蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

2013ホーフトクラッセ総集編

 今年、オランダ王立野球・ソフトボール協会(KNBSB)は101年目を迎えました。新たな100年に向けた、第一歩目の大事な年です。そんな春に開催されたWBCで初のベスト4を手にしました。出来すぎにも程があるほどの第一歩を踏み出したわけですが、先日、今年のオランダ野球トップリーグのホーフトクラッセも全日程を終了しました。もちろん、WBCで活躍したメンバーも出ています。今年は非常に優勝争いが混戦しました。その中で、最終的に抜け出たのが、DOORネプチューンズ。後半は他チームに連勝し、シーズン、プレーオフともに一位通過。オランダシリーズでも全勝で優勝を決めました。(全8チーム、レギュラーシーズン上位4チームでプレーオフ、下位4チームでプレーダウン。プレーオフ上位2チームでオランダシリーズ。プレーダウン最下位と二部リーグの優勝チームで入れ替え戦、というシステムです。)     

リーグ全体を通してみると、例年通り今年も上位と下位のチームに大きな差がありました。大きく分けると上位4チームと、下位3チーム。そして、下下位の1チームです(笑)しかし、下位チームの中にも有望な若手がかなりいます。彼らの来年以降の飛躍に、かなりの試合数をこなした経験が生きてくるでしょう。世界の舞台で戦う選手とも対戦しました。そうした、修行の場として下位チームが存在するのはいいことなのかもしれません。

 

まず、順位表を載せておきます。

 

Stand Baseball league

# Team GW W G V MIN P RV RT

1 DOOR Neptunus 42 34 0 8 0 68 301 138

2 Corendon Kinheim 42 31 0 11 2 60 295 132

3 Vaessen Pioneers 42 29 1 12 0 59 289 133

4 L & D Amsterdam P. 42 28 1 13 0 57 268 128

5 UVV 42 17 0 25 0 34 178 205

6 Mr.Cocker HCAW 42 14 1 27 0 29 148 211

7 Mampaey The Hawks 42 11 1 30 0 23 150 320

8 AdoLakers 42 2 0 40 0 4 84 446

 

Stand Baseball league Playoffs

# Team GW W G V MIN R RV RT

1 DOOR Neptunus 9 6 0 3 0 12 45 35

2 Vaessen Pioneers 9 4 0 5 0 8 23 36

3 L & D Amsterdam P. 9 4 0 5 0 8 44 25

4 Corendon Kinheim 9 4 0 5 0 8 31 47

 

Stand Baseball league Play Downs

# Team GW W G V MIN P RV RT

1 UVV 9 7 0 2 0 14 49 30

2 Mampaey The Hawks 9 6 0 3 0 12 44 32

3 Mr.Cocker HCAW 8 2 0 6 0 4 45 31

4 AdoLakers 8 2 0 6 8 -4 19 64

(from http://www.knbsb.nl/nw/index.php?option=com_content&view=category&layout=blog&id=382&Itemid=150&lang=nl&LevelID=110&CompID=2030&Full=1)

 

では、それぞれのチーム別に見ていきたいと思います。

 

1位 DOOR Neptunus/ドアーネプチューンズ 本拠地ロッテルダム

 昨年、プレーオフを一位通過するも、オランダシリーズで4連敗。なんとも後味の悪い戦いをしたネプチューンズ。昨季オフに大幅にメンバーを変えてきました。新しく加入したのは10人を超えます。昨季の移籍期限以降に加入した選手も多く正確に把握できないほどです。おそらく多くがキュラソーから、ルーキーチームからの選手だと思われます。その中で主力となったのが捕手のファンヘイドールン、捕手・外野手のブークハウト、内野手のロペス、投手のインテマ。特に大きかったのはブークハウトです。アルバ出身で、昨年まではアメリカのMLB傘下でプレーしていました。打率.288本塁打5打点21の成績を残しました。本塁打はリーグ2位の成績です(リーグ1位はエンゲルハルトの6本、今年は少なめ)。捕手を固定できずに悩んでいたネプチューンズにとっては彼とファンヘイドールンの加入は非常に大きいものでした。また、今年から監督に就任したフーン監督は調子のいい野手をうまく使い分けることができたと思います。一番調子の良かったレヒト(元オランダ代表)を3番、ケンプ(オランダ代表)を4番に固定して下位打線は日替わりでした。打撃個人成績で突出した選手が少ない中、チームの得点はリーグ1位。勝負強さも目立ちました。

