蘭野球事始 ~オランダ野球風説書~

自称日本一オランダの野球に詳しいブログ

オランダ代表 プレミア12壮行会兼記者会見

2015-11-03 22:00:58 の記事です。

 

オランダ代表が台湾へ出発する直前の水曜日10月28日、オランダで最も新しいホーフドルプにあるファエッセン・パイオニアーズの球場で、国内外メディアへ向けた記者会見が開かれました。
練習を一般公開した後、グラウンドでの取材。その後クラブハウスに移動し記者会見が行われました。

ホーフドルプその1
オランダ最新の野球場 in ホーフドルプ 外観

ホーフドルプその2
オランダ最新の野球場 in ホーフドルプ グラウンド

練習中のAJ
1塁練習中のアンドリュー・ジョーンズ(AJ)、グラブはミズノ

インタビュー中のAJ
FOXヨーロッパのインタビューを受けるAJ

キメてくれたAJ
インタビューが長すぎて少しお疲れ顔のAJ

会見には国内外メディア、そして欧州野球関係者が多数招待。私も招待されたので出席してきました。
代表チームからは、かつて日本でも活躍した代表監督のヘンスリー・ミューレンス、コーチのスティーフ・ヤンセン、今大会でも主軸を担うMLBで10年連続ゴールドグラブのアンドリュー・ジョーンズ、そしてエース左腕のディゴマー・マークウェルが出席しました。

記者会見
記者会見の模様(左から、ディエゴマー・マークウェル、スティーフ・ヤンセンヘンスリー・ミューレンス、アンドリュー・ジョーンズ

オランダ代表は既にキュラソーで2週間のキャンプを実施。チームの雰囲気、選手のコンディションを一気に上げてきました。そして11月9日(月)の地元台湾との開幕戦に向け、一週間前に現地入り予定と準備万端。さらに今大会はここ数年間、主に監督を務めているベルギー人のスティーフ・ヤンセンをコーチへ下げ、サンフランシスコ・ジャイアンツで打撃コーチを務めるオランダのレジェンド、ヘンスリー・ミューレンスが監督に就任。4位となりオランダ旋風を巻き起こした、2013年の第3回WBC以来の指揮を取ることになります。

会見では今大会への意気込みやキュラソーでのキャンプの様子など一般的な内容、そしてやはりミューレンス監督の復帰に関して、日本でプレーするウラディミール・バレンティンに関しての質問が集中しました。

ミューレンス監督が復帰した理由の一つにまず、オランダ王国内の融和があります。この夏のワールドポートトーナメント同様、昨今のオランダ王国内では本国オランダとキュラソーに代表されるカリブ諸国の野球だけでない、経済、文化も含めた結びつきを強調しています。

ミューレンスはオランダ王国のひとつ、カリブ海にあるキュラソーの出身。ミューレンス監督も含めメジャーリーガーを多数輩出しているキュラソーの人気ナンバーワンスポーツは野球。しかし本国オランダではご存知の通りサッカーが一番人気。そこでオランダ王国の人間からも人気のあるカリスマ、ミューレンスに白羽の矢が立ったようです。つまりミューレンスは、野球に関心がない本国オランダからの注目を一気に集めるという大役も担っています。

二つ目の理由は、チームの野手の大半はキュラソー出身マイナーリーガーが占めているということ。
今大会はマイナーリーグが既に終了している為、アメリカからも多数招集されました。ミューレンス監督は今季、サンフランシスコ・ジャイアンツで打撃コーチを務めていた為、アメリカでプレーする選手の情報は事細かく把握しています。
例えば、今回代表に選ばれたカールトン・ダールは、スタッツ(数字)上は守備のエラーが目立っています。しかし、ミューレンス監督はダールがエラーした球場を全てチェック。そして球場のグラウンドコンディションの悪さを指摘、その部分が考慮されて代表に選出されました。

オランダ代表では投手陣は本国オランダ出身、野手陣はキュラソー出身という傾向、暗黙の了解があります。
今回コーチを務めるスティーフ・ヤンセンは、オランダ国境にほど近いアントワープ在住。氏は国内リーグ・ホーフトクラッセでも監督経験があり、シーズン中も頻繁にオランダを訪れ選手の様子をチェックしています。ヨーロッパ在住で、元キャッチャー。投手陣を把握するには適任です。
一方、野手の把握は主にミューレンス監督の役割。氏と同じアメリカ在住、キュラソー出身オランダ人の気持ちはミューレンス監督が一番理解出来ます。ヤンセンコーチは投手陣、ミューレンス監督は野手陣という絶妙なバランスの上にオランダ代表は成り立っています。

また現地メディアからの裏事情としては、金銭的に毎回ミューレンス監督をアメリカから呼べないという事もある様です。サンフランシスコ・ジャイアンツからの年俸を捨てて、代表監督を務める…考えにくい選択です。

KNBSBバナー
王立オランダ野球協会

Team Kingdom of The NL
オランダ王国代表の象徴、全構成国の国旗をあしらったユニフォーム

熱弁をふるうディエゴマー
かつてプレーした台湾メディアの取材を受けるディエゴマー・マークウェル

日本シリーズを戦っていた、東京ヤクルトウラディミール・バレンティン選手に関しては、やはりDHのみでの参加となる模様。今シーズンのほとんどを怪我で欠場したバレンティン。オランダとヤクルトで討議した結果、DHのみの起用になったとのこと。その為、DHにはバレンティンが入り、アンドリュー・ジョーンズは一塁を守る事になる見込みでした。

しかしここに来て急展開を迎えます。10月30日、金曜日の離蘭当日になってアンドリュー・ジョーンズのもと訃報が届きました。故郷キュラソーに住む父ヘンリーが亡くなったとのこと。68歳というあまりにも早い別れに、台湾へ向かうチームとは一度離れ、アンドリューはキュラソーに向かいました。オランダ国内は「アンドリュー・ジョーンズは大会までには台湾に戻ってきて、一緒にプレミア12を戦うだろう。」と見ています。それにはプレミア12が今季無所属だった彼にとって、来季への良い就職活動となるからです。しかしその一方、かつては野球選手だったヘンリーは、アンドリューにとって父親であると同時に一番尊敬する野球選手でもありました。そして、3歳の時にグローブを買い与えてもらい野球を始めるきっかけを作ってくれた人。特に島国の人間は家族愛が深いとも言われるだけに、最終的にどうなるか。オランダ国内もそっと見守りつつも、大会の事を考えると内心はモヤっとしているのが実情です。

既にオランダ代表は台湾で最終調整を行っています。同行スタッフの話では、これまでは特に怪我人もなく順調に来ている模様。

会見でミューレンス監督は「初戦の相手は地元台湾で、試合は大いに盛り上がるだろう。しかし相手がどこであろうが、一戦一戦集中するだけ。」と話していました。アンドリュー・ジョーンズの事はあれど、まずは自分たちの戦いが出来るようにベストを尽くすといったところでしょう。

最後に監督のヘンスリー・ミューレンスから、英語ではありますが日本のファンへメッセージを頂戴しています。


ロッテ・ヤクルトで活躍したミューレンス(登録名:ミューレン)。ヤクルトを1996年に退団後、2000年には韓国でもプレーしているため、アジアには極めて好印象な氏。なんとか台湾での1次ラウンドを突破して、日本にたどり着きたいと豊富で語っていました。

CEB会長
欧州野球機構代表(プレジデント)でご近所のヤン・エッセルマン

クラブハウス
オランダの球場には必ずあるクラブハウス

4位になった第3回WBCと同じく、このプレミア12でも世界を驚かせる存在になるでしょう。

プレミア12オランダ代表選手名鑑 最終ロースター

2015-10-19 00:38:54 の記事です。
 
 「オランダ王国」は、みなさんがご存知の「オランダ」とは多少差異があります。   「オランダ」とは「オランダ王国」の構成国の一つに過ぎません。この中には他に、「キュラソー」や「アルバ」「シントマールテン」といったカリブ海の国も加わります。これら4つの国は互いに対等な立場で「オランダ王国」を構成しています。よって、マスメディア等でしばしば「オランダ領」と称される「キュラソー」や「アルバ」は、正確には「オランダ領」ではございません。
※「オランダ」という国の構成地域の一つとしてさらにカリブ海の「ボネール島」「シントユースタティウス島」「サバ島」も存在します。
 日本球界でもお馴染みのバレンティンが前回のWBCにオランダ代表として出場していたのを見て、不思議に思われた方もいるでしょう。つまりWBCオランダ代表は、「オランダ王国」代表だったのです。
 
 ですので野球オランダ代表には人種はまぜこぜです(もちろん「オランダ」にも黒人の方はいます)。オランダ人、キュラソー人、アルバ人などなど、様々な地域で育ち、様々な文化を持ち合わせる選手たちが「オランダ王国」という名のもとに団結し情熱をかけてプレーしているのもオランダ野球の魅力の一つです。
 また、彼らの中にはオランダ国内リーグホーフトクラッセセミプロとして活躍する選手。はたまた、アメリカのMLB傘下でプロとして活躍する選手が存在します。こうした異なる舞台、レベルでプレーする選手たちが一堂に会して優勝を目指すのはなんともロマンがあることです。

 今回、オランダ代表はユニフォームのデザインに微修正を加えました。今まではオランダを意味する「NEDERLAND(ネーデルランド)」と胸に表記していました。が、今回の修正で「Kingdom of the Netherlands(オランダ王国)」とし、キュラソーやアルバなども含めた意味にしました。

 選手もさることながら、コーチ人の顔ぶれも「地域色」豊かです。監督がMLB日本、韓国でもプレーした「キュラソー」人のヘンスリー・ミューレンス。ヘッドコーチがベルギーからキャリアを求めて「オランダ」に渡ったスティーフ・ヤンセン。打撃コーチが「オランダ」球界のレジェンド、シドニー・デヨング。1塁コーチ、3塁コーチがそれぞれ「キュラソー」のベン・タイセン、「アルバ」のヴィム・マルティナス。「オランダ王国」総出のコーチング体制が築かれています。もちろんそれは代表候補の選手たちもそのような構成になっているからです。

※ホーフトクラッセ選手は現地取材プロスペクトの選手の特徴などは、プロスペクトに精通する方にも協力を得ています。
※選手の写真はオランダのプロカメラマンの方から許可を頂いて使用しています。無断での使用・転載は固くお断りします。
※情報の無断での転載、使用は固くお断りします。ご連絡はnlhonkbaljapan @ gmail.comまで。(スペース削除)

All photos were taken by Henk Seppen. Thank you Henk.

