元千葉ロッテマリーンズのエースで、侍ジャパンとしてWBCも戦った石川歩投手。今季からは、なんとオランダの野球リーグ・ホーフトクラッセでプレーする。NPBで12年間プレーし、最優秀防御率のタイトルも獲得した投手がなぜオランダで投げることを決断したのか。また、そんな投手の目に写るオランダの野球に迫る。

(photo:Gizzomedia)
ーーこんにちは、Xやブログなどでオランダ野球の発信をしている蘭野球事始と言います。本日はお忙しい中、インタビューをお受けいただきありがとうございます。
昨日の試合はお疲れさまでした。ハーレムの球場(ピム・ミュリールスタジアム)はいかがでしたか。
結構きれいで、びっくりしました。
ーーあの球場では、ハーレムホンクボルウィークと言って、2年に1度国際大会が開かれているんですが、ご存じですか。
ハーレム大会ですよね。自分も、大会の存在自体は知っていたんですけど、地名ってことを知らなくて。
ーーたしかに、地名とは思えない名前ですよね(笑)。
ホンクボルウィークは、ちょうど今年が開催年でして、例年は大学日本代表が参加するんですけど。
あ、なんか出ないんですよね。
ーーそうなんですよ。その代わり、ドミニカ共和国やキュラソーが参加する予定です。大会の雰囲気なんかも素敵ですので、石川投手もお時間合えば見に行かれると面白いんじゃないかと思います。
分かりました。
ーー私も10年以上前にオランダにいたのですが、アムステルダムなどにはよく観戦に行っていました。でも、その頃はツインズがまだ2部にいたときでしたので、オーステルハウトに行く機会はなったんですが。
そうなんですね。オーステルハウトは、大分田舎ですね(笑)。

ツインズの本拠地はオランダ南部、北ブラバント州に位置する人口5万人のオーステルハウト(photo:Gizzomedia)
ーーほぼ、ベルギーの近くですよね。
そうですね。1時間ぐらいで、ベルギーまで行けますね。
ーーなかなか、北の方に遠征に行くときは大変ですよね。
そうですね、昨日もハーレム(北ホラント州)まで行くのに、車で1時間30分のところが渋滞で2時間。帰りも1時間30分掛かりました。でもチェコの荻野さん(元千葉ロッテの荻野貴司選手)とかの話聞くと、比較的オランダは過酷ではないなと思いました。
ーー比較すると、そうですね。高速も無料ですよね。
無料です。
ーーご自身で運転されて、遠征なんかは行かれるんですか ?
監督と一緒に行きます。僕も運転はできるんですけど。試合の時は監督と一緒にって感じですね。
ーープリングトレーニングでは、ベルギーの方にも行かれてましたね。
アントアープに行きましたね。いや、街がすごい綺麗でした。すごいいいところでした。
ーーでは、本題に入るんすが、いろんなインタビューでも答えられてたんですけど、オランダリーグに移籍するきっかけというか、経緯みたいなものを簡単に教えていただいてもいいですか?
昨年、シーズン中からちょっと動いてはいたんですけど。元々、野球やめたタイミングで留学したくて、それで、ヨーロッパ、特にオランダは英語がすごい通じるっていうこともあって、ヨーロッパがいいなって思ったのが最初です。そこから相談したのがバンデンハーク(元福岡ソフトバンクホークス、オランダ代表のリック・バンデンハーク)で、そのままオランダになったっていう感じですね。

