 先発投手
19歳のアンダー代表経験のある右腕。数年前に比べ、身体も大きくなり、速球の威力が出てきた。ここまで、防御率3.82ながら、3勝2敗としている。
4月25日のアムステルダム戦では、6回を5奪三振2失点と粘りの投球を見せ、相手エースハイヤーに投げ勝った。
制球を安定させ、無駄なランナーを少なくすれば、もっとチームを勝利に導かことができるだろう。
6位 ホーフトドルプ・パイオニアーズ
ここ数年下位に甘んじているチームだが、若手中心に編成し、アンダー代表の選手も多数擁する。
一時はMLBオランダ開催の候補地として名が上がったトップクラスの球場を抱え、数年前まではAクラスの常連だったが、ここ数年はBクラスに甘んじている。
チームの中心となる選手は出てくるだろうか。
カイロ・ハゼル 遊撃手
トロントブルージェイズとマイナー契約を結んだショートストップ。ルーツはキュラソー、アルバにありながら、生まれも育ちもオランダ本国。オランダの野球環境の中で生まれた内野のホープだ。
打撃成績は2割ちょうどと奮っていないが、まだ18歳なのを加味すれば伸び代しかない。
身体能力に技術が追いつけば、青天井のポテンシャルだ。
ルカ・ファンデルショウ 先発投手
先発ローテをまわす左腕。ペンギンスへ移籍後、4年ぶりにパイオニアーズに復帰した。
防御率6.75ながら、なんとか1勝をもぎとっており、打線も弱い中、なんとかローテをまわして1勝でも多く勝利をもたらしたい。
7位 UVV
オランダ第3の都市ユトレヒトを本拠地にするチームで、2023ねんに2部リーグからホーフトクラッセに復帰した。毎年Bクラスに留まってはいるものの、将来性豊かな選手の中にはチームの中心となる選手も出てきた。
アメリカやオランダ代表を目指せる選手が少しでも増えればAクラス入りも遠くはないだろう。
イングマー・ヒュチェゾン 中継ぎ投手
アメリカの大学でプレー経験があり、速球は150キロを超える右腕。ここまで7試合の登板で、防御率1.83、19イニングで31の三振を奪っている。
ロングリリーフもこなし、セーブもひとつマークしており、様々な役割をこなしている。
先発もできるだけの球種は持ち合わせており、チーム浮上のためには、後半戦での先発登板にも期待したい。

(Photo:Martine van Wely)
ヨリット・パティスト 捕手
攻守にレベルの高い、将来性豊かな18歳捕手。U18などアンダー代表経験があり、この度アメリカのニューメキシコジュニアカレッジでのプレーが決まった。
ここまで打率.329、打点13、OPS1.030、本塁打はリーグトップの5本と、10代としては驚異的な数字を残している。
守備面でもブロッキングなど課題は残すものの、盗塁阻止率は4割超え。フル代表のリザーブメンバーで選ばれたこともあり、ポテンシャルには夢を見てしまう。
16歳からホーフトクラッセで研鑽したものを、アメリカの大学でさらに磨きをかけ、MLBドラフトを目指してほしい。

(Photo:Martine van Wely)
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前評判どおり、アムステルダム、ロッテルダムの両チームの派遣争いとなっている2026年のホーフトクラッセ。
下位チームにも注目できる選手がたくさんいる。それらの選手の活躍で少しでも面白いシーズン後半戦、ポストシーズンとなることを期待したい。
また、今年は2年に1度のハーレムホンクボルウィークが開催される。今回ピックアップした選手は何人代表入りできるだろうか、楽しみにしたい。
石川歩投手独占インタビュー② オランダとキャリアのその先
前回記事よりつづく
ーーオフはどのように過ごされているんですか?
オフは、英語を勉強したり、買い物行ったりですね。あとは、ネプチューンズで理学療法士やられてる日本人で、村田さんっていう方がいらっしゃるんですけど、その方にこの前は診てもらったりしました。
買いもの行ったり、ストレッチしたり、インナーやったりとか、そういう感じです。
練習も午後7時とか8時からなので、それまでは自由時間です。

ーー練習は何曜日にあるんですか。
オープン戦の間は、火曜日と木曜日だったんですけど、開幕後は木曜日が試合なんで火曜日だけですね。
ーー現在は、木曜に1試合と土曜にダブルヘッダーで2試合で、週に3試合が行われてますが、昨年までは、木曜、土曜、日曜にそれぞれ1試合の週3試合の実施でした。このレギュレーション変更についてはいかがですか?
そうですね。その辺でも、選手層が厚いチームは有利だなと思います。
しかも時間制限があって、昨日は8回裏終了した時点で試合が終わったんですよ。(3対9でツインズが負けている試合で、8回表のツインズの攻撃で依然負けていた状態にも関わらず8回裏を実施した)じゃあ、8回裏はしなくていいじゃん、って思ったり。(笑) 時間制限のせいで、ナイトゲームの時は、9回までやったことがほぼないぐらいです。
※22時30分になった時点で実施しているイニングまでとし、新たなイニングには突入しないルール。石川投手が言及した試合は、スコアは8回表で終了したような記録となっている。なお、選手の個人記録はそのまま有効とされているようだ。
動く詩 pic.twitter.com/M3NJUFQ3lo
— Twinsbaseball.nl (@OosterhoutTwins) 2026年5月11日
ーーナイトゲームの時はそういうことが、ままあるんですよね。
はい。オープン戦も7回で終わったり8回で終わったり、時間で区切られるようで、よくわかんないです。いつ終わるか僕もわかんないし、周りの選手に聞いてもなんかわからんって言うので。

ーーざっとしてるわけじゃないですけどですけど、オランダらしいところはありますよね。
※オランダリーグホーフトクラッセの概要
全6チームと3試合のシリーズを2回、合計36試合がレギュラーシーズンとなる。その後、1位対4位、2位対3位が3勝で勝ち抜けのプレーオフを戦い、オランダシリーズで優勝チームを決める。オランダシリーズは全7試合の4勝で優勝。シーズン下位の3チームは下位チーム同士で3試合×2シリーズを実施。
ーー話は変わりますが、オランダの美味しい食べ物は食べられましたか。
この前ロッテルダムに行って、和食屋に行った時に久しぶりにうめえなって思いました。オランダの料理ってイメージが無くて、オランダ料理はまだそんなに食べられていないです。外で食べるとめちゃくちゃ高いので、家で食べることが多いです。