【例】
○名前日本語/ローマ字 身長/体重 生年月日 年齢
所属チーム ※レギュラーシーズン最終所属先 投打 「出身地」

【投手】
○ロビー・コルデマンス/Rob Cordemans 190cm/93kg 1974年10月31日41歳
L&Dアムステルダム・パイレーツ(オランダ国内) 右右 「オランダ」

オランダ球界のレジェンド。WBC3度、オリンピック4度出場と、輝かしい経歴を持つ。球速以上に威力のある真っ直ぐと、伝家の宝刀チェンジアップが特徴。2011ワールドカップではキューバを八回途中まで2安打1失点で勝利投手。三振も取れる。チェンジアップは抜いた球と落ちる球の二種類を投げ分ける。日本ファンには鳥谷に先頭打者ホームランを打たれたことで記憶されてるかもしれないが、それ以降は投球スタイルを多少チェンジ。カーブを有効に使うようになった。それが功を奏してか、今年春の対侍ジャパン戦では先発して2回をきっちりと零封した。ピッチングへの探究心は40歳を超えても大きくなるばかりだ。代表でもチームでも若手へ指導、ノックもこなす。球種はストレート(130前半)、カーブ、チェンジアップ。
13試合6勝2敗 防御率0.84 奪三振79
1.Rob Cordemans

○ディエゴマー・マークウェル/Diegomar Markwell 188cm/88kg 1980年8月8日35歳
キュラソーロッテルダムネプチューンズ(オランダ国内) 左左 「キュラソー

オランダの左腕エース。コルデマンスと同じく長年代表の主力として活躍している。WBCで韓国戦やキューバ戦の勝利投手だったのも彼。世界一のドミニカ戦でも中盤までしっかりと試合を作った。侍ジャパン首脳陣も彼を一番警戒していたという話もあり、メッツなどの複数のメジャー球団が彼に興味を示した。スリークォーター気味に投げ込み、スローカーブを効果的に使って打たせてとる。ロングリリーフもこなす使い勝手のいい投手だ。彼の投球術の前には、侍ジャパンも手こずりそうだ。球種はストレート(130中後半)、カーブ、スライダー、チェンジアップ。
12試合9勝2敗 防御率2.06 奪三振54
2.Diegomar Markwell

○ケフィン・ヘイステック/Kevin Heijstek 193cm/97kg 1988年4月19日27歳
L&Dアムステルダム・パイレーツ(オランダ国内) 右右 「オランダ」

オランダの次世代エース。2013年はホーフトクラッセ最優秀防御率、昨年は最多勝を獲得。2014ユーロではエース的な役回りでチームの優勝に貢献した。伝家の宝刀は落差の大きいカーブ。2013WBCでは松田も三振にとった。ストレートは140前後だが、キューバ人で2014MLB新人王のアブレイユやロッテのデスパイネを空振り三振にとったこともある。現在では段々と代表内での位置づけも上がってきており、2014年ユーロではローテで周り準決勝にも登板。是非とも日本で見てみたい投手の1人。プレミア12でも先発ローテに割って入りたい。球種はストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップ。
13試合9勝1敗 防御率1.32 奪三振69
3.Kevin Heijstek

○マイク・ボルセンブルーク/Mike Bolsenbroek 203cm/95kg 1987年3月11日28歳
ブッフビンターレーゲンスブルク・レギオネーレ(ドイツ国内) 右右 「オランダ」

ドイツ代表経験もある異色なオランダ人右腕。18歳でオランダ・ホーフトクラッセでデビューを果たす。ホワイトソックスにドラフト指名されるも断り、ドイツの強豪レギオネーレへ。翌年ドラフト外フィリーズとの契約を掴む。3年間マイナーでプレーするもリリースされ、次の活躍の舞台として選んだの再びドイツだった。レギオネーレのエースに成長し、2012年のWBC予選ではドイツ代表として出場した。しかし、彼の活躍を嗅ぎつけたオランダ野球連盟は彼にオファーをかけた。2014年のハーレムベースボールウィーク(オランダ主催の国際大会)では初めてオランダ代表入りした。また、その年の欧州野球選手権ではローテを守り、ギリシャ戦で7回ノーヒットノーランの活躍でMVP候補にもなった。今季のワールドポートトーナメント、キューバ戦でも勝利投手になった。この大会でも先発ローテの一角として期待される。
ストレートは常時140キロ中盤を誇り、落ちる球で三振をとる本格右腕だ。
4.Mike Bolsenbroek

○ヤイアー・ユーエンス/Jair Jurrjens 185cm/90kg 1986年1月29日29歳
フリーエージェント 右右 「キュラソー

アトランタブレーブスでメジャーリーガーとして活躍した投手。今回はエース格か。2009年には14勝を挙げ、通算でも53勝。2011年5月には月間MVPを獲得し、オールスターにも選出された。現在のオランダ球界では最も輝かしい経歴を持つ投手だ。今シーズンはコロラド・ロッキーズと契約しメジャーにも復帰したが、結果を残せず降格。そのまま解雇になってしまった。ストレートは140中盤だがスライダーなどを低めに制球し、ゴロを打たせていく。高めの釣り玉などを使い三振も取れる。メジャー時代の輝きをオランダ代表で取り戻せるか。

ユアン・カルロス・スルバラン/Juan Carlos Sulbaran 188cm/99kg 1989年11月9日25歳 カンザスシティ・ロイヤルズ傘下(AAA) 右右 「キュラソー

何度もオランダ代表に入っているプロスペクト。今年はAAAまで昇格した。2009WBCではアメリカの強打者たちに強気のピッチングを披露していた。だが、その後の代表では2012年のユーロで打ち込まれたりとあまり活躍できていない。特徴はストレート、スライダー、チェンジアップのコンビネーション。ここ2年ほどで磨きがかかってきた。球速は140中盤ほどであるが、それゆえ力で押そうとすると打ち込まれる場面も。今大会は先発かロングリリーフ、2つの役割が期待される。
28試合7勝10敗 防御率5.24 奪三振99
6.Juan Carlos Sulbaran

○シャイロン・マーティス/Shairon Martis 185cm/102kg 1987年3月30日28歳
リンカーン・ソルトドッグス(米独) 右右 「キュラソー

若い頃から長年代表を経験してきた右腕。WBC2回出場、MLBでも26試合登板した。昨年は台湾で28試合8勝7敗の成績を残した。2006WBCでは7回参考記録ながらノーヒットノーランを達成した。落ちるスライダーが武器。調子が悪いと球が真ん中に集まる制球難が欠点。ここ数年は急速が目に見えて落ちており、侍ジャパンとのグローバルマッチ第1戦で敗因となったピンチを作ったのはこの人。球種はストレート、スライダー、チェンジアップなど。
7.Shairon Martis

ルーク・ファンミル/Loek ven Mil 216cm/120kg 1984年9月15日31歳
キュラソーロッテルダムネプチューンズ(オランダ国内)、ミネソタ・ツインズ傘下(AAA) 右右 「オランダ」

全世界の野球選手で最高身長の216cm右腕。昨年は楽天で7試合に登板した。角度あるストレートは威力万点で最速は150前半。高速のカッターも投げ込む。ウインイングショットは落差あるスプリットだ。日本では星野監督の指導の下、カーブも覚えた。コントロールは悪くないが、一旦四球を出してしまうと続けて出してしまうこともある。今シーズンはホーフトクラッセネプチューンズに復帰し、守護神を務め防御率は圧巻の0.36。オランダ主催の国際大会にキューバ目当てで訪れていたツインズスカウトの目にとまり、アメリカに復帰。AAAで3試合に登板し、見事無失点に抑えた。アメリカから帰国後は、ネプチューンズとキンハイムによるオランダシリーズで胴上げ投手となった。
19試合2勝1敗6S 防御率0.36 奪三振31
8.Loek ven Mil

○トム・スタイフベルヘン/Tom Stuijfbergen 190cm/115kg 1988年9月26日27歳
コレンドン・キンハイム(オランダ国内) 右右 「オランダ」