今年のチームの最大の武器は豊富な先発陣。先発ローテはマークウェル、インテマ、ローデンブルフの3人で、一度もこの3人のローテが崩れることはありませんでした。特に3番手のローデンブルフが9勝2敗と七つも貯金を作れたことで非常に楽になりました。彼の特徴は、独特で球の出どころが見にくいフォームと、シンカーです。打たせて取り、のらりくらりと勝ちを引き寄せる投球が持ち味。グラブはゼットのもので、日本語で「一生懸命」という刺繍が施されています(なぜかはわからないけど…)。とにかく、一年間を通してこのローテがうまく機能したことが優勝の要因です。

ひとつ心配なのは昨季の主軸で打点王を獲得したリエン・フェルノーイが全く試合に出てないことです。今年は4番として期待していたのですが。心配です。

来年は、ヨーロピアカップに出ますので、ぜひ欧州制覇を期待しましょう。鍵は中継ぎ陣かな。

 

2位 Corendon Kinheim/コレンドンキンハイム 本拠地ハーレム

昨年、シーズン3位から見事に下克上。オランダシリーズ4連勝で優勝を手にしたキンハイム。プレーオフ途中から監督代行を務めたレーミンクが今年も監督を務めました。投手力を中心に豊富な戦力を生かした戦いで今年も見事シーズン2位を手に入れました。

 エースのベルフマンはもちろん今年飛躍したのはフェルトカンプ。序盤は4点代だった防御率も最終的には1.76、勝ち星も9でなんと負けは無し。彼が投げれば負けないという雰囲気がありました。勝負どころでもきちんとボールを低めに集めていたのが印象的でした。また、中継ぎ陣も充実。セットアッパーのヴァルスマが25試合に登板し、フル回転の働きを見せました。落ちる球が効果的でしたね。もちろん、9回を締めるのはアシェス(オランダ代表)。左腕のフーリンクもいましたし、ブルペン陣で困ることはなかった。

 一方の打撃陣では、俊足好打のレムコ・ドライヤーが飛躍。打率.362はリーグ3位です。彼のようなバントがうまくて、足でかき回せる選手は代表に選ばれると非常に面白そうです。彼を含めてレギュラーの中には打率3割代が4人、大ベテランのクロースターも,299、エンゲルハルト.296と打線にかなり厚みがありました。こうして見ると、優勝できなかったのが不思議なくらい選手層はありましたね。

 課題を上げるとするならば、内野陣の守備と、先発3番手です。内野の特にショートのクレーマーが安定感に欠けます。守備率は.929。キャプテンとして、また1、2番としてチームをひっぱているだけに、守備でも安定感を求めたいところ。また、先発3番手は当初ファンフローニンヘンでした。昨季までの中継ぎから配置転換して、なかなかの好成績を残していましたが、シーズン途中にボイドが加入し、出番がなくなってしまいました。そのボイドは防御率.5194勝3敗と不安定。もう少し先発陣のやりくりができたのでは。

 

3位 Vaessen Pioniers/ファエッセンパイオニアーズ 本拠地ホーフトドルプ

 プレーオフ終戦でパイレーツにサヨナラ勝ちし、オランダシリーズへ進も、4連敗で敗退。シーズン通して防御率が0点だった守護神のコルネリセンがことごとく打たれたのが誤算でした。

今季、二人の大物が新たに加入しました。ともにオランダ代表のデニー・ロンブリー外野手とフィンス・ローイ内野手です。昨季までのこのチームの課題は得点力の低さでした。それを埋めるにはうってつけの二人の加入でした。これで3番4番が固定され、下位打線にも厚みが生まれました。トップにはアルバ人クルース、アメリカ人助っ人のオルティズを置き、出塁した彼らを3、4番が返すというパターンを作ることができました。また、若くして才能開花させた選手もいます。21歳のケヴィン・ディルクセンです。打率は.306、本塁打3本、打点34。打点はチームトップの成績です。モールマンとともに彼がクリーンナップの後にいたことが打線をよりつながりやすくさせました。

 一方、苦しんだのが先発陣のコマ不足です。エースとして活躍したのは助っ人左腕のリカーズ(9勝2敗)。彼が一年間通して安定した投球をしてくれたことが上位に入れた要因とも言えます。エースとして期待したマイナーは防御率4.12、6勝4敗と伸び悩みました。左腕のデリンセルはなかなか良さを出してたりするんですけどね(4勝2敗)。よって、シーズン終盤に急遽、以前も助っ人として在籍していたオーコインを獲得して穴埋めしました。シーズンの大半を4位の位置にいたのですが、終盤、3位に滑り込んだのもオーコインの存在がでかいです。