(photo:蘭野球事始)

(photo:蘭野球事始)
ーー球場には食べ物はあるんですか。
球場はポテトやサンドイッチとかはあります。ビール飲んでポテト食べてって感じです。試合終わってビール飲む文化に驚きました。
ーーちょっとしたバーのようなものがオーステルハウトにもあるんですか。
ありますあります。そこでみんなで飲んで、みたいな感じですね。大体どこの球場に行ってもありましたね。すごくいいなって思います。

(photo:蘭野球事始)

(photo:蘭野球事始)
ーーロッテルダム、アムステルダム、ハーレムもありありますよね。
ベルギーにもありましたね。
ーーちなみに、他のインタビューでハイネケンのビール工場に行きたいとおっしゃってましたが、行かれましたか。
行ってないんですよ。アムステルダムは遠くて。ロッテルダムは40分ぐらいで行けるんですけど、アムステルダムはそっからまた30分ぐらい行かないといけないじゃないですか。なんで、なかなか遠いんですよね。多分100キロぐらいあるんじゃないですかね。
ーーオランダは、面積としては九州ぐらいあるんで、結構広いですもんね。
日曜日、月曜日が休みなので、電車乗って行ってみようかなと思っています。
ーー私は約10年前に行ったんですけど、 面白かったですよ。生ビールが2杯ほど飲めて、ボートに乗って運河でアムステルダム中央駅まで帰りました。
楽しみにしておきます。
そういえば、英語はしゃべられるんですか?
ーーたいしてしゃべれないんですけど、一人旅で不自由しないぐらいの、日常会話ができる程度には勉強しました。
英会話の勉強、何をやったらいいんですか?
ーーいや、もう石川投手のように仕事でそちらにいらっしゃったら、その内身に付いていくんじゃないですか?
いや、全然わからないんですよ。しかも、選手同士がほぼオランダ語で喋っているので、その時は僕は全然わからないんですよね。僕にしゃべってくれる、優しい英語だけ聞き取れるんですけど。
何からやったらいいのかな。まず、単語を知らないんで、単語覚えた方がいいのかなと思っているんですけど。
ーーそうですね。確かに、ある程度の単語、語彙力は、最初に習得した方が楽だとは思いますね。
そうですよね。まずそれ何っていうのを、聞いて、訳してみたいな感じなんですが。こんな単語なんだ、こんな意味あるんだって感じで、大変です。
ーーでもなんかこう言い方というか、言い回しは何個かだけでも覚えたら、あとは単語を変えるだけでいけるみたいなところはあるので。
自分からこう質問する分には何とかいけるんですけど、質問されたか時に、わからない単語や言葉が結構あります。
ーーそうですよね。まだ会話は続いていきますからね。個別レッスンを受けてたりされるんですか。
一応オンラインでやってはいるんですけど、他には日常会話を録音して、後から文字起こしして勉強してます。だけど、途方もなくて、心が折れかけてます。(笑)
ーー最初はなかなか一歩進んでもまた一歩下がるみたいなところがありますよね。野球をプレーしながら、英語もマスターされようとしていて、本当に頭が下がる思いです。
いやでも、本当に何もできていないですよ。
僕も、何年かオランダにいたいなと思ってるんですけど、なかなか身体がきつい。だいぶオールドなんで。そこがちょっとしんどいなっていうのがあります。最初は2、3年いれたら嬉しいなって思ってたんです。でも、現状考えると、身体と相談だなって。もうちょっと若い時に来たかったなっていうのは正直ありますね。
ーー日本でも、満身創痍の中でプレーされてたと思うんですけど、ぜひオランダ野球のファンとしては長くオランダでプレーしていただきたいなと勝手に思っています。
ですね。でも、いいプレーを見せられないのかなとも思っています。若い子はみんな球速いので。なんとか頑張って、コントロールで抑えるしかないなっていう感じです。
ーーでも、本当に日本からオランダに来られた選手の中では、一番NPBで実績を残された選手です。新人王から、最優秀防御率まで、タイトルを獲られた選手がオランダに来るっていうのは、今までなかったことだと思うので。チームにとってもリーグにとっても非常に貴重な機会なんじゃないかなと思います。
でも、パフォーマンスの部分でちょっと僕的にはもの足りないなって思っています。そこがなんか申し訳ないなっていう気持ちがあります。なので、日本の人に知ってもらったりとか、なんかオランダ野球の価値を上げたりっていうのをできればいいかなと思ってはいるんですけど。
そういういい循環が生まれれば、日本からも選手が来たりできるし、もうちょいお金もらえるようになったりとか、変わっていけばいい。そうすることで、レベルも上がるはず。
他には、子どもたちを教えたりもしたいです。今バンデンハークのところで、週末に子どもを教えてるみたいなんで、ちょっと手伝いに行こうかなと思っています。
ーーなるほど、じゃあバンデンハークさんには会われたんですか?
この前、家まで行って、話をしたんですけど、同じ思いというか、オランダ野球もちょっとレベル上げたいよね、認知度も上げたいよねっていう思いを持ってました。じゃあ、なんかやりたいなっていう話はしたんですけど。