オランダの次期エース候補。18歳でミネソタツインズと契約し、オランダ代表でも20歳の頃からプレーした。兄も元オランダ代表の投手。2011ワールドカップでは最優秀防御率に輝き、大会を通じて無失点だった。1年前にトミージョーン手術を受け、昨年1年間はリハビリに費やした。夏、ホーフトクラッセプレーオフで復帰すると、9月の欧州野球選手権では、決勝のイタリア戦で1アウト満塁の場面をリリーフし2者連続三振。オランダの優勝に大きく貢献。ストレートは重さがあり、WBCではドミニカ共和国オルティスからも三振を取った。侍ジャパンとのグローバルマッチ第2戦ではフォーシームとツーシームのコンビネーションのみで、嶋と山田哲人を2者三振にとり、最後を締めた。落差の大きいスライダーをウイニングショットにもできる。今シーズンも幾度となく軽度の故障を繰り返したため、大会期間中も故障が心配される。球種はフォーシーム(最速150弱)、ツーシーム、スライダー、チェンジアップ。
12試合4勝1敗 防御率1.81 奪三振49
9.Tom Stuijfbergen

○ベリー・ファンドリール/Berry van Driel 193cm/90kg 1984年12月26日31歳
キュラソーロッテルダムネプチューンズ(オランダ国内) 右右 「オランダ」 リリーファ

「オランダ」のリリーフエース。2014年オランダシリーズのMVPにもなった。最速140キロ代後半を誇るストレートはキューバの強打者も振り遅れてしまう。近年は成績が落ち着いてきてはいたものの、昨年後半に始めて先発を経験し、先発に適用。アムステルダムとのオランダシリーズでは王手をかけられた2試合に先発し、どちらの試合でも勝ち投手になった。カウントを稼ぐスライダーとともに、決め球には落差あるスプリットも使う。今季は怪我の影響もあり、少し不調だった。
17試合2勝2敗 防御率4.81奪三振26
10.Berry van Driel

○オーランド・インテマ/Orlando Yntema 190cm/81kg 1986年2月21日29歳
キュラソーロッテルダムネプチューンズ(オランダ国内) 右右 「ドミニカ共和国

オランダ人の父を持つドミニカ出身の右腕。2重国籍。2010年のインターコンチネンタルカップから代表入りした。昨年はホーフトクラッセ最優秀防御率を受賞、チームの優勝に大きく貢献した。先発も中継ぎもできるパワーピッチャー。重いストレート、落ちるスライダーが特徴。このスライダーの出来次第でこの投手の調子が左右されると言っても過言ではない。2011ワールドカップではスライダーが低めにことごとく決まり、キューバ戦で勝利投手になった。ストレートは140前後。
15試合8勝2敗 防御率2.86 奪三振77
11.Orlando Yntema

○イム・プルーヘル/Jim Ploeger 190cm/102kg 1991年6月21日24歳
UVV(オランダ国内) 左左 「オランダ」 リリーファ

今シーズンからオランダホーフトクラッセに復帰した若手左腕。2009年にはオランダ野球ソフト協会の最優秀若手投手賞を受賞し、同年には早くもワールドポートトーナメントにて代表入りしていた。その後は一度も選出されず、その間2011~2014年はアメリカの大学でプレー。復帰した今季はBクラスのチームで一際目立った活躍をして、再びワールドポートトーナメントで代表へ復帰した。長年のオランダ代表の課題である左腕投手の不足に彼が穴を埋めることができるのか。何より目立つのが奪三振数。
14試合5勝5敗 防御率2.39 奪三振76
Jim Ploeger

バイロン・コルネリッセ/Bayron Cornelisse 1993年11月4日22歳
ファエッセン・パイオニアーズ(オランダ国内) 右右 「オランダ」 クローザー、リリーファ
14.Bayron Cornelisse

2012年、パイオニアーズにて19歳でデビュー。ルーキーイヤーに19試合に登板し防御率0.00、3勝1敗8セーブの成績で守護神の座を掴んだ若武者だ。2009年彼が野球アカデミーに参加した時のコーチが、以前オランダ代表のクローザーとして活躍していたポール・アネ。パイレーツやパイオニアーズでコーチの経験があるアネから、クローザーとしての技を教え込まれた彼もクローザーを目指すようになった。福岡ソフトバンク森唯斗のように思い切りよく投げ込んでくる。落ちる高速スライダーも武器。数年前にはメッツのスカウトが興味を示していたとの噂も、、、オランダ主催の国際大会では、代表でクローザーを任されるようになっており、マイナー選手も加わる今回の代表でどこまで存在感を示せるか期待だ。
23試合1勝3敗9S 防御率3.28 奪三振21

【捕手】
○ショーン・サラガ/Shawn Zarraga 182cm/111kg 1989年1月21日26歳
ロサンゼルス・ドジャース傘下(AAA) 右両 「アルバ」

現在のオランダ球界ではナンバーワン捕手。20v10年のIBAFインターコンチネンタルカップでオランダ代表に初選出。その後は2011ワールドカップ、2014ユーロ選手権で代表に選ばれている。2010、2011の代表の際は、当時の正捕手で現打撃コーチのシドニー・デヨングに才能を見込まれ、打撃からキャッチングに至るまでみっちり指導を受けた。プロ入り前には全世界の若武者がホームラン競争を行うパワーショーケースで長打力を見せつけた。近年はその長打力は少し影を潜めているが、両打席からシュアな打撃でコンスタントにヒットを放つ。2014ユーロではしっかりと投手陣をリード。今大会でも、正捕手として守備から打撃まで広範囲の活躍が期待される。
62試合 打率.286 本塁打1打点18 OPS.710
16.Shawn Zarraga

○ジアニソン・ブークハウト/Gianison Boekhoudt 182cm/93kg 1989年10月15日25歳
キュラソーロッテルダムネプチューンズ(オランダ国内) 右左 「アルバ」

今季のホーフトクラッセ本塁打王。2009年にワシントンナショナルズと契約し、3年間アメリカでプレーしたが、2013年からオランダホーフトクラッセへ。器用に外野もこなすことができる。昨年は4番としてチームを引っ張り優勝に貢献、代表でも4番を担うようになった。パワーはさることながら、広角に打ち分けられるバットコントロールも魅力。今季は率を下げたものの、長打力は健在で初の本塁打王に。欧州のクラブ選手権であるヨーロッパカップの第1戦でも3点本塁打を放った。ここぞの場面でも代打などの起用が予想される。
42試合 打率.277 本塁打8 打点42 OPS.886
17.Gianison Boekhoudt

○ダシェンコ・リカルド/Dashenko Ricardo 182cm/93kg 1990年3月1日25歳
コレンドン・キンハイム(オランダ国内) 右右 「キュラソー

守備型キャッチャーで、2013WBCでの正捕手。WBCでは的確なリードでチームをベスト4に導いた。オリオールズジャイアンツでプレーしたが、課題の打撃がふるわず解雇になり昨年からホーフトクラッセへ。2014年はホーフトクラッセでも打率は上がらず.266だった。が、今季は一転。打撃が開花し、リーグ2位の打率を残した。痛めていた肘も少しずつ回復に向かっているようで、盗塁阻止率は.390。今大会ではサラガのバックアップとして、守備固めとしての起用が予想される。
42試合 打率.420 本塁打4 打点40 OPS.1050
18.Dashenko Ricardo


【内野】
○クルト・スミス/Curt Smith 177cm/95kg 1986年9月9日29歳
リンカーン・ソルトドッグス(米独) 右右 「キュラソー」 ファースト

広角に打ち分ける中距離ヒッターであり、代表のオランダ代表の主軸。2011年ワールドカップでは3本塁打で、打点王とMVPを獲得。リーチが長くボールを拾って本塁打にするパワーを持ち、大事な場面で打点を稼ぐ勝負強さが特徴である。2013WBCでも5番、6番に座りクリーンナップが残したランナーをしっかりとホームへ帰していた。例えるとイ・ボムホか。今春の侍ジャパンとのグローバルマッチでも来日し、藤波ら日本の投手から初戦は3安打の固め打ち。彼のコンパクトで無駄のないスイングは秋山幸二中畑清をも唸らせた。
87試合 打率.294 本塁打12 打点61 OPS.850
20.Curt Smith

○ユレンデル・デカスター/Yurendell de Caster 182cm/97kg 1979年9月26日37歳
カンペチャ・パイレーツ(メキシコ国内) 右右 「キュラソー」 サード、セカンド、ファースト、外野

まだまだ元気なベテラン選手。2009WBCではサードで美技を連発し、日本のファンをも驚かせた。ダイナミックな守備と鉄砲肩が武器だが、年を重ねた現在は外野も器用にこなす。バッティングでもパンチ力を秘めており、2009WBCではクリーンナップを打ち、ドミニカ共和国戦でサヨナラ打を放ったのもこの人だ。2014年のニカラグアウィンターリーグでは打点王を獲得し、老け込む様子は見られない。侍ジャパンとのグローバルマッチで、彼が松葉投手から放った3点本塁打を覚えていらっしゃる方も多いはずだ。使い勝手のいい万能選手である。
21.Yurendell de Caster

○ドゥエイン・ケンプ/Dwayne Kemp 172cm/72kg 1988年2月24日27歳
キュラソーロッテルダムネプチューンズ(オランダ国内) 右右 「オランダ」 セカンド、ショート、サード

19歳からオランダホーフトクラッセで活躍する、オランダ国内の人気選手。尊敬する選手はロビンソン・カノー。20~21歳の2年間はカブス参加のRk、Aでプレーし、経験を積んだ。普段はセカンド、ショートで軽快なフィールディングを見せる。2011ワールドカップではレフトも担い器用なところを見せたが、見てる方は冷や汗をかいてしまうようなぎこちない身のこなしだった。小柄ながらパンチ力も秘めており、セーフティバントなどで相手を揺さぶることも可能だ。盗塁も20マーク。
40試合 打率.368 本塁打2 打点23 OPS.907
22.Dwayne Kemp