 来季に向けては、先発陣の整備が急務です。打線、ブルペンは磐石ですので、若手の中からエースを発掘するか、助っ人を持ってくるか、対策が必至になります。野手は今のままどんどん若手を固定して使っていけばいいと思います。

 

4位 L&D Amsterdam Pirates/アムステルダムパイレーツ 本拠地アムステルダム

 昨季、シーズンを一位通過しながらもオランダシリーズに進出できなかったパイレーツ。今季は常勝軍団を築き上げてきたウルバナスから、現役を退いたばかりのオランダのレジェンドであるシドニー・デヨングが監督に就任。シーズン終盤までは安定して首位に併走していましたが、最後の直接対決で失速。プレーオフでも後一歩でオランダシリーズに進出できたが、またしても連敗を喫して臍を噛みました。

 個別に成績を見ていきます。野手では首位打者のバス・デヨング(.369)同2位のイゼニア(.368)同5位のベルケンボスフなど主軸が揃って好成績。若武者のハトとオーセムスも初の3割超(前者が.346後者が.304)。正捕手ノーイも.295。それぞれの成績を見てみるとほかを圧倒している成績です。しかし、残塁が多いのです。出したランナーをきっちりと返しきれてない感があります。言ってしまえば、勝負弱いのでしょうか。こればっかりはどうしようもないですね。

 投手陣の方は、オランダが誇る大エース・コルデマンスが今年も一年を通して活躍(10勝一敗、防御率1.11)。また、新加入したヘイステックは最優秀防御率を獲得しました(1.03)。しかし、ヘイステックはシーズン途中から中継ぎに回ったり、勝ち星も伸びませんでした。プレーオフでもエースと呼べる投球とは違う印象。彼の不調、伸び悩みが今シーズンのチームの失速に比例したとも言えるでしょう。一方の中継ぎ陣は今年も豊富。絶対的守護神のコックスと、新加入左腕のヴァルド、ルーキーチームから上がってきたヘンドリクス。中継ぎ陣が勝ちを消すことはほぼありませんでした。

 来季に向けて、既にチームは動いています。デヨング監督が代表の打撃コーチに就任することに伴い、チームの監督を辞任。理由は時間的余裕が限られて、チームに迷惑がかかるから、だとか。代わって、昨季までの監督であるウルバナスが最就任。常勝軍団を築き上げてきた、オランダ国民の知る男が帰ってきます。一年しかブランクはないので、監督としての仕事に全く支障はないでしょう。また、コーチ陣は今年に続いてコルデマンスとイゼニアが選手兼任で努めます。大エースといっても、もうコーチ兼任する年齢です。彼が現役を続けている間に、真のエースになるためのきっかけを掴んで欲しいものです。

 また、攻撃陣は残塁の多さが目立ちました。個人成績は素晴らしいので、今年の結果を踏まえて対策してくれるでしょう。去年なんか得点力抜群でしたから、そこまで心配してません。ノーイがマスクをかぶってないときはDHで起用するなどの工夫も考えられます。来季も優勝候補筆頭であるのは間違いありません。

 

5位 UVV/ユーフェーフェー 本拠地ユトレヒト

 昨季までの中心選手だったインテマとロンブリー。エースと4番が抜けた今季、大幅な成績ダウンが懸念されていました。しかし、結果は一部昇格から3年連続での5位。Bクラスの中では地力の差を見せることができました。

 今年、ロンブリーの退団で打の中心になると目されていたファンデルミール。しかし、アメリカの大学でのプレーを優先し、一年間を通しての出場はできませんでした。それでも、21試合に出場して打率.320。やはりオランダの若き正遊撃手ですな。彼がいない時のショートを守ったのが、今季ベルギーから移籍してきたデカイント。全試合に出場して、打率.280。上位打線に座り、チームを牽引しました。一方、所々でいろんな若手が活躍。一番期待されているのがネイホフ。昨季のU18ワールドカップに出場した彼は主にセンターとして36試合に出場。打率.236ながらチーム最多の10二塁打を放ちました。ライトのヨンヘリアスは1番に定着して40試合に出場。打率.284という成績で23得点を稼ぎました。他にもフローレク、コルネリセン、スミッツなど若手に多くの出場機会が与えられ来期以降に向けてたくさんのモノを得られたのではないでしょうか。

 投手ではエース候補のファンゼイルが16試合に登板して6勝6敗。貯金を作れませんでしたが。時にはいい投球も見られたので、援護の少なさを考えたらそこまで悪くわないのではと。アメリカ人助っ人のメズガーは防御率2.36ながらも3勝5敗と負け越してしまいました。