石川歩投手(photo:Gizzomedia)
ーーバンデンハークもオーステルハウト近郊の出身というところもあって、ツインズに繋いでいただいたというところだと思うんですけど、石川投手の前には、元ホークスの吉村選手や、阪神の上園投手などが在籍されていて、NPB経験者だと石川投手が4人目ということになります。そのあたり、チームの受け入れ体制なんかは慣れていると感じる点もありますか。
どうでしょう。いや、僕も違う国でプレーするのが初めてなので、どれが普通なのかっていうのがよく分からないのが正直なところですけど、でもよくしてもらっていますし、みんなすごいいい人たちだと思います。
ーー元々メジャー志望を公言されてた時期もあったと思うんですけど、まあ外国の方でプレーしたいという思いは前からあったんですか。
そうですね。メジャー志望っていうよりも、海外に行きたいなっていう思いはすごい強くてっていう感じですね。
ーーオランダ側から見ると石川投手は、結構縁がある投手なんです。
2017年WBCですか。
ーーそうです。それに、2016年秋の強化試合も投げられましたよね。
強化試合もそうですね、投げました。
ーー私、現地で観戦していました。
そうなんですね。大谷君が天井にぶち当てた時ですよね。
ーーそうです。WBCも強化試合も、両方とも競った試合で面白い試合でした。ちょうど、オランダも一番強い時期だったんですけど。そうした、代表で戦われた当時から、今回ツインズに合流されてから数試合ですけど経験された中で、オランダ野球に対する印象はありますか。
オランダ野球ですか。いい選手は何人かいるなっていうのは思いますし、野球のなんていうんですかね、その細かいところだったりっていうのは、やっぱり日本の方が上だと思いますけど。僕が思ってたより、いいなとは思いました。ヨーロッパって野球が全然普及してないようなイメージだったんですけど、意外に下部組織というか、セカンドチームとかもあったりして、やり方次第ではもっと人気のスポーツになるんじゃないかなと思ってます。
ーーそうですね。オランダはヨーロッパの中でも比較的文化として野球が根付いているところはあるのかなと思ってまして、言葉としても、野球を意味するホンクボルっていうオランダ語があるぐらいなんですけど、教会(KNBSB:王立オランダ野球ソフトボール協会)も100年ぐらい歴史があるんですよね。下部組織なんかも、サッカーの組織と似たような形で、たくさんユースチームがあったり、他のヨーロッパの国と比べると、そういう地域にも根差したクラブがたくさんあるんじゃないかなとは思います。
そうですね。でも、なんていうか、もうちょっとこう収益化と言いますか、そういうのはできないのかなと思ったりします。
ーーやっぱり、正直観客も少ないですし、日本のトップリーグから来られた石川投手から見られるとレベル的にもまだまだ低いところはあるんじゃないかなと思うんですけど。
それはまあ感じますけど、なんかもったいないなっていうのはちょっと思いますね。
ーー数名はレベル的にも、ポテンシャルがあるような選手っていうのは見受けられますか。
やっぱ、いい選手いますね。うちのチームにも何人かいいなっていう選手はいて、すごい若い選手で、いい選手いるんですけど。
ーー具体的にはどの選手ですか。
ナンド(・モスタート)。ベルギーの。あの子いいですね。

ナンド・モスタート内野手(photo:Gizzomedia)
ーーまだ20歳前後ですよね。
20歳ですね。僕と誕生日一緒で。20歳になったばっかり。24~25歳ぐらいかなと思ってたんですけど。
ーー昨年からオランダ、ツインズに来て、活躍している選手ですね。ベルギー代表にも入ってる選手です。
すごい良いと思います。
ーードイツのサイモン・グロスっていう投手なんかもいたりするんですけど。
サイモンは怪我しているんですけど、めちゃくちゃいいですよね。キャッチボールしたんですけど、フォームめちゃくちゃきれいだったんで。身長は小さいけど、体もでかいし。
ーードジャースのマイナーでプレーしてたミーシャ(・ハルクセン)っていう選手もいます。
ミーシャもめちゃめちゃいいと思います。投げるのうまいなと思って見ていますね。彼は何歳ですか。
ーー彼はもう30歳手前ぐらいにはなるんじゃないかなとは思いますね。※31歳
そうなんですか。昨日話した時に21歳とかって言っていたんで。(笑)まあ、ジョークだろうと分かってましたけど。こっちの人の年齢は、見た目ではわかりにくいですね。大人っぽく見える。
ーーそうですよね。
元々ネプチューンズにいたんですけど、一旦、彼も野球から離れて、復帰した後に、ツインズに来たんじゃないかなと思いますね。
ミーシャすごいいいですね。人もいいし。全体的に見ても、いい選手は多いと思います。