○シャーロン・スホープ/Sharlon Schoop 188cm/86kg 1987年4月15日28歳
ボルティモア・オリオールズ傘下(AAA) 右右 「キュラソー」 ショート、サード

メジャーリーガーであるヨナサン・スホープの兄。2009WBCから代表入りし、2011ワールドカップでは弟と並んで6番、7番に座り優勝に貢献した。その大会の準決勝韓国戦では逆方向に3点本塁打を放ったような長打力もある。昨年のユーロでも代表入りし、ショートを務め、守備面でも高い能力を見せる。下位、または代打での勝負強い打撃に期待したい。
80試合 打率.219 本塁打15 打点62 OPS.543
25.Sharlon Schoop

○カールトン・ダール/Carlton Daal 187cm/72kg 1993年8月1日22歳
シンシナティ・レッズ傘下(A+)  右右「キュラソー」 ショート

レッズのプロスペクトランキング25位以内に入る内野手。21盗塁の瞬足に加え、軽快なフィールディングがスカウト陣の高評価を得ている。今季はセカンドを守っているようだが、将来的にはショートに移るようだ。課題は非力。プロ入り後、本塁打はまだ1本で、高いレベルの速球についていけるパワーを備えなければならない。
112試合 打率.270 本塁打0 打点30 OPS.597


○ジアンフランコ・ヴァウー/Gianfranco Wawoea 180cm/77kg 1994年7月25日21歳
シアトル・マリナーズ傘下(A) 右右 「キュラソー」 セカンド、ショート、外野

パンチ力が持ち味のホープ。今春のマリナーズのメジャーキャンプに初参加し、始めてAAにも昇格した。今季8本塁打を放ち長打力の片鱗を見せた。また、ノーヒットノーランを続けていた相手投手から均衡を破る安打も放っている。守備ではセカンドを中心にショート、サード、外野も守るユーティリティプレーヤーだ。代打などで使えば、意外性を発揮し面白そうだ。
98試合 打率.266 本塁打8 打点28 OPS.710


○ヘンリー・スタシア/Hainley Statia 178cm/82kg 1986年1月19日 29歳
フリーエージェント 右両 「キュラソー」 セカンド、ショート

WBCに2大会も出場したスイッチヒッター。長年オランダ代表の二遊間をはってきた選手だ。2009年WBCではショートとして軽快なフィールディングで投手陣を支えた。昨年のユーロでもセカンドとして常時出場し、打撃でも高い出塁率でチームに得点をもたらした。近年はチーム事情などを考慮し、時たま外野にも挑戦しており、ユーティリティプレーヤーとしてフルに働いてくれそう。2014年はAA-AAAでプレーしたものの、今季はプレーした形跡が見当たらず、それが一つ心配だ。
30.Hainley Statia


【外野】
○カリアン・サムス/Kalian Sams 188cm/112kg 1986年8月25日29歳
ケベック・キャピタルズ(加独) 右右 「オランダ」

オランダ行政の中心デンハーグ出身のスラッガー。ワールドカップキューバ戦でのホームラン、ユーロでのサイクルヒットなど印象に残るパフォーマンスをする男だ。シアトルマリナーズやサンディエゴパドレステキサス・レンジャーズ傘下などでプレーしたが、昨年は台湾ポップコーンリーグにてプレーした。オランダシリーズ限定でネプチューンズでもプレーし、優勝に貢献した。欧州野球選手権では5番に座り、決勝のイタリア戦でも2本塁打した。ツボにはまった時のパンチ力は素晴らしく、もの凄い飛距離を出す。足も速いが、守備では後方の打球に対するアプローチに何がある。今回も主砲として期待したい。
彼も今春の侍ジャパンとのグローバルマッチで来日し、二塁打や犠牲フライでチームに貢献した。
84試合 打率.284 本塁打16 打点68 OPS.1.215
28.Kalian Sams

アンドリュー・ジョーンズ/Andruw Jones 185cm/101kg 1977年4月23日38歳
フリーエージェント(前東北楽天ゴールデンイーグルス) 右右 「キュラソー

言わずと知れた、かつてのメジャー二冠王でありゴールデングラブ賞常連のスタープレーヤー。オランダ、キュラソーの野球少年の英雄であった。楽天でも4番として球団初優勝に貢献し、日本人にも馴染みのある選手だ。足や肩は衰えていても、パワーと選球眼は健在だ。WBCにも2度オランダ代表として出場しており、2013大会では主軸としてチームをベスト4に導いた。今季はどこにも所属せず、プレーもしていないが、バレンティンと共に代表でプレーするのを楽しみにしていたようだ。1年のブランクをどこまで埋められるかが鍵だ。
29.Andruw Jones

ランドルフ・オデュベル/Randolph Oduber 191cm/86kg 1989年3月18日26歳
ワシントン・ナショナルズ傘下(AA) 左右 「アルバ」

右打席から内野安打を生み出すほどの快速。その足を生かした守備範囲の広さも魅力だ。2013WBC戦士であり、怪我人の影響でスタメンにも周り、キューバ戦では彼の足を活かした機動力でキューバの守備をかき乱した。昨年のユーロの際には一回り身体が大きくなっており、長打力が増し、イタリアとの決勝でも効果的な本塁打を放った。今回も彼の機動力はチームの大きな武器なってくると思われ、レギュラーを取って欲しい選手。今季序盤に怪我した箇所が心配だ。
7試合 打率.188 本塁打0 打点2 OPS.503
31.Randolph Oduber


ウラディミール・バレンティン/Wladimir Balentien 188cm/100kg1984年7月2日31歳
東京ヤクルトスワローズ 右右 「キュラソー

言わずと知れた日本プロ野球シーズン最多本塁打記録保持者。60本塁打を放ったシーズンオフには彼の帰国とともにパレードが開催され、島はお祭り騒ぎになった。オランダ代表はアテネ五輪、2013WBCに継ぎ3度目。2013WBCでは4番に座り活躍したが、怪我や本塁打なしといった結果に終わり、少し物足りないものとなった。今大会ももちろん4番に座ることが予想され、本塁打を期待される。今季は怪我の影響で後半戦で復帰したばかりだが、CS、日本シリーズで勢いをつけて代表に合流したい。日本を知る男でもあり、世界を知る男。決勝以降、日本との対戦で頼れる男になる。
15試合 打率.186 本塁打1 打点6 OPS.488
33.Wladimir Balentien

○クリス・ガリア/Chris Garia 182cm/74kg 1992年12月16日22歳
テキサス・レンジャーズ傘下(A+) 右両 「キュラソー

今季一気にAAAまで駆け上がったプロスペクト。27盗塁を記録した瞬足もさることながら、打撃面でも8本塁打をマーク。しかも、両打席からとも本塁打を放っており、貴重なスイッチヒッターとなりそうだ。外野守備も無難にこなせるようで、似たタイプの選手であるオデュベルとは熾烈なレギュラー争いが繰り広げられるだろう。
89試合 打率.283 本塁打8 打点46 OPS.781


選手の出身はヨーロッパから中米と各々ですが、基本的にオランダ語読みに近づけています。アンドリュー・ジョーンズ選手は日本でも英語読みが浸透しているのでそのままにしています。オランダ国内でプレーする選手は、オランダ語読みがやはり喜んでくれます。日本で声をかける時には是非、名前(ファーストネーム)をオランダ語読み呼んでみてください。

※写真の転載は固くお断りします。


※以降はオランダ代表合宿後、最終選考で落選した選手達です。

【投手】
○ヨナサン・バレンティナ/Jonathan Balentina 191cm/100kg 1989年9月9日
シントマリア・パイレーツ(キュラソー国内) 左左 「キュラソー」 リリーファー 

2013WBCメンバーである、変則サイド左腕。独特の投げ方により左打者は打ちにくい。球速は130中盤ほどで、これといった変化球はスライダー、チェンジアップほど。アメリカの大学を優秀な成績で卒業後、キュラソー国内でプレーしている。今季はワールドポートトーナメントにもキュラソー代表として出場。
12.Jonathan Balentina

○ヴェンデル・フローラナス/Wendell Floranus 180cm/72kg 1995年4月16日20歳
ボルティモア・オリオールズ傘下(Rk) 右右 「キュラソー」リリーファ

Rkでプレーしていた若手リリーファー。ところが今季終了と共に解雇された。今シーズンは4年間プレーしたうちでも最高に近い成績を残しただけに残念だ。再就職のためにも将来性を勝手の招集か。
17試合1勝2敗 防御率1.75 奪三振20
15.Wendell Floranus


【捕手】
クインティン・デクーバ/Quintin de Cuba 191cm/82kg 1987年9月9日28歳
コレンドン・キンヘイム(オランダ国内) 右左 「キュラソー

2012年ハーレムベースボールウィークから代表入り。勝負強いクラッチヒッターだ。2012ユーロ決勝では劣勢の中で追撃のホームランを放つなど、パンチ力もある。2013WBCでは途中出場で、山口投手からタイムリーを放った。ここ数年はホーフトクラッセでの成績もそれほど目立ったものではなく、彼が合宿に参加できたのも少し疑問。ホームタウンでの合宿で生き残りをかけて戦う。
40試合 打率.301 本塁打4 打点26 OPS.784
19.Quintin de Cuba

【内野】

○ケフィン・モスキート/Kevin Moesquit 177cm/81kg 1991年6月20日24歳
コレンドン・キンハイム(オランダ国内) 右右 「キュラソー」 セカンド