(photo:Henk Seppen)
ーーバンデンハークさんは、現役時代から面識があられたんですか?
いや、投げ合って、ボコボコにやられるってことしかなかったですけど。
ーーいやいや。でも、お二人とも全盛期の時期がちょうど被っていますよね。
そうですね、バンデンハークがいなかったらもうちょっと勝ってたかもしれないですね。(笑)
今回、福田秀平(現マリナーズ巡回コーチ、元千葉ロッテマリーンズ、福岡ソフトバンクホークス選手)にバンデンハークを紹介してもらって。
ーーヨーロッパの中でも強いリーグといえば、イタリアとかオランダだとは思うんですけど、バンデンハークさんの繋がりもあって、最初から移籍先はオランダということだったんですか?
そうですね。最初はドイツとかチェコとか、色々話もらえるかなとも思ったんですけど、バンデンハークも、オランダ、しかもツインズ前提って感じだったんで、実質一択でした。(笑)これも縁だなと思って、じゃあそこに行きますっていう感じです。
ーー英語も勉強されつつ、プレーされていると思うんですけど、今後のキャリアとしては、中長期的に見て、英語を使いながら、なおかつ野球に携わりながらっていうようなイメージなんですか?
まだまだ、わかんないですけど、僕ができるのは野球だと思うので、日本人でオランダにいる子どもや、クラブの若い世代の選手たちに教えたりとかはやっていきたいです。
ーーいやいや、まだオランダに来られて数ヶ月でしょうから、英語はこれからですよね。
シーズンはこれから、本格的に始まっていきますけど、数字的な目標とかチームとしての目標はありますか。
僕は数字的な目標は全然たててないというか、1年間健康で投げられればいいなという感じです。
チームとしては優勝と言いたかったんですけど、今もう4連敗してるので。(4月17日時点)
でも、まずはプレーオフまで行って、そこから勝ち上がりたいですね。
やっぱり、オランダは結構レベル高いですよね。全然レベルは低くないなって。逆にツインズは細かい野球をしていけば勝てるんじゃないかなとか思います。
ーー石川投手は、社会人で、大学でもプレーされてると思うんですけど、日本で言うと、大体どのぐらいのレベルだと感じられますか。一概に比較すること難しいとは思うんですが。
いやでも、ロッテルダムは多分NPBのファームに行っても勝てるんじゃないかなと思いますよ。ファームのいいピッチャーが来たら難しいとは思いますけど。まあでも、単純に比較はできないですよね。
ーー最後まで、石川投手の目に映る貴重な印象をお伺いできて、大変嬉しいです。
私も、今シーズンは石川投手の活躍を追いながら、定期的に発信していきますので、これからも活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。

(photo:蘭野球事始)
石川歩投手独占インタビュー① 現役続行の舞台はオランダ
元千葉ロッテマリーンズのエースで、侍ジャパンとしてWBCも戦った石川歩投手。今季からは、なんとオランダの野球リーグ・ホーフトクラッセでプレーする。NPBで12年間プレーし、最優秀防御率のタイトルも獲得した投手がなぜオランダで投げることを決断したのか。また、そんな投手の目に写るオランダの野球に迫る。

(photo:Gizzomedia)
ーーこんにちは、Xやブログなどでオランダ野球の発信をしている蘭野球事始と言います。本日はお忙しい中、インタビューをお受けいただきありがとうございます。
昨日の試合はお疲れさまでした。ハーレムの球場(ピム・ミュリールスタジアム)はいかがでしたか。
結構きれいで、びっくりしました。
ーーあの球場では、ハーレムホンクボルウィークと言って、2年に1度国際大会が開かれているんですが、ご存じですか。
ハーレム大会ですよね。自分も、大会の存在自体は知っていたんですけど、地名ってことを知らなくて。
ーーたしかに、地名とは思えない名前ですよね(笑)。
ホンクボルウィークは、ちょうど今年が開催年でして、例年は大学日本代表が参加するんですけど。
あ、なんか出ないんですよね。
ーーそうなんですよ。その代わり、ドミニカ共和国やキュラソーが参加する予定です。大会の雰囲気なんかも素敵ですので、石川投手もお時間合えば見に行かれると面白いんじゃないかと思います。
分かりました。
ーー私も10年以上前にオランダにいたのですが、アムステルダムなどにはよく観戦に行っていました。でも、その頃はツインズがまだ2部にいたときでしたので、オーステルハウトに行く機会はなったんですが。
そうなんですね。オーステルハウトは、大分田舎ですね(笑)。

ツインズの本拠地はオランダ南部、北ブラバント州に位置する人口5万人のオーステルハウト(photo:Gizzomedia)
ーーほぼ、ベルギーの近くですよね。
そうですね。1時間ぐらいで、ベルギーまで行けますね。
ーーなかなか、北の方に遠征に行くときは大変ですよね。
そうですね、昨日もハーレム(北ホラント州)まで行くのに、車で1時間30分のところが渋滞で2時間。帰りも1時間30分掛かりました。でもチェコの荻野さん(元千葉ロッテの荻野貴司選手)とかの話聞くと、比較的オランダは過酷ではないなと思いました。
ーー比較すると、そうですね。高速も無料ですよね。
無料です。
ーーご自身で運転されて、遠征なんかは行かれるんですか ?
監督と一緒に行きます。僕も運転はできるんですけど。試合の時は監督と一緒にって感じですね。
ーープリングトレーニングでは、ベルギーの方にも行かれてましたね。
アントアープに行きましたね。いや、街がすごい綺麗でした。すごいいいところでした。
ーーでは、本題に入るんすが、いろんなインタビューでも答えられてたんですけど、オランダリーグに移籍するきっかけというか、経緯みたいなものを簡単に教えていただいてもいいですか?
昨年、シーズン中からちょっと動いてはいたんですけど。元々、野球やめたタイミングで留学したくて、それで、ヨーロッパ、特にオランダは英語がすごい通じるっていうこともあって、ヨーロッパがいいなって思ったのが最初です。そこから相談したのがバンデンハーク(元福岡ソフトバンクホークス、オランダ代表のリック・バンデンハーク)で、そのままオランダになったっていう感じですね。