ミーシャ・ハルクセン(photo:Gizzomedia)
ーーちなみに、石川投手は1年契約になるんですか。
1年契約です。
ーーサラリーもある程度もらいながらですか?
もらってはいますけど、全然もらってないですよ。お小遣いみたいな感じですよ。まあ、でも僕は元々留学したかったんで、普通なら渡航費、生活費あと家賃とかもかかるんで、それがないっていうだけで、プラスに近いなって思ってます。
ーーなるほど。では、住まいとかも準備いただいているんですか。
そうです。監督と、アメリカ人のボブ・ピラー選手と3人で住んでます。
ーー助っ人のピラー選手ですね。助っ人外国人は石川投手とピラー選手だけですか?
誰が助っ人とか、正直分かってないんですけど、外国人枠ってあるんですか?
ーーいえ、ないです。
そうなんですね。なんか外国人枠があるような話も聞いてたので。チームにもベルギーやドイツの選手がたくさんいるし、どうなってんだろうと思ってました。
ーー昔はあったような気がするんですけど、ただ、ヨーロッパ圏内っていうのは元々制限がないです。
いやなんで、まあ日本人選手ももっと来て欲しいんですけど。やっぱり、なかなかお金の問題があるんで、ちょっと大変なのかなっていうのは思ってるんですけど。もっと日本人選手が来ると、レベルもそれなりに上がっていったりするんじゃないかなっていうのは感じてるんですけど。
ーーなるほど。
とはいえ、初登板お疲れ様でした。ロッテルダムで の開幕3戦目に5回から 4イニング登板されました。ほぼ完璧に抑えられたと思うんですけど。
いやあ、全然完璧じゃないです。もういっぱいいっぱいやってます。本当に。

初登板を果たす石川歩投手(photo:Gizzomedia)
ーー肩の状態はいかがですか。
まあ、それなりにきてますけど、頑張って 1週間で準備してっていう感じですね。
ーーリリーフでの起用というのは、石川投手の状態とか、チームの方針とか、どういう理由なんでしょうか。
いや、僕が先発だと思ってました。(笑)開幕 2試合目か 3試合目に、先発やるんだろうなと思ってたんですが、当日にリリーフで行くよって、言われた感じです。でも、個人的には中継ぎの方が嬉しいかな 。
ーー私もどの試合に先発されるんだろうなというふうにずっと見てたんですけど、予告先発に石川投手の名前がなかったので、不思議に思っていました。
このまま中継ぎでやっていくのかなと思うんですけど、よくわかんないです。まあ中継ぎって言っても第二先発みたいな感じですけど。
ーーただ、プレーオフに進んでいくと、石川投手が先発していただかないと、なかなか勝ち上がれないのかなと思います。
でも僕も、真っすぐがあんま良くない。あと、シンカーも全然良くないんで。ボールが変わって、ちょっと曲がらなくなったんで。
本当に騙し騙しって感じで 、1週間あってマッサーもほとんど受けないまま投げるので、修正するっていうよりは、その日になんとか合わせてっていう感じなんです。