20歳からの3年間はエンジェルス参加のRk、Aでプレー。リリースされるとホーフトクラッセへ渡ってきた。2014の21Uワールドカップにもオーバーエイジ枠で選出され、チームを引っ張った。ケンプ同様、小柄ながらパンチ力を秘めており、守備も無難にはこなす。セカンドのベテランが引退した跡をしっかりと埋めた。
36試合 打率.314 本塁打2 打点23 OPS.869
23.Kevin Moesquit

ダッドリー・レオノラ/Dudley Leonora 185cm/69kg 1991年12月15日23歳
コレンドン・キンハイム(オランダ国内) 右右 「シントマールテン」 ショート

今季からホーフトクラッセに移籍してきた元マイナー選手。17歳からの4年間はオリオールズ傘下のRk、Aでプレーした。体格の割に長打力はない、短距離ヒッター。今シーズンはキャプテンでショートであったクレーマーの後釜でキンハイムに加入し、守備面では遜色ないほどの働きは見せた。しかし、打撃面では当初4番を任せられるなど、期待をかけられたが、それに見合うだけの成績は残すことができず、チームは急遽アメリカ人のオルティスを獲得することにもなった。彼が選ばれたのも少し疑問だ。素材があるだけにもう少しパワーをつければ面白いか?
42試合 打率.299 本塁打0 打点22 OPS.663
24.Dudley Leonora

○ダーレン・セフェリーナ/Darren Seferina 175cm/79kg 1994年1月24日21歳
セントルイス・カージナルス傘下(A) 右左 「キュラソー」セカンド

こちらもカージナルスのプロスペクトの瞬足内野手。盗塁は2年間で42個決めており、打率も安定して2割後半を維持している。今季6月には打率.410という驚異の打率を残したが、最終的には落ち着いてしまった。ただ、その月間打率を見るとポテンシャルの高さも伺える。今季はなんと12本もの三塁打を放っている。
107試合 打率.295 本塁打4 打点33 OPS.800

【外野】

○ジルマー・ランプ/Gilmer Lampe 190cm/83kg 1990年3月1日25歳
UVV 右右 「アルバ」

アルバ出身の韋駄天。2008年から5年間はマリナーズ傘下のRkでプレーした。昨年からホーフトクラッセUVVに移籍し、活躍している。瞬足を活かした外野守備は広い守備範囲を誇り、20盗塁をマーク。しかし、打撃はまだまだ実力不足で、将来性を見据えた選出か。オデュベル、ガリアに負けない快速でアピールできるか。
42試合 打率.299 本塁打0 打点22 OPS.663
34.Gilmer Lampe

○ロジャー・バーナディナ/Roger Bernadina 188cm/98kg 1984年6月12日 31歳
アトランタ・ブレーブス傘下(AAA) 左左 ナショナルズ 「キュラソー

2012年には1年間を通してメジャーで活躍した元メジャー戦士。どんな飛球も迫力あるだいぶでキャッチしてしまうことからシャークの異名を持つ。メジャーでは伏兵として活躍し、チームを支えた。フェンス際のプレーはピカイチで、打撃でもメジャー通算28本の本塁打を放っていてパンチ力がある。かつてはオランダリーグのフーフトクラッセでプレーしていたこともある。今季は1年を通してAAAでプレーし、メジャーには上がれなかったが、それが幸いしこの大会でオランダ代表としてプレーできる。
119試合 打率.276 本塁打15 打点62 OPS.849
32.Roger Bernadina

オランダ球界ニュース-ヨーロッパプロ野球リーグELB構想など

2015-09-13 10:50:19 の記事です。

 

 先日、欧州の野球クラブ1を決めるヨーロッパカップの決勝が行われた。結果は、オランダのネプチューンズが、イタリアのボローニャを下して優勝。オランダのクラブによるヨーロッパ制覇は2007年のキンハイム以来8年ぶり。

 ボローニャで行われた初戦。たくさんのボローニャファンが詰めかけたアウェー状態で行われた試合の先発はインテマ。4回を4安打4四死球4失点と役割を果たせず、打線も相手の助っ人投手フレミング相手に9三振を喫し惜敗してしまします。  あとがない状況で行われた第2戦の会場はロッテルダム。エースのマークウェルが7回途中2失点で先発の役割を果たす。すると、8回裏にレヒトのヒットでランナーを3塁に進めると、次のブークハウトのセカンドゴロを、イタリア代表の名手バリオが暴投。ついに勝ち越しに成功します。その後は、守護神ルーク・ファンミルがきっちりと抑え、1勝1敗の五分に。先に2勝した方が優勝となる決勝ラウンドは最終戦へ突入します。 最終戦の先発は移籍1年目でしっかりと先発ローテを守ってきたベルギー代表のケニーファンデンブランデン。6回を6奪三振1失点に抑え、イタリアのクラブ相手に通用するところを見せつけます。一方の打撃陣は初回にファンデルミールが2点タイムリーを放ち、幸先よく先制。4回にはケンプ、ディレ、レヒトの3連続タイムリーで一挙5得点。一気にボローニャを突き放しました。リリーフで登板したケリーは2回を4奪三振と圧巻の投球。9回抑えとしてはファンミルではなくファンドリールが登板。実は昨年、守護神だった彼がヨーロッパカップ予選ラウンド最終戦でリリーフ失敗を犯し、ネプチューンズは敗北。そんな彼に対するサプライズ演出の面もあったかもしれません。そうやって背中を押されて登板したファンドリールですが、バリオのタイムリーなどで2点を奪われますが、最後はしっかり三振に打ち取りゲームセット。オランダでは強さを見せつけてきたネプチューンズが悲願のヨーロッパ制覇を達成しました。 最終戦ハイライト動画です。

ネプチューンズ優勝の瞬間

ネプチューンズナインとスタンドのファン

喜ぶネプチューンズナイン

These photos were taken by Michel Sterrenberg.

 エトゥーン監督は就任当初からヨーロッパ制覇の必要性を強調。そのためにチーム作りを行ってきました。長年の課題であった捕手はマイナー帰りでアルバ出身のブークハウトを獲得することで解決。若手育成のためにケンプ弟を、Bクラスのホークスへ1年間移籍させ、経験させてからネプチューンズに再び戻し成長を促しました。積極的な補強も目立ち、今季は日本球界から復帰した元楽天のファンミルを獲得。ベルギー代表のファンデンブランデン、昨季他チームでブレイクしたディアスを獲得。そうした補強してきた選手の活躍も大いに目立ちました。

 国内ホーフトクラッセではシーズン1位だったL&Dアムステルダムパイレーツにプレーオフで3連勝。オランダシリーズ進出を決め、今月12日からコレンドン・キンハイムを相手に戦いが始まります。2連覇中のネプチューンズは3連覇なるのか。 過去のこのカードのオランダシリーズは4度。今回が5度目になります。過去の結果は2勝2敗の五分。直近の2012年にはネプチューンズは4タテをくらって敗北したという苦い思い出があります。くしくもエトゥーン監督の就任は2013年。悪夢のオランダシリーズの記憶にリベンジをする絶好のチャンスだ。就任3年のチーム作りで、どんな戦いを見せるのか見ものだ。

 

 一方のキンハイム。今年は大きくメンバーが様変わりしました。ショートで主将を担っていたクレーマーが引退。補強に動き、ホークスからマイナー帰りのモスキート、これまたマイナー帰りのレオノラ、HCAWからカイザーを獲得し戦力を整えました。昨年にも代表捕手でマイナー帰りのリカルドを獲得しており、アンティル系の選手を多く抱えた球団になりつつあります。また、シーズン途中にはホーフトクラッセ数球団を渡り歩いてきたアメリカ人のオルティスを獲得。打線は厚みをましています。 また、ルーキーチームの若手選手を多数起用。経験を積ませながら、育成にも力を入れています。 先発には代表のスタイフベルヘンが復帰し、若手のヴァシンクも成長。左腕フェルトカンプの不調もあり、元代表で中継ぎ転向を表明していたベルフマンが結局8試合に先発。リリーフ登板も含め、8勝をマークし、今年も勝ち頭になりました。中継ぎエースのヴァルスマは防御率1.30と抜群の安定感。層の厚さではネプチューンズに及ばないかもしれませんが、実力は負けておりません。

 今年最後になったオランダ国内リーグ・ホーフトクラッセ。数少ないテレビ中継もありそうですので、随時twitter(@macchakiromen)でお知らせしていきます。お見逃しなく。

予告先発】第1戦 ネ・マークウェル vs キ・ベルフマン第2戦 ネ・インテマ   vs キ・ヴァシンク

 ではまた、違うニュースに移ります。今年5月、ヨーロッパ野球リーグ(ELB)構想が電撃的に発表され、ヨーロッパプロ野球連盟(EAPB)が発足しました。なんとその発起人は、日本NPB福岡ソフトバンクホークスで活躍しているリック・ファンデンハルク(登録名バンデンハーク)も父親ヴィム・ファンデンハルク氏。 当初はオランダ・イタリア・ドイツ・スペイン・フランスの5カ国から2チームずつ、計10チームによる1リーグ制の構想が発表されました。オランダからの傘下クラブとしてはキュラソーネプチューンズ(ロッテルダム)とファエッセン・パイオニアーズ(ホーフトドルプ)。 ところが先日、続報が報じられ、パイオニアーズに代わってL&Dアムステルダムパイレーツが参入することが報じられました。理由は直接述べられてはいませんが、おそらく実力の面でパイレーツの方が成績を残してきていることが評価されたようです。当初はメインスポンサーのL&Dサポートが今季限りでのスポンサー撤退が囁かれるなど、財政的な厳しさの面でパイレーツが除外されている、との憶測も飛び交いました。しかし、パイレーツのファンティヘーレン会長やデビー会計がEAPB側と粘り強く交渉を続け、パイレーツの参入に持ち込むことができました。 やはりパイレーツ自身にもオランダNO,2との自負があったのでしょう。また、補強をあまりせずに育成中心でチーム作りをしたパイレーツが入ることはオランダ球界にとってもいいことかもしれません。若い国内の選手がプロ選手になれるという希望をもてますから。