 来季はファンゼイルが安定し、彼の時だけは必ず勝てる、ぐらいにはなりたいですね。打撃陣は今の楽天のように、若手が奮起し日替わりでヒロインが出るような勝負強いチームを目指せば良いと思います。

 

6位 Mr,Cooker HCAW/ハーセーアーべー 本拠地バッセム

 このチームは近年、若手の修行の場です。ルーキーチームや二部リーグで好成績を残した選手がここで試合数をこなし、そこでも結果を出した選手たちは上位チームに引き抜かれていきます。ですので、毎年半分以上のメンバーが入れ替わります。今年も例年通り、大幅にメンバーが入れ替わりました。新しく来た選手の中には、U18ワールドカップに出場した選手もいます。一方、昨年活躍したアメリカ人助っ人のハイタワーは退団し、決してAクラスを目指せるような戦力ではありませんでした。結果は6位。若いチームにとって上位とのレベルの差を見せつけられて結果だと思います。しかし、UVVと比べるとチームとしての物足りなさは拭えません。

 シーズンを通して頑張ったのがカイゼルとクルース。カイゼルは30試合に出場して打率.296。上位やクリーンナップの後ろを担いました。クルースはアルバ出身の中堅選手。40試合に出場して打率.291、21打点。1・2番を担いチームの得点パターンを作りました。

 今年、オランダの有望な若手3選手がMLBのチームと契約を結びました。そんな彼らとともにオランダAAA代表として戦ってきた選手がいます。ヨーリス・ファンアムステル三塁手。彼もMLBアカデミーなどに参加してきましたが、惜しくも契約を結ぶことはできませんでした。チームでは今季からレギュラーとして出場機会が増え始めました。序盤こそ、ルーキーリーグとの差に苦しんでましたが、後半は調子をあげ打率は.201ながら打点21はチーム2位。今年の欧州野球U18で放ったグランドスラムをホーフトクラッセという舞台で見られるのも、そう遠くはないでしょう。

 チームである程度安定してローテを守ったのは、助っ人のグラナドスただひとり。他の若手先発陣の中には一人も存在感を見せるような選手は見当たりません。開幕投手のヘルメンダハやティメルマンス、昨季開幕投手のスヘル。ホープは多いはずなので来季の飛躍に期待。一方、オールスターにも出場した中継ぎのカーレルは24試合に出場して、防御率2.76と、一人だけブルペンで奮闘していました。中継ぎ不足のチームに引き抜かれるかもしれませんね。

 こうした、有望な若手選手の成長が見られますが、大方は上位チームに移籍するでしょう。しかしまあ、若手を育成するチームだとして割り切って考えたほうがいいかもしれませんね。

 

7位 Mampaey the HAWKS/ホークス 本拠地ドルトレヒト

 オランダ野球トップリーグであるホーフトクラッセの下には2部リーグがあります。3部も4部もあるんですけどね。2部はオーヴェルハンフスクラッセといいます。そのリーグを圧倒的戦力で制したのが、このホークスです。ホーフトクラッセ最下位だったフェイエノールトとの入れ替え戦では最終戦までもつれる接戦の末、3勝2敗で歴史あるドルトレヒトの街で唯一のトッププロチームになりました(2部に所属するサッカークラブはあります)。ドルトレヒトの2012の最優秀スポーツチームに選出。1部に上がる条件として常備していなかった、ナイター設備を設置したりもしました。

 そんな彼らが、トップレベルの強者ぞろいに挑んだ結果、7位でした。しかし、僕はかなり評価しています。確かに、序盤こそ上位チームには圧倒され、下位のチームとの試合でも勝ちを取りこぼしてました。しかし、中盤以降は上位に負けるとしても点差の小さい内容のいい試合で、回のチームからは着実の白星を取りました。結果、最下位とは差をつけることができました。また、プレーダウンでは2位という好成績。最後までUVVと首位争いをしました。

 そのチームでほぼ一年間を通して4番を守り抜いたのがファンドンセラールです。昨年の入れ替え戦では6番あたりで勝負強い打撃を見せており、映像を見た私は、今年どれだけ通用するか、かなり楽しみにしていました。オランダ人らしい長身であり、またかなりがっちりした体格の一塁手です。開幕こそベンチスタートでしたが、代打で続けて結果を出し続け、チームの4番を勝ち取りました。シーズン中盤まで首位打者争いに絡んでいましたが、最終的に41試合に出場して打率.298本塁打3本打点24と、チーム二冠の好成績です。昇格初年度の4番打者としては上出来すぎます。未来のオランダ代表4番として、是非とも個人的にレベルアップしてもらうとともに、ホークスを常勝軍団にしてもらいたいものです。出身もドルトレヒトであり、こうした地域に根付いたクラブには是非とも大きくなって欲しいものです。