石川歩投手(photo:Gizzomedia)
ーーバンデンハークもオーステルハウト近郊の出身というところもあって、ツインズに繋いでいただいたというところだと思うんですけど、石川投手の前には、元ホークスの吉村選手や、阪神の上園投手などが在籍されていて、NPB経験者だと石川投手が4人目ということになります。そのあたり、チームの受け入れ体制なんかは慣れていると感じる点もありますか。
どうでしょう。いや、僕も違う国でプレーするのが初めてなので、どれが普通なのかっていうのがよく分からないのが正直なところですけど、でもよくしてもらっていますし、みんなすごいいい人たちだと思います。
ーー元々メジャー志望を公言されてた時期もあったと思うんですけど、まあ外国の方でプレーしたいという思いは前からあったんですか。
そうですね。メジャー志望っていうよりも、海外に行きたいなっていう思いはすごい強くてっていう感じですね。
ーーオランダ側から見ると石川投手は、結構縁がある投手なんです。
2017年WBCですか。
ーーそうです。それに、2016年秋の強化試合も投げられましたよね。
強化試合もそうですね、投げました。
ーー私、現地で観戦していました。
そうなんですね。大谷君が天井にぶち当てた時ですよね。
ーーそうです。WBCも強化試合も、両方とも競った試合で面白い試合でした。ちょうど、オランダも一番強い時期だったんですけど。そうした、代表で戦われた当時から、今回ツインズに合流されてから数試合ですけど経験された中で、オランダ野球に対する印象はありますか。
オランダ野球ですか。いい選手は何人かいるなっていうのは思いますし、野球のなんていうんですかね、その細かいところだったりっていうのは、やっぱり日本の方が上だと思いますけど。僕が思ってたより、いいなとは思いました。ヨーロッパって野球が全然普及してないようなイメージだったんですけど、意外に下部組織というか、セカンドチームとかもあったりして、やり方次第ではもっと人気のスポーツになるんじゃないかなと思ってます。
ーーそうですね。オランダはヨーロッパの中でも比較的文化として野球が根付いているところはあるのかなと思ってまして、言葉としても、野球を意味するホンクボルっていうオランダ語があるぐらいなんですけど、教会(KNBSB:王立オランダ野球ソフトボール協会)も100年ぐらい歴史があるんですよね。下部組織なんかも、サッカーの組織と似たような形で、たくさんユースチームがあったり、他のヨーロッパの国と比べると、そういう地域にも根差したクラブがたくさんあるんじゃないかなとは思います。
そうですね。でも、なんていうか、もうちょっとこう収益化と言いますか、そういうのはできないのかなと思ったりします。
ーーやっぱり、正直観客も少ないですし、日本のトップリーグから来られた石川投手から見られるとレベル的にもまだまだ低いところはあるんじゃないかなと思うんですけど。
それはまあ感じますけど、なんかもったいないなっていうのはちょっと思いますね。
ーー数名はレベル的にも、ポテンシャルがあるような選手っていうのは見受けられますか。
やっぱ、いい選手いますね。うちのチームにも何人かいいなっていう選手はいて、すごい若い選手で、いい選手いるんですけど。
ーー具体的にはどの選手ですか。
ナンド(・モスタート)。ベルギーの。あの子いいですね。

ナンド・モスタート内野手(photo:Gizzomedia)
ーーまだ20歳前後ですよね。
20歳ですね。僕と誕生日一緒で。20歳になったばっかり。24~25歳ぐらいかなと思ってたんですけど。
ーー昨年からオランダ、ツインズに来て、活躍している選手ですね。ベルギー代表にも入ってる選手です。
すごい良いと思います。
ーードイツのサイモン・グロスっていう投手なんかもいたりするんですけど。
サイモンは怪我しているんですけど、めちゃくちゃいいですよね。キャッチボールしたんですけど、フォームめちゃくちゃきれいだったんで。身長は小さいけど、体もでかいし。
ーードジャースのマイナーでプレーしてたミーシャ(・ハルクセン)っていう選手もいます。
ミーシャもめちゃめちゃいいと思います。投げるのうまいなと思って見ていますね。彼は何歳ですか。
ーー彼はもう30歳手前ぐらいにはなるんじゃないかなとは思いますね。※31歳
そうなんですか。昨日話した時に21歳とかって言っていたんで。(笑)まあ、ジョークだろうと分かってましたけど。こっちの人の年齢は、見た目ではわかりにくいですね。大人っぽく見える。
ーーそうですよね。
元々ネプチューンズにいたんですけど、一旦、彼も野球から離れて、復帰した後に、ツインズに来たんじゃないかなと思いますね。
ミーシャすごいいいですね。人もいいし。全体的に見ても、いい選手は多いと思います。

ミーシャ・ハルクセン(photo:Gizzomedia)
ーーちなみに、石川投手は1年契約になるんですか。
1年契約です。
ーーサラリーもある程度もらいながらですか?
もらってはいますけど、全然もらってないですよ。お小遣いみたいな感じですよ。まあ、でも僕は元々留学したかったんで、普通なら渡航費、生活費あと家賃とかもかかるんで、それがないっていうだけで、プラスに近いなって思ってます。
ーーなるほど。では、住まいとかも準備いただいているんですか。
そうです。監督と、アメリカ人のボブ・ピラー選手と3人で住んでます。
ーー助っ人のピラー選手ですね。助っ人外国人は石川投手とピラー選手だけですか?
誰が助っ人とか、正直分かってないんですけど、外国人枠ってあるんですか?
ーーいえ、ないです。
そうなんですね。なんか外国人枠があるような話も聞いてたので。チームにもベルギーやドイツの選手がたくさんいるし、どうなってんだろうと思ってました。
ーー昔はあったような気がするんですけど、ただ、ヨーロッパ圏内っていうのは元々制限がないです。
いやなんで、まあ日本人選手ももっと来て欲しいんですけど。やっぱり、なかなかお金の問題があるんで、ちょっと大変なのかなっていうのは思ってるんですけど。もっと日本人選手が来ると、レベルもそれなりに上がっていったりするんじゃないかなっていうのは感じてるんですけど。
ーーなるほど。
とはいえ、初登板お疲れ様でした。ロッテルダムで の開幕3戦目に5回から 4イニング登板されました。ほぼ完璧に抑えられたと思うんですけど。
いやあ、全然完璧じゃないです。もういっぱいいっぱいやってます。本当に。