 これで、現段階ではオランダからネプチューンズとパイレーツが「プロリーグ」に参入することが決まりました。現行の各国内リーグは基本的に週末に試合を行っているリーグが多いので(ホーフトクラッセは木・土・日)、ELBは平日に2試合を行うようです。ですので、オランダのネプチューンズとパイレーツは、ホーフトクラッセの木土日3試合と、平日にもう2試合。合計で1週間に5試合が消化されていくことになる。国際野球団体の「ベースボールブリッジ」が運営する、Facebookページ「ELBJapna」によると、ELBでは各チーム年間36試合を戦う模様。要するに、1チームを相手に4試合×9=36試合。但、同じ国のリーグに所属するチーム同士の試合は、各国のリーグ戦でのそのカードの4試合の結果を充当すると予想されます。ですので、年間で32試合が今までのスケジュールに追加されるということです。 ホーフトクラッセの1シーズンの試合数が42試合ですので、それに32試合を追加すれば、計74試合。ELBに参加する2チームは年間を通して、より大きい規模で野球をプレーすることが可能になります。ELBはもちろん「プロリーグ」ですので、給与が出ます。現段階ではどれほどの額の給与が支給されるのか、定かではありません。が、セミプロであるホーフトクラッセの選手たちの多くが、副業を持っているのが実情です。こうした選手たちが将来的に副業をしなくても、食べていけるようなリーグにしていくのが理想でしょう。 しかし、現実は甘くありません。ここ近年、正直ホーフトクラッセの観客動員数は現象の一途。テレビで中継される機会も減ってしまっています。そんな中で、ホーフトクラッセの選手たちは、平日に行われるELBの試合に行くことが可能なのか。最も遠いところではチェコまで遠征しなければなりません。こうした、副業との兼ね合いも大きな課題になってきそうです。代表選手などの主力以外は、基本的に副業を持ったり、大学に通っていますから。 私で考える分には、よほど大きいスポンサーをとってくるぐらいしか解決策を思いつきません。ELBを長く存続させていくには、必ず解決しなくてはいけない問題でしょう。ホーフトクラッセのプロ化も10年ほど前に計画されながら、結局セミプロの形で今日まで来ています。その理由もこのあたりにありそう。

 

 

 また、もうひとつの問題もあります。それはホーフトクラッセ他チームの不公平感。実際、パイレーツが参入のために交渉を続けてきたのも、パイオニアーズより成績がいいのになぜ私たちは参加できないのか?という不公平感に端を発しているはず。これと同じように、ホーフトクラッセの他のAクラスのチームも不満を持たないはずがありません。キンハイムはオランダシリーズに出られるというところまで勝ち上がったわけですし、パイオニアーズもBクラスのチームには実力差を見せつけています。ホーフトクラッセでの成績で、入れ替え戦などの機会を設けることも検討していかなければならないでしょう。しかし、入れ替え戦などの結果により、所属の選手がプロとして給料をもらえていたのが、すぐに降格することで再び副業を探す必要性が生じるなど、選手の生活基盤が不安定になることも予想されます。こちらの問題も解決するのは非常に難しそうです。 将来的には、ELBのリーグ自体の規模を大きくしていくことで、より多くのチームが参加できるようになるのが理想。ただ、それまでの道のりは決して短くないはず。それまでは、なんとか各チームの意見を集約してやりくりしていくしかないでしょう。

 さて、このように問題点が少なくないことは事実。が、ヨーロッパにプロリーグができるというのはもちろん喜ばしいことです。ネプチューンズボローニャのヨーロッパカップ決勝を見ても、熱い戦いが見れるのは一目瞭然です。ELBの存在、更には発展によってヨーロッパでの野球の人気と存在がより大きくなっていくことに期待できます。また、個人的にはこのリーグの成功の先にはそれぞれの国内リーグの成功・発展がなければならないと思っています。ELBを入口として各国内リーグへファンを取り込んでいかなければならない。国内リーグを無視した、ヨーロッパリーグ構想であってはならないのです。 それは、ELB側も分かっているようで、当初は平日に試合をすることからも、国内リーグありきのヨーロッパプロリーグという認識を垣間見ることができます。将来、どのような発展を遂げていくかはわからないが、これまで歴史を積み重ねてきた国内リーグの発展こそが、その先に見えてくればいいな、思っている。ELBが国内リーグを維持したまま発展していけるのか、というところに注視していきます。

プレミア12から見るオランダ球界

2015-09-09 03:52:23 の記事です。
 
 先日、プレミア12へのメジャー40人枠の選手は参加しない旨で、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)とMLB(メジャーリーグ機構)が合意しました。
 
 侍ジャパンとしては、イチロー田中将大をはじめとしたメジャーリーガーたちが参加できないことで、戦力的にも話題的にも尻すぼみになる感は否めません。また、アメリカ、ドミニカ共和国をはじめとした、メジャーリーガーを多く抱えた国々がトップ選手を送ってこれないことになる。
   こうした現状の「プレミア12」という大会に懐疑的な意見や論調が少なからずあることは、「オランダ野球オタク」という変わった趣味を持つ私としては残念です。ただし、日本の野球しか知らない、また興味のない大多数の野球ファンから見ると、当然の成り行きであります。
 
 しかし、見方を変えれば、「プレミア12」というこの大会の秘める可能性や潜在力もまた読み取れるのではないでしょうか。世界ナンバー2の野球リーグを持つNPBが本腰を入れて、トップ選手を送り込むことで大会のレベルを相当なところまで押し上げることができます。また、アジアにおいて存在感の強いNPBの本気度を見た、韓国や台湾といった国のプロリーグも現段階ではトップ選手を送り込もうと意気込んでいます。他にも、ドミニカ共和国は日本やマイナー、メキシコなどでプレーする選手を厳選し大会に望む、というような噂も耳にします。
 このように、WBCとは別枠でMLB抜きでもNPBを中心としたプロリーグが中心になって大きな国際大会を開催していくことは、「国際野球」という文化を定着させていく上で一つの大きな鍵になりうるのではないでしょうか。このような大会が開かれること自体、史上稀に見ることだと思います。このことだけでもオリンピック復帰に向けた大きなアピール材料になるでしょう。
 ただの「オランダ野球好き」がつぶやくのもここまでにしておいて、後はブログ「世界の野球」さんの記事を拝見して頂ければ、この大会に関する情報は整理できると思います。
 
 さて、ではオランダ代表はこのプレミア12にどのような布陣で望むことになるでしょうか。メジャー40人枠の選手の参加が見送られたため、アンドレルトン・シモンズ、ディディ・グレゴリウス、ケンリー・ヤンセン、ヨナサン・スコープ、サンダー・ボガーツら、の招集は断念せざるを得ません。よって、基本的には国内リーグホーフトクラッセの選手+マイナーリーガー+その他海外のプロリーガーで構成されることになるでしょう。簡単に言えば、野球ユーロでのオランダ代表にバレンティン、フェンデンハルク(バンデンハーク)ら日本でプレーする選手が加わる形です。
 こうして見ると、国内でプレーする選手を半分近く抱えたオランダ代表が世界でどこまでやれるかを見る、数少ない大会になります。私のようなオランダ野球好き。もっと言うと、ホーフトクラッセ好きにとってはこの上なく貴重な、興奮する大会になるのです。
 元はといえば、私がオランダ野球に興味を惹かれた発端も、WBCで触れた国内選手の活躍です。当時の正捕手シドニー・デヨングがメジャーの投手から強烈なあたりを放つの見て、オランダ国内にもこんなに良い選手がいるものか、と感動した記憶があります。
 
 話は変わりますが、先日オランダの大ベテランが引退を発表しました。23年に渡り、ホーフトクラッセでプレーしてきたディルク・ファント・クロースター外野手です。通算成績では906試合に出場し、リーグ史上最多となる1215安打をマーク。彼は1998年から2011年の間、オランダ代表でも215試合に出場し、シドニーアテネ、北京の五輪に出場しました。WBCでもマイナーリーガーと肩を並べて出場し、2009年大会ではオランダ初の2次ラウンド進出に大きく貢献しました。彼の引退は、オランダ球界にとって非常に大きな痛手で、また、転換期でもあるでしょう。
 
 しかし、彼に代わるような実力を備えた野手がホーフトクラッセにいるのか、と言うとそうではありません。先日開催されたオランダ主催のハーレムベースボールウィーク。この大会で外野手登録された3人はダーンティ、ロンブリー、ディアス。前者二人は既に三十路を迎えたベテラン選手であり、後者のディアスはこの大会で新人王を獲得し、国内リーグでも圧倒的な打率をマークしたものの、オランダ王国構成国カリブ海のアルバ出身。オランダ国内の育成によって、台頭してきているような若手外野手はあまり見当たりません。
 内野手でも長年代表に入り、現在はキャプテンを勤めているマイケル・デュルスマがいますが、高齢により成績も急降下。最早、代表に呼ぶ水準には達していないでしょう。ポストデュルスマとしては、アメリカの大学で活躍しているステイン・ファンデルミールが台頭しているのが幸い。
 サンフランシスコ・ジャイアンツでメジャーリーガーとしてプレーし、後にL&Dアムステルダムパイレーツを率いて優勝へ導いたこともあるリカート・ファネイテ。彼はパイレーツの監督を退いた後、数年間野球から離れた生活を送っていた。そんな彼が、数年ぶりに野球を見るために、昨年のオランダシリーズの会場を訪れた時にこう述べた。
 