 もうひとり1・2番打者としてチームを引っ張ったのがウーヴィング・ケンプ(ネプチューンズのケンプの弟)とベーレント・ルーベンです。前者が打率.317、後者が打率.308。彼らがしっかりと出塁してくれたことが、ファンドンセラールの活躍につながったと言えます。チームとして1年間通して、基本的な得点ポターンを作れたことが後半生きてきたと思います。他の打者も、基本的に成績が良く勝負強さを持ったいい打線でした。

 投手で、エースとしての素質を表してきたのはケヴィン・ノールデイ。成績は2勝4敗防御率3.80ですが、終盤は上位チーム相手にも好投。パイレーツ戦で8回途中5安打2失点に抑えたのが印象的。プレーダウンでは2試合に先発して2勝で防御率0点。Bクラス相手には完璧に抑えられることも示しました。彼が今年以上の成績を来年見せられれば、Aクラスも夢ではないかもしれません。 

 このチームは、終盤になるにつれチームとしての完成度はかなり高まってきました。チーム力はHCAWよりは確実に上、UVVと同等以上にはなってます。来年、力のある助っ人投手を補強するか、国内の有力選手を獲得することができれば、Aクラス進出も夢ではない、と断言しておきます。また、二部から上がってきたチームがこれだけやれることを証明してくれたことはオランダ各地に散らばる二部クラブの中にも多くの才能が潜んでいることを教えてくれました。

 

8位 ADO Lakers/アードレイカーズ 本拠地デンハーグ

 直近の7年間で一度の6位と三度の7位と最下位。ホーフトクラッセの万年Bクラスチームとかしてしまっている。そうした、戦力不足という課題からか、近年は数多くの選手をキュラソーやアルバから呼んでいます。しかし、それでもこのチームが浮上できない結果が、キュラソーの2流選手はホーフトクラッセでは通用しないことの証明にもなっています。今年も最下位でしたので、もちろん入れ替え戦に進みました。最終戦まで持ち込まれ、首の皮一枚で生き残りました。まあ、誤審で出たランナーがサヨナラのランナーになるなどあまり後味のいいものではありませんでしたけどね。

 このチームで今年規定打席に到達できたのはたった二人。スタメンに連ねられている名前がいきなりガラッと変わったり、ロースターに載っていないような選手が出場したり、めちゃくちゃなことをやっているからこんなことが起こるのでしょう。プレーダウン、入れ替え戦のメンバーもシーズンとは全く変わっていました。 

 そんな中、打で期待できるのは、地元ハーグ出身の二塁手スハーレマン。大学野球のため、シーズンの半分も試合に出られませんでしたが、勝負強さを見せたり可能性を感じられました。一方の投のホープはファンアンクム。シーズンでは防御率7.88で0勝12敗と散々な結果でしたが、入れ替え戦ではチームの1番手として最終戦で9回途中1失点と意地を見せました。彼にとっては悔しいシーズンになりましたが、最後の最後でチームのために仕事が出来ました。来年以降につながるでしょう。

 打線の主軸を担い、ある程度の活躍をした選手もいましたが20試合程度にしか出ていません。スタメンはおろか、チームのメンバーを固定できないようじゃ試合に勝てるはずがありません。ルーキーチームからやってきた地元の選手である程度はメンバーを固めて、その脇をちゃんと1年間チームに帯同できる助っ人で固めるべきです。チームの戦力を分析する以前の問題です。しっかりとしたチーム作り・運営ができない限り、来年も最下位という結果が待ってます。

 

 

 以上、今年のホーフトクラッセも全チーム別の総括をやってきました。チーム別に見ることで、このリーグをいろんな角度から見ることができたと思います。この文章を見て、少しでもオランダのホーフトクラッセをイメージすることができたら嬉しいです。

 また、WBCで世界の野球ファンに少し身近になったオランダ野球ですが、有名選手の大半がオランダ領キュラソーの選手でした。しかし、オランダ本国にもこんなに熱いリーグがあって、たくさんの有望な若手選手がいます。なんといっても、一つの国の野球の一番の基盤は、国内の野球リーグ。クラブではイタリアがオランダに先行しがちですが、決してそれに引けを取らないリーグです。ぜひ、来年はホーフトクラッセの存在感を示すためにヨーロピアカップで優勝をとって欲しいと願うとともに、必ずそれが可能であると信じています。