初登板を果たす石川歩投手(photo:Gizzomedia)
ーー肩の状態はいかがですか。
まあ、それなりにきてますけど、頑張って 1週間で準備してっていう感じですね。
ーーリリーフでの起用というのは、石川投手の状態とか、チームの方針とか、どういう理由なんでしょうか。
いや、僕が先発だと思ってました。(笑)開幕 2試合目か 3試合目に、先発やるんだろうなと思ってたんですが、当日にリリーフで行くよって、言われた感じです。でも、個人的には中継ぎの方が嬉しいかな 。
ーー私もどの試合に先発されるんだろうなというふうにずっと見てたんですけど、予告先発に石川投手の名前がなかったので、不思議に思っていました。
このまま中継ぎでやっていくのかなと思うんですけど、よくわかんないです。まあ中継ぎって言っても第二先発みたいな感じですけど。
ーーただ、プレーオフに進んでいくと、石川投手が先発していただかないと、なかなか勝ち上がれないのかなと思います。
でも僕も、真っすぐがあんま良くない。あと、シンカーも全然良くないんで。ボールが変わって、ちょっと曲がらなくなったんで。
本当に騙し騙しって感じで 、1週間あってマッサーもほとんど受けないまま投げるので、修正するっていうよりは、その日になんとか合わせてっていう感じなんです。

(photo:Gizzomedia)
ーーボールやマウンドの違いとかっていうのはやっぱりありますか。
マウンドは、意外に大丈夫ですね。見た目はちょっとひどいですけど。(笑)
でも、ボールはちょっと違うんで、苦戦はしてますね。
ーーボールはSSKですかね。
そうです。
ーーどの球場も SSKですか。
基本そうですね。あと、ロジンがなくて。1回だけオープン戦の時にあったんですけど。そのあとはロジン見てないですね。自分は結構ロジンつけたい人なんで、本当に開けたばっかりの新球が来たりするんで、その時は結構手で揉んでっていう感じですね。
ーー私がオランダにいた時は、試合前に選手が新球を開けて、砂で手揉みしていたのは覚えてはいるんですけど。
全然そんなことないです。新球をそのまま出してる気がします。
ーー気候はどうですか。まだ春先のオランダは、寒さが残ってると思うんですけど。
昼は晴れたらあったかいですけど、夜はやっぱ寒いですね。
ーー初登板の時も、若干小雨降ってましたよね。
降ってましたね。
ーーやっぱり、富山出身だけやって、そのあたりの寒さは慣れていらっしゃいますか。
いや、寒さは苦手です。
最初、意外と寒くないかなと思ったんですけど、夜はやっぱり寒いですね。
ーーそうですね、夏でも夜は冷えます。
でもそれは嬉しいですね。夏に暑くないのは。
ーーはい。非常に過ごしやすいと思います。夜空も綺麗に見えるような気候だと思います。
審判の違いはありますか。審判の質もちょっと落ちるんじゃないかなって思うんですけど、ストライクゾーンの違いとかってありますか。
人によって違うんですけど。そうですね。本当わかんないですね。試合で横から見てても、おおっていう時もあるし。
ーー代表に入ってるキュラソー出身のスルバランっていう投手がいるんですけど、その選手がインスタグラムでオランダの珍プレーをまとめた動画を上げているんです。その中でも、審判のポンコツ具合をまとめた動画が多いです。(笑)それもあって、審判の質もまだまだだなって思うことも多いんですが。
でも、やっぱり大変だと思います。審判も選手も。
ーー普通に、仕事しながらやられてる方が多いですからね。
はい。だって、昨日も帰ってきたのは、12時半過ぎてたんで。僕はないですけど、今日も仕事してると思うんで、やっぱすごいなと思いますね。
ーースプリングトレーニングから、数試合プレーされてますけど、他のチームで、この選手はいいなと思われた選手とかいますか。
ロッテルダムに左バッターがいるんですけど。
ーー(ダリール・)コリンズですかね。

ダリール・コリンズ外野手(photo:Gizzomedia)
コリンズかな。アメリカに行ってた選手です。(元カンザスシティロイヤルズ傘下)
開幕戦でホームラン打ったんですけど、これは良かったですよ。
あとは、パイレーツのショートですね。WBCにも入ってたって聞きました。
ーー(デラーノ・)セラッサですね。

デラーノ・セラッサ内野手(photo:Henk Seppen)
なんか頭いいな、IQ高いなっていう動きしてました。
あとピッチャーは、ロッテルダムでの開幕2試合目に先発して、完封した投手。ツインズにいたって選手ですかね。
ーーツインズ出身の(クーン・)ポステルマンスですね。

クーン・ポステルマンス投手(photo:Gizzomedia)
リリーフの左ピッチャーも良いいですね。
ーーサイド気味の投手ですか?アルバ出身の(ライアン・)ハンチントンですね。
ロッテルダムの正捕手、強肩のキャッチャーもいいです。
ーー(セム・)カイパーですね、アメリカの大学にちょっと行ってた選手です。
うちにいるファスもいいですよ。
ーー1番バッターの(ファス・)スライターですね。以前はロッテルダムにいたんじゃないかなと思いますね。
セカンドチームにいたんですよね。ロッテルダムは、セカンドチームからほぼ上がんないって聞きました。
ーー上がらないですね。それこそスライターぐらいじゃないかな、彼も最後ちょっと上がって、そのままツインズに来たような感じでしたね。
77番のロッテルダムの選手いるじゃないですか。ファスと本当に兄弟かと思うぐらい似てて。(笑)しかも、前一緒にプレーしてたって言ってて。
ーーダン・セールバッハ選手ですね。確かに似てますね。(笑)それこそ、ロッテルダムのセカンドチームで一緒にしてたんじゃないかなと思います。