「オランダの野球のレベルの低下に驚いた。何かしらの形で、またグラウンドに戻ってこなければならない。」
 
 彼は今年に入ってから、野球教室やコーチング研修を数度開催している。彼の真意はわかりかねるが、クロースターに続くような国内の外野手が育っていない現状を鑑みると、彼が言わんとすることもわかる気はする。
 
 
 ただしかし、しっかりと結果を残しながら、代表に呼んでもらえていない選手がいるのも実状だ。パイレーツのレムコ・ドライヤーはキンハイム時代から安定して3割をマーク。セーフティバントは巧みで、堅実な守備も光る。また、同じくパイレーツのベルケンボスも安定して3割をマークし、昨年は7本塁打を記録。今シーズン、ネプチューンズに復帰したフェルノーイもいきなり打率.333をマークし、ブランクを感じさせない活躍を見せた。
 しかし、こうした活躍を見せるオランダ人選手の存在をよそに、ホーフトクラッセから代表に選ばれる選手にはマイナー帰りのアンティル系(キュラソー、アルバ)選手が目立つ。彼らの多くが、国内のオランダ人選手と同等か、もしくはそれ以下の成績のこともある。もちろん、彼らは国内の選手よりはるかにレベルの高い米マイナーで経験を積んできており、才能を持った選手が多数なのは言うまでもない。
 一方、既に副業を持ちながらプレーし、生活の基盤があるオランダ人選手に比べ、野球をするだけのためにオランダ本国にやってきた彼らの生活基盤は不安定だ。クラブからの収入は微々たるものである。唯一安定して給与が出るのが、オランダ代表でのオランダ野球協会からによるものだ。こうしたマイナー帰りのアンティル系選手を代表から外すということは、彼らのオランダでの生活基盤を切り離すことに直結しているのだ。
 以上は、完全なる事実ではなく、私の推測であるが、こうした事実は明らかに読み取れることができる。WBC2013オランダ代表監督でサンフランシスコ・ジャイアンツの打撃コーチでもあるミューレンスは、オランダ球界の発展、国内リーグのレベルアップのために、マイナーをクビになった選手たちを次々にオランダ国内へ紹介し送り込んできた。しかし、その努力は、国内のオランダ人選手が代表に入るための高いハードルを作ってしまった面もあるのではなかろうか。
 
 プレミア12はオランダ国内ホーフトクラッセの選手を、国際舞台で見られる数少ない機会だ。その機会に、ホーフトクラッセの選手がアンティル系選手ばかりだと、オランダ本国だけをイメージしている日本の一般の方々も少し興ざめかもしれない(もちろんアンティル系選手を批判しているわけでもないし、彼らの活躍がなければ、今日のオランダ野球の飛躍・発展はありえない)。
 これからのオランダ球界に必要なのは、アンティル系選手にも引けを取らないような実力の選手を国内から排出していくこと。そして、「プレミア12に出るんだ」というように、オランダ代表に選ばれることを目標にできるような代表選考の仕組み、またアンティル系選手の「輸入」の仕方を模索していくことだろう。

ワールドポートトーナメント2015総括

2015-08-03 21:40:27 の記事です。

 

 オランダ野球ソフトボール協会KNBSBは隔年で二つの国際大会を主催しています(厳密に言うと主催元は違いますが)。その一つがこのワールドポートトーナメント。もう一つがハーレムベースボールウィーク。この二つの大会のおかげで、オランダ代表は、WBCなどの大きな国際大会があるなしにかかわらず、毎年代表チームとして闘うことが出来るということです。また、これらの大会の開催期間がいずれも7月だということもあり、チーム編成は国内リーグのホーフトクラッセの選手のみで形成されます。言わば、ホーフトクラッセでプレーする選手が目指す場所が、この二つの大会だといっても過言ではないでしょう。

 参加チームも幅広い。国際大会ではおなじみのキューバをはじめ、アメリカ、台湾、そして我が日本。それぞれのチームが大学生や社会人などで編成されます。二つの大会に過去参加した有名選手を挙げると、キューバのヤシエル・プイグ(ロサンゼルスドジャース)、ユリエスキー・グリエル(元横浜)、アルフレッド・デスパイネ(千葉ロッテ)、フレデリック・セペダ(巨人)。アメリカでは大物ルーキークリス・ブライアント(シカゴカブス)。日本でも巽真悟(ソフトバンク)、伊志嶺翔大(ロッテ)、大野雄大(中日)、山崎康晃(横浜)、山崎福也(オリックス)、田中正義(創価大)など大物揃い。こうした未来のスター選手や、キューバ勢の現在のスター選手が参加する中で、オランダ国内組だけのチームがどこまで戦えるのか、を計ることが出来る貴重な大会でもあるのです。

 今回の参加チームはキューバ、台湾、日本、キュラソー、そしてオランダ。キューバは主力メンバーがカナダで行われていたパンアメリカ大会に出場していたこともありB代表での参加。台湾はユニバーシアードにも出場した選手もいたもののプロ入りを控えた王柏融、林子崴、宋家豪、林志賢らがその準備を理由に不参加に。日本は阪神圏の大阪体育大学関西国際大学天理大学帝塚山大学大阪産業大学甲南大学から選抜した24名。昨年のハーレムでは侍ジャパンとして、全日本の大学代表だったことを鑑みると戦力が落ちたことは否めません。以上より、オランダ代表が優勝候補、そして優勝しなければいけなかったことは明白でした。

 結果は準優勝。決勝はキューバ相手に競り負けてしまいました。しかし、敗戦はこの決勝のみ。予選から決勝に至るまでのオランダの試合結果と内容を見ていただければ、オランダが安定した野球でいかに充実した大会を送ったのか理解していただけるでしょう。

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勝戦に敗れ落ち込むオランダナイン

第1戦 台湾 5-6× オランダ 勝:コルネリッセ 

第2戦 オランダ 10-6 キュラソー 勝:ヘイステック 

第3戦 オランダ 12-7 キューバ 勝:ファンドリール 

第4戦 日本 1-2× オランダ 勝:プルーヘル  

第5戦 オランダ 8-4 キューバ 勝:ボルセンブルーク 

第6戦 オランダ 19-1 キュラソー 勝:マークウェル 

決勝 キューバ 5-3 オランダ 負:コルデマンス計7戦 6勝 1敗

 オランダ主催の大会でのオランダの優勝は2010年のハーレムが最後。それ以来の5年ぶりの優勝のチャンスだったんですが。残念。しかし、内容は悪くありませんでした。投手陣が多少打ち込まれることはあったものの、打線が活発。サヨナラ勝ちが2回と、勝負強さも目立ちました。では、今大会のオランダ代表を細かく見ていきます。

 

○投手陣 

  まず、先発投手陣を見ていきます。オランダの全6勝の内、先発投手に勝ちがついたのは3つ。ヘイステック、ボルセンブルーク、マークウェル。打線が早いイニングで得点できなかったことはありますが、3つは少ない。特に初戦と最終戦に登板したエース・コルデマンスは、それぞれ4失点、5失点と役割を果たすことができませんでした。今回の先発陣の中ではコルデマンスが40歳、マークウェルが34歳と高齢化が進んでいます。彼らは共に、侍ジャパンとのグローバルマッチにてヨーロッパの先発投手を努めたように、実績や今までのオランダ代表にもたらした功績は計り知れません。しかし、やはりチーム作りは中長期的な視座が必要になります。加えて、国内リーグホーフトクラッセにて27歳のケフィン・ヘイステックが近年圧倒的な成績を残し、成長を遂げてきています。昨年のユーロ2014の準決勝で先発を任されるなど、代表内での立ち位置も上がってきてはいるものの、自国主催で、色々なチャレンジができる大会だからこそ、ヘイステックを決勝に当てるといった、攻める采配を見てみたいものです。 

   くしくも、ドイツ・ブンデスリーガ所属、28歳のボルセンブルークも代表で昨年はノーヒットノーランを達成。今大会でもキューバ戦で7回5被安打3奪三振1失点と快投を披露しました。数年前までのように、レジェンド二人に取って代わるような存在がいないわけではありません。また、侍ジャパン戦で豪腕を披露したトム・スタイフベルヘンが故障のため不在でしたが、彼ら3人を先発の軸に添えたチーム作りに期待したいところです。

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ケフィン・ヘイステック

  リリーフに関しては、NPB楽天からオランダに帰国したルーク・ファンミルが守護神に君臨したことで、安定した戦いの一助になりました。また、それまで守護神を務めていた、若き豪腕コルネリッセ22歳がセットアッパーを務めることで、ちょっとした勝利の方程式を作ることができました。加えて、国内で台頭してきたプルーヘルが、代表の中継ぎ左腕として貴重な働きをしました。近年、代表では左腕がマークウェルだけという異常事態が続いていました。彼や、アムステルダムで活躍している左腕ヴァルドが中継ぎに加われれば、プレミア12でも継投の幅が広がります。今回は先発しましたが、ネプチューンズのストッパー・ケリーもいます。彼は先発でも90マイルを超えてくる豪腕。WBC2013の際には、中継ぎで新しい投手が出てくるたびにレベルが落ちる、と揶揄されたオランダ代表。コルネリッセの復調、左腕2人の台頭により多少は改善できるでしょうか。