(photo:Gizzomedia)
ーーボールやマウンドの違いとかっていうのはやっぱりありますか。
マウンドは、意外に大丈夫ですね。見た目はちょっとひどいですけど。(笑)
でも、ボールはちょっと違うんで、苦戦はしてますね。
ーーボールはSSKですかね。
そうです。
ーーどの球場も SSKですか。
基本そうですね。あと、ロジンがなくて。1回だけオープン戦の時にあったんですけど。そのあとはロジン見てないですね。自分は結構ロジンつけたい人なんで、本当に開けたばっかりの新球が来たりするんで、その時は結構手で揉んでっていう感じですね。
ーー私がオランダにいた時は、試合前に選手が新球を開けて、砂で手揉みしていたのは覚えてはいるんですけど。
全然そんなことないです。新球をそのまま出してる気がします。
ーー気候はどうですか。まだ春先のオランダは、寒さが残ってると思うんですけど。
昼は晴れたらあったかいですけど、夜はやっぱ寒いですね。
ーー初登板の時も、若干小雨降ってましたよね。
降ってましたね。
ーーやっぱり、富山出身だけやって、そのあたりの寒さは慣れていらっしゃいますか。
いや、寒さは苦手です。
最初、意外と寒くないかなと思ったんですけど、夜はやっぱり寒いですね。
ーーそうですね、夏でも夜は冷えます。
でもそれは嬉しいですね。夏に暑くないのは。
ーーはい。非常に過ごしやすいと思います。夜空も綺麗に見えるような気候だと思います。
審判の違いはありますか。審判の質もちょっと落ちるんじゃないかなって思うんですけど、ストライクゾーンの違いとかってありますか。
人によって違うんですけど。そうですね。本当わかんないですね。試合で横から見てても、おおっていう時もあるし。
ーー代表に入ってるキュラソー出身のスルバランっていう投手がいるんですけど、その選手がインスタグラムでオランダの珍プレーをまとめた動画を上げているんです。その中でも、審判のポンコツ具合をまとめた動画が多いです。(笑)それもあって、審判の質もまだまだだなって思うことも多いんですが。
でも、やっぱり大変だと思います。審判も選手も。
ーー普通に、仕事しながらやられてる方が多いですからね。
はい。だって、昨日も帰ってきたのは、12時半過ぎてたんで。僕はないですけど、今日も仕事してると思うんで、やっぱすごいなと思いますね。
ーースプリングトレーニングから、数試合プレーされてますけど、他のチームで、この選手はいいなと思われた選手とかいますか。
ロッテルダムに左バッターがいるんですけど。
ーー(ダリール・)コリンズですかね。

ダリール・コリンズ外野手(photo:Gizzomedia)
コリンズかな。アメリカに行ってた選手です。(元カンザスシティロイヤルズ傘下)
開幕戦でホームラン打ったんですけど、これは良かったですよ。
あとは、パイレーツのショートですね。WBCにも入ってたって聞きました。
ーー(デラーノ・)セラッサですね。

デラーノ・セラッサ内野手(photo:Henk Seppen)
なんか頭いいな、IQ高いなっていう動きしてました。
あとピッチャーは、ロッテルダムでの開幕2試合目に先発して、完封した投手。ツインズにいたって選手ですかね。
ーーツインズ出身の(クーン・)ポステルマンスですね。

クーン・ポステルマンス投手(photo:Gizzomedia)
リリーフの左ピッチャーも良いいですね。
ーーサイド気味の投手ですか?アルバ出身の(ライアン・)ハンチントンですね。
ロッテルダムの正捕手、強肩のキャッチャーもいいです。
ーー(セム・)カイパーですね、アメリカの大学にちょっと行ってた選手です。
うちにいるファスもいいですよ。
ーー1番バッターの(ファス・)スライターですね。以前はロッテルダムにいたんじゃないかなと思いますね。
セカンドチームにいたんですよね。ロッテルダムは、セカンドチームからほぼ上がんないって聞きました。
ーー上がらないですね。それこそスライターぐらいじゃないかな、彼も最後ちょっと上がって、そのままツインズに来たような感じでしたね。
77番のロッテルダムの選手いるじゃないですか。ファスと本当に兄弟かと思うぐらい似てて。(笑)しかも、前一緒にプレーしてたって言ってて。
ーーダン・セールバッハ選手ですね。確かに似てますね。(笑)それこそ、ロッテルダムのセカンドチームで一緒にしてたんじゃないかなと思います。

ファス・スライター内野手(photo:Gizzomedia)
――― 次へ続く