ファス・スライター内野手(photo:Gizzomedia)
――― 次へ続く
2026オランダホーフトクラッセ第1節②
開幕戦はそれぞれ、下馬評とおり上位候補チームが勝利した。さて、週末の試合は今シーズンからレギュレーションが変更となっている。
これまで、土日の2日間で2試合を消化していたのだが、今シーズンから土曜にダブルヘッダーを実施し、1日で2試合を実施する。12時から7イニング制で1試合行い、14時30分から9イニング制の2試合目を行う、といった具合だ。仮に1試合目の進行が早ければ9イニングまで行うこともある。
この形とらなり初めての週末。どのような試合が繰り広げたのか、見ていく。
ツインズ 0-1 ネプチューンズ(7回)
勝投手:ポステルマンス
負投手:アンジェラ
両先発の好投で投手戦となった。
ネプチューンズ先発のポステルマンスは、7回3安打2四死球6奪三振で完封。代表候補にもなる右腕が先発で結果を残した。ツインズ出身で、国内組で150キロを投げ込む右腕。中継ぎでも需要があるはずで、今シーズン結果を残し、プレミア12に向けてアピールしたい。
一方のアンジェラ。技巧派のベテランは今シーズンはツインズに移籍となった。初回に連打の後、連続四球で押し出しの1点を献上するも、その後は流石のピッチング。変化球を駆使し、強力打線を1点のみに抑えた。石川歩投手に加え、彼が加わったことは上位に食い込むために大きなピースとなりそう。
ツインズ 2-4 ネプチューンズ
勝投手:スルバラン
負投手:ハルクセン
セーブ:ハンチントン
3戦目も同じく拮抗したいいゲームとなったが、初回の入りは慌ただしかった。
ネプチューンズ先発は、加入した左腕ストゥアート。U18代表経験のある投手だ。3奪三振を奪うも、1失点を失う。元々1イニング限定の登板だったか、定かでないが、この後はベテランスルバランにスイッチする。次回はもっと長いイニングが見たい。
その裏、先頭に四球、バントでオールセーフ、安打で無死満塁とすると、犠牲フライ2つでネプチューンズが2点を先取する。
さらに、2回裏にはディアスの三塁へのタイムリー内野安打、コリンズのセンターへの二塁打で2点を追加。5点目を狙った1塁走者は中継プレーでホームアウトにし、なんとか4点で食い止めた。
ツインズは5回の守りからは元千葉ロッテの侍ジャパン右腕、石川歩投手を投入する。これが蘭リーグ加入後初登板となる。
内容は、4回4安打1奪三振無失点と打たせて取る圧巻の投球を披露。日本に比べ、まだまだ寒さが残り、小雨も降る中での投球であったが、さすが北国出身の選手、苦にしなかったようだ。
初登板は2番手でのロングリリーフとなった。ツインズとしてはローテーションを回す頭数は足りてはいるが、上位チームに勝つためには石川投手の力が必要不可欠。次回登板はどのような形となるか、今から楽しみだ。
危なげなく無傷の3連勝となったネプチューンズ。しかし、試合内容は互角。ツインズが今年どのような戦いを見せ、どこまで勝ち上がれるか期待したい。
アムステルダム 5-6× キンハイム(7回)
勝投手:ブロッカー
負投手:フェイフィンケル
本塁打:ウィレム(2ラン)

サヨナラ安打を放ったモハメッド(Photo:Martine van Wely)
アムステルダム先発はエースのハイヤー。移籍後初登板で6回1安打10奪三振と圧巻の投球も、その1安打がツーランとなる痛恨の失投となった。また4四球もいただけない。

ラース・ハイヤー投手(Photo:Martine van Wely)
打線は主軸のファンデサンデンが、初回に犠飛、3回にはタイムリーを放ち、試合を優位に進める。7回にもセラッサがタイムリーを打ち、5-2と、勝利まで1イニングを残すのみとなった。
しかし、リリーフ陣が誤算だった。カーレルが2つの四球などで満塁のピンチを作ると、急遽後を継いだフェイフィンケルもマルティーナ三塁手の送球エラーもあり流れを止められず、最後はモハメッドがサヨナラタイムリー。
土壇場でキンハイムがひっくり返し、開幕初勝利を掴んだ。
アムステルダム 12-9 キンハイム
勝投手:ブルヘルスデイク
負投手:フォス
本塁打:ファンデサンデン(3ラン)
ブラカセスク(3ラン)
ファンボルクロ(3ラン)
マックス・ドライヤー(ソロ)
乱打戦となったこの試合、アムステルダムはHCAWから復帰したベテラン、ブルヘルスデイク。HCAWも、昨季までパイレーツにいたフォス。お互い6回を6失点と、古巣相手に好投はできなかった。
打線は両チーム合わせスリーランが3本飛び出す乱打戦。それぞれの主軸に一発が出たのは今後に期待できる。

トミー・ファンデサンデン外野手(Photo:Martine van Wely)

ファンボルクロ捕手(Photo:Martine van Wely)
スリーランが2本出たパイレーツがリードしたまま最終回に突入すると、1アウト1.2塁のピンチで1試合目に続いてフェイフィンケルが登場。落ち着いて内野ゴロと三振に打ち取り、今シーズン初セーブ。
なんとかパイレーツがカード勝ち越しを果たすも、リリーフ陣に不安要素が見え隠れする。先発もできるフェイフィンケルだが、アメリカの大学からファンデルレリーが戻ってくるまでは、クローザーを務めざるを得ないだろう。
キンハイムも若手中心ながら主軸となれるファンボルクロ、マックス・ドライヤーらが加入したのは大きい。プレーオフに進めるよう、なんとか上位に食らいつくために大きな1勝となった。

現役復帰したマックス・ドライヤー内野手(Photo:Martine van Wely)
HCAW 3-2 UVV
勝投手:フランセン
負投手:ヒュチェゾン
本塁打:R,ピーターネラ(ソロ)
HCAWの先発はフェルクライセン。5回3安打6奪三振2失点と、十分ゲームを作る投球だった。初回に内野ゴロの間に1点、4回にピーターネラにソロを被弾した以外は失点なし。今シーズンにある程度期待が持てる。
UVVの先発は大ベテランのファンゼイル。こちらも4奪三振2失点でまとめ、まだまだローテで回れるところを見せられたのではないか。
両チームともリリーバーもよかった。HCAWはWBCドミニカ共和国戦で先発したフランセン。ファン・ソトらから3奪三振を奪い、今年からカナダの独立リーグでプレーするが、今回は調整で登板。コントロールにばらつきはあるものの、3回2奪三振無失点に抑えた。
一方のユトレヒトのリリーフはヒュッチェゾン。アメリカの大学でプレーした右腕だが、150キロを超える直球で4回3安打7奪三振1失点。先発でも見てみたい素材である。
勝利したHCAWの全打点を叩き出したのが4番サードのヘームスケルク。元U18代表で、今季よりパイオニアーズから移籍してきた。若いチームを引っ張る存在になれるか楽しみな選手だ。
HCAW 17-7 UVV(5回ゴールド)
勝投手:コルネリセン
負投手:ワグナー
セーブ:ディアビー
本塁打:ヘームスケルク(3ラン)、D,ピーターネラ(2ラン)
初回からHCAW打線が大爆発。1回だけで安打10本、4番ヘームスケルクにスリーランも飛び出し、一挙11得点の猛攻となった。その後も先発全員安打となる20安打17得点で、ユトレヒトを圧倒。メルカド、オーマン、スペッキングの3人は3安打以上。ヘームスケルクは5打点を挙げた。
主力選手が大量流出し、戦力が大幅に低下したHCAW。そんな中でも若手主体の打線がここまでつながりを見せたのは好材料と見ていいだろう。
一方のユトレヒト。デイレル・ピーターネラのツーラン、パティストのタイムリー二塁打などで反撃するも、時すでに遅し。今季初の5回コールドゲームとなった。
2026オランダホーフトクラッセ開幕
WBCは1次ラウンド敗退に終わり、キュラソーは次回大会での単独参加を目指すという噂が飛び交うなど、あまり前向きな話が聞かれないオランダ野球。
ともあれ、ついに国内リーグ野球ホーフトクラッセが4月9日に開幕した。
今シーズンからレギュレーションが変更となり、木土日の3試合制から、木プラス土曜のダブルヘッダーでの3試合制に変更となった。
また、昨季の8チームから、ペンギンズが抜けて7チームとなる。
その結果、全42試合から36試合に縮小。プレーオフも確定ではないが、試合数減とする検討内容が漏れてくる。
近年は縮小傾向にあるホーフトクラッセ。ヨーロッパトップレベルの質を維持し、代表にも選手を多数送り込むため、ここで踏ん張り、中長期的に発展を目指していきたい。
短期的な目標としてはすぐにでも、木土日制に戻したいものだ。
さて、開幕戦をそれぞれレビューする。
ネプチューンズ 9-2 ツインズ
勝投手:マーティス
負投手:スヴィツァー
本塁打:コリンズ(ツーラン)
昨季王者のネプチューンズは、Aクラス入りしたツインズと対戦。ネプチューンズは大ベテランのマーティスが先発。ツインズは昨季から先発に挑戦し、防御率3.04の好成績を残したスヴィツァー。

ネプチューンズ先発のマーティス投手(photo:Louie Jay Sienders)
ツインズが初回に猛攻。先頭スライターのライト前から、さらに3本の単打を合わせてなんと2点先制した。
しかし、王者ネプチューンズの打線はリーグ最強だ。リードオフマンに首位打者経験のあるルーベンが加入。指名打者には両打のクラッチヒッターボニファシアが復帰した。
2回に早速1点を返すと、4回には5番コリンズのツーランホームランで逆転。その後もケンプ、ファンデルミール弟のタイムラーなど追加点を挙げ9得点。ネプチューンズに勝つには、この打線をなんとか抑える必要がある。
特にコリンズはカンザスシティロイヤルズAでプレーするものの、右肘の怪我などによりリリースされ帰国。まだスローイングに難があるものの、コンタクト能力と長打を兼ね備えた打者でオランダを代表する選手になるポテンシャルを秘めている。

ファンデルミール三塁手(photo:Louie Jay Sienders)
スヴィツァーもこの打線相手に6回を投げ5失点。4四球が痛かったものの、ここまで投げられれば、下位チーム相手には安定してローテを守れるだろう。2番手に登板した元レッドソックス傘下ファンデルスハーフが3人で抑えたのも大きい。

ファンデルスハーフ投手(photo:Louie Jay Sienders)
ツインズに新加入した石川歩投手の初登板はいつになるだろう。今のところ予告先発は2戦目がアンジェラ、3戦目がハルクセンとなっている。この打線と対峙する石川歩投手が早く見たいものだが。
キンハイム 3-10 アムステルダム 8回コールド
勝投手:フェイフィンケル
負投手:ブロッカー
本塁打:モハメッド(ソロ)
アムステルダムの先発はソーンデルウォード、キンハイムは左腕リズヴィク。
両先発がテンポ良く3人で切り試合がスタートするも、キンハイムが4番モハメッドのソロで先制する。
アムステルダムは、3回に連打の後ファンデサンデンが犠牲フライで同点に追いつく。続く4回、キンハイムは連打の後フィネーガンの2点タイムリーセンター前で勝ち越しに成功。若手主体のチームにファンボルクロ、マックス・ドライヤーが加わりしぶとい打線になりそうだ。
しかし、こちらも多数の主力級選手が加わったアムステルダム。その裏にマルティーナ、ドライヤーの連続二塁打もあり、あっけなく3-3の同点に追いつく。
するとアムステルダムは5回から代表経験もあるサイド右腕フェイフィンケルを投入。3回を1安打2奪三振無失点で抑え、彼のテンポ良い投球が流れを引き寄せる。
6回にはドライヤー、マデーラが連続タイムリー。7回にはファンデサンデンがタイムリー二塁打。結局10得点と打ち勝った。
アムステルダムは昨季の準優勝チームHCAWから主力選手がごっそり加入。メインスポンサーが撤退後、なかなか優勝争いに絡めてなかったが、思わぬ加入で一気に優勝候補に躍り出た。
上位打線のトロンプ、ファンデサンデン、セラッサ、マルティーナ、ドライヤーの並びは脅威。
一方のキンハイム。今年も若手主体なのは変わらないが、他チームから実力者が加入。パイオニアーズからファンホルクム、HCAWからファンボルクロ、守備職人マックス・ドライヤーも現役復帰。さらには、18歳でスタメンに名を連ねるトゥーメンにも期待だ。
UVV 3-13 HCAW 8回コールド
先発は、UVVが二刀流のイセニア、HCAWは代表経験もあるティメルマンス。
先制はなんとユトレヒト。先頭がヒット出ると手堅くバントで進塁させ1アウト2塁をつくると、2アウトから4番キャッチャーのパティストが左中間にタイムリーツーベース。18歳の若手キャッチャーで、オープン戦では満塁弾も放ったホープ。アメリカの大学やMLB傘下への道が拓けるか、将来が楽しみな選手だ。
2回にはHCAWが反撃。ふたつの四球で相手からチャンスをもらうと、内野ゴロの間に1点を返す。
するとユトレヒトがすかさず反撃。9番からの3連打などで2点を勝ち越す。
ここまで、打線が奮闘するユトレヒトだったが、課題の投手陣が徐々に崩壊して行く。4回に1失点すると、5回には連続ワイルドピッチで2失点し3-4と逆転を許すと、6回に登板したウルバナスが1アウトも奪えず5失点、その後の投手陣も打ち込まれ結果として3-13と、大敗の結果となった。
打線爆発したHCAWは3番キャッチャーのメース・ロベルセが大爆発。あとホームランでサイクル達成という、サイクル未遂で、3番として打線を牽引した。
U18代表経験もある20歳の捕手で、兄はカージナルスのプロスペクトであるセム。キャプテンシーも兼ね備えており、こちらも今後が楽しみな攻撃型捕手である。
試合の内容もさることながら、両チームの若き司令塔の今後に期待が持てる開幕戦となった。
今週末の土曜日には初めてのダブルヘッダーによる2試合が開催される。各チームの勢力図も代わった今シーズン。ハーレムホンクボルウィークが控え、来年のプレミア12、さらにはロス五輪に向けて代表入りを目指す選手には足掛かりとなるシーズンが始まった。
王国の魂が強豪を打ち破る〜オランダWBC2026の旅〜
野球オランダ代表は、ほんの10年前、あとわずかで世界に手が届きそうだった。2017年WBC、準決勝で強豪プエルトリコと延長まで激闘を演じ、決勝は目の前だった。
思い返せば2011年に現プレミア12の前身となる、野球ワールドカップで初優勝を遂げ、オランダ国内はプチ野球フィーバーとなった。メジャーリーグの選手が出場できない大会とはいえ、デスパイネやユリエスキー・グリエル擁するキューバを決勝で破ったのは、紛いもなく実力を証明したものだったし、野球に詳しく無いオランダ国民は「世界一」というものに熱狂し、全員に「サー」の称号を贈った。
それから、メジャー組も参加する真の世界選手権たるWBCで躍進するまで、そんなに時間は掛からなかった。2011年ワールドカップ時にはマイナーでもがいていたグレゴリウスや、ボガーツ、J,スホープは、メジャーでトッププレーヤーとなり代表に戻ってきたし、バレンティンやバンデンハークは日本NPBで敵なしだった。
この時期の布陣はオランダのような“野球後進国"にとっては完璧で、ワクワクした。中心メンバーはカリブ海に浮かぶキュラソー、アルバのメジャーリーガーが並び、その脇を経験豊富なオランダ本土の選手が固めた。年齢層もバランス良く、NPB、国内組のベテランに頼りながら、MLB組は若く、のびのびとプレーする姿は勢いと安定を感じた。
パッと見ただけでは、オランダ本土、キュラソー、アルバら異なる文化を持つ選手たちの寄せ集めのように見えるが、その根底には共通の言語であるオランダ語やパピアメント語がある。共通の言語を話すことはチームを形成する上で、誰も取り残すことはない。
2006年WBC、当時10代のシャーラン・マーティスが7回参考記録ながらノーヒットノーランを記録したが、女房役だったのが当時主将だったシドニー・デヨングだ。マーティスはまだオランダ語がそれほど堪能ではなかったが、本土出身のデヨングは英語を使って丁寧にコミュニケーションを取り、事前にマーティスの投球を受け、よく研究した上で臨んだことで、一度も首を振ることなく、阿吽の"投球"がこの結果に繋がったのだ。
このシドニー・デヨングの精神は現在も失われていない。現正捕手のアルバ出身トロンプは、投手のバックグラウンドに合わせて会話する際の言語を変え、相手チームに悟られないよう、あえてオランダ語を使うなど、“オランダ王国"としての戦い方は受け継がれている。
キャプテンシーでこうしたオランダ代表の伝統を作り上げたシドニー・デヨングだか、くしくも大会前の今年1月、46歳の若さでこの世を去った。生きていればこの大会でコーチを務めるはずだった。
オランダ代表はユニフォームの左袖にある彼の背番号「24」のワッペンと共に大会を戦う。また、24のユニフォームは、彼の魂と共にチームのダグアウトで戦いを見守ってくれるはずだ。

(故シドニー・デヨングのユニフォーム photo:Louie Jay Sienders)
大会前にはジュリクソン・プロファーが2度目の禁止薬物使用で出場停止処分となり、チームの船出は決して順調とは言えない。
しかし、ドミニカ共和国を2度撃破し初の2次ラウンドに進んだ2009年大会だって、アンドリュー・ジョーンズが辞退し、メジャーリーガーは2人だけ。前評判なんて評されることさえ無かった程だ。そんな逆境を跳ね除け、チームの躍進が見られるのがWBCだ。負けたら終わる甲子園のような人間ドラマが大好きな日本人なら分かってくれるはずだ。

(談笑する蘭ナイン photo:Louie Jay Sienders)
2017年にチームを引っ張った若きメジャーリーガーたちは、皆30半ばに差し掛かった。彼らの世代で世界と戦える最後の機会だ。アルビース、ラファエラら、新たな世代のメジャーリーガーも少ないながらに出てきた。投手陣のプロスペクトである両投げセインチェ投手、本土出身エース候補ロベルセ投手のメンバー入りは叶わなかったが、「アルバの星」アントワネ・ケリーがエースの自覚で腹を括っている。ドミニカ共和国やベネズエラとの戦力差は歴然。ただ、その差を埋められる情熱やチームワークがオランダ代表にはある。
短期決戦でしか見られない戦い方を、また見せてくれるはずだ。