 

○打撃陣 

  今回、なんと最終的に3割を超えた打者が6名(ダーンティ、デクーバ、モスキート、レオノラ、ケンプ、ディアス)。シーズンで好調を維持していたダーンティ、ケンプ、ディアスらを選出し、効果的に起用したのが的中したのだと思います。これはあっぱれ。 中でも存在感を示したのがドゥエイン・ケンプ。内野は全て、外野もある程度はこなせる彼は使い勝手のいい選手。打撃にはパンチ力もあり長打も期待できる上に、セーフティバント、盗塁等、足を使って機動力も発揮できます。プレミア12では米マイナーからキュラソー組の野手がスタメンに名を連ねることになりましょうが、彼のような存在はユーティリティプレーヤーとして、十二分に戦力になるのではないでしょうか。怪我人が出た際のスタメンも十分に務まると考えます。

 今回オランダとしては非常に得点力が向上しました。中でもともに7打点を挙げたのがロンブリーとリカルド。ロンブリーは長年代表を支えてきたベテランとして、予想内の結果ですが、リカルドは打てる捕手として米マイナーで期待されたにもかかわらず、昨年から移籍してきたオランダホーフトクラッセでも.260。大きく期待を裏切った状態でした。しかし、今年は息を吹き返した様にシーズン打率は4割を超えました。大会でも彼は勝負強さを発揮し、チームの得点力向上に一役かいました。今回の嬉しい誤算でしょう。

 課題としてあげるのは長打。優勝したキューバ本塁打数が6だったのに比べ、オランダのそれはモスキートの1本のみ。ホーフトクラッセにもホームランバッターが育っているわけではなく、すぐに解決できる問題ではないでしょうが、ホームランバッター育成はオランダ野球上昇への長期的な課題。国内リーグホーフトクラッセのホームラン王も近年はキュラソー系がほとんど。オランダ本土からでもホームランバッターを供給できるようになれば、いうことはないでしょう。

 守備に関しては、現在米ラマー大学の中心選手として、来年度のドラフトでMLB入を目指しているステイン・ファンデルミールが目立ちました。彼の安定感ある守備は日本の選手たちも目を見開いていたとか。

 

【個人成績受賞】 

首位打者 ヤシエル・サントーヤ(キューバ

最優秀防御率 ディエゴマー・マークウェル(オランダ) 

・MVP ルルデス・グリエル(キューバ

・ホームラン王 オスヴァルド・ヴァスケス(キューバ)

・新人王 クリスティアン・ディアス(オランダ)

・最人気選手 デゥエイン・ケンプ(オランダ)

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ドゥエイン・ケンプ

○優勝チーム・キューバについて 

  今回の優勝もまたもキューバ。B代表とは言え、侮れないことは百も承知でした。ほとんどのメンバーはキューバリーグ各チームの主力級でシーズン3割越え。キューバ球界のホープで、横浜と一時は契約を結んだルルデス・グリエルもメンバー入りということで、メジャーのスカウトが大勢詰めかけました。 

  3本の本塁打を放ち、大会本塁打王に輝いたヴァスケスはキューバリーグ優勝チーム・シエゴデアヴィラの正捕手。9番を打った35歳フィスもシエゴデアヴィラ所属でシーズン11本の本塁打を放っています。こうしたことを鑑みても非常に強力な打線を揃えてきたことが伺えます。監督はWBC2013で指揮を執ったヴィクトル・メサという気合の入れようでした。

  しかし、ボルセンブルークが7回1失点に抑えたように、この打線を抑えられる先発陣がいることも証明できました。これは自信にしていいと思います。

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歓喜のメサ監督

 一方の投手陣。オランダ代表が唯一苦戦したと言っていい投手は決勝で先発したモンシートだけでしょうか。彼からは11回と3分の2で3得点に抑えられました。しかし、キューバ戦3試合でオランダの合計得点は23点。キューバB投手陣程度なら国内組だけでも打ち崩せる自信をつけることができたのではないでしょうか。 

  2勝1敗という結果から見ても、最早恐る相手ではないことは明白です。

 

○プレミア12への展望 プレミア12への展望ならび提言としていくつか述べます。

・先発投手人若返りへの挑戦 

  スタイフベルヘン、ヘイステック、ボルセンブルークを中心に。 

⇒国外でプレーする有力な先発投手と言っても    ホークスのファンデンハルク、米マイナーのスルバラン程度。先発投手は国内のみで大丈夫、と言われるような先発陣を作るためにも中長期的な育成を。

  元カブスプロスペクト、ラルス・ハイヤーにも期待。

 ・機動力攻撃の活用

 ケンプらの活躍 

⇒前回WBCの決勝ラウンド進出を決めたキューバ戦でもオデュベルらの足で かき回す攻撃がキューバを慌てさせた。特に国際大会で好投手が出てくればなかなか打てるものではない。その中で、盗塁やセーフティバントができるケンプ、ドライヤー(アムステルダム所属)などの選手が控えにいれば心強いし、スタメンでも十分使い得る。

○おわりに 

   今大会を一言で表すなら、オランダ代表の成長が見えた大会だったのではないでしょうか。優勝できなかったということに、目に見えて課題が残りましたが、優勝はプレミア12に期待しましょう。 

   今回のワールドポートトーナメントはキューバがパンアメリカ大会とかぶりB代表。日本、台湾もユニバーシアードと日程が近く大学生のトップチームを集めることができませんでした。少しの日程調整で、よりいいチームが編成できたかもしれませんので、そういった工夫にも次は期待したい。以前に例がある様に、ドイツやイタリアなどヨーロッパのライバルの参加もぜひ検討して欲しいところです。 

   では、オランダ国内リーグも残り1カードでレギュラーシーズン終了。ポストシーズンへ突入します。プレーオフは例年通りのメンツになりましたが、オランダシリーズへ進むのはどこのチームか?楽しみです。結果はTwitterでも随時紹介していきます。

 

These photos were taken by Henk Seppen and Michel Sterrenberg. 

※これら使用しました写真は現地のカメラマンから直接提供していただいております。無断での使用・転載等は固くお断りします。

WPT 2015 大会を終えて

2015-08-03 04:24:33 の記事です。

 

最終順位

優勝 キューバ
準優勝 オランダ
3位 キュラソー
4位 日本及びチャイニーズ・タイペイ

各賞発表

ベストヒッター / ヤシエル・サントーヤ(#41・キューバ)
ベストピッチャー / ディエゴマー・マークウェル(#36・オランダ)
ホームランキング / オズワルド・バスケス(#31・キューバ)
最優秀選手 / ルルデス・グリエル(#91・キューバ)
最多人気投票 / ドゥウェイン・ケンプ(#7・オランダ)
最優秀新人 / クリスティアン・ディアス(#32・オランダ)
ドナルドバックスアワード / ライリー・レヒト(#30・キュラソー)


最優秀新人賞のクリスティアン・ディアス選手

木戸地 一希キャプテン
最多人気投票3位の木戸地一希選手(日本チーム主将)

ワールドポートトーナメント2015はキュラソーや日本も出場している事もあり、各方面から注目度の高い大会になりました。その中でも目を引いたのがキューバの注目度の高さ。もちろんメディアではなくMLBからの注目です。今大会はこのブログだけではなく主催者側で記事を書いていた事もあり、毎日球場にいました。大会期間中見かけたスカウトは15球団。日本でもお馴染みのボストン・レッドソックスシアトル・マリナーズサンフランシスコ・ジャイアンツetc…。よく隣に居たサンフランシスコ・ジャイアンツキューバ担当マネージャーと話をしましたが、彼はU-12、U-15から今回のシニア年代まで全カテゴリーのキューバ代表を追っていました。その背景にはアメリカとキューバの国交正常化への動きも多分にあるようです。

残念ながら大会期間中に見かけたNPB、独立、メディアと日本人の方はいませんでした。日本代表以外の日本人関係者は私だけでした。寂しい限りです。日本やアジアでも国際大会があるのでわざわざヨーロッパに来る意味もないのですが、そうしている間にMLBはヨーロッパ野球、球界にどんどん投資をしています。ヨーロッパでは各地にMLBのアカデミーもあり、MLB主催のトーナメントも開催されています。

日本に情報が入ってこないだけで、ヨーロッパにも良い選手はいます。また日本側も英語が不得手な為、ヨーロッパにアプローチが出来ていません。NPBには英語でも中国語(繁体)でもホームページが無い球団があります。これはさすがにドメスティック過ぎると言わざるをないです。

ヨーロッパはサッカー人気が圧倒的に強いので、ビジネス市場としての成長は微々たるものだと思います。ただ選手単体で見れば、今後面白い市場になるのではないかと思います。NPBでも試合に出る事が出来るレベルの選手もいます。

まだまだ北中米からの助っ人外国人獲得がほとんどですが、今後このような活動を通してオランダを中心としたヨーロッパ野球と日本野球の交流の一助になればと思います。

ユニ交換・台湾
チャイニーズ・タイペイとのユニフォーム交換

集合写真
WPT2015日本代表・阪神ジャパン

WPT 2015 オランダ 決勝 vs キューバ

2015-08-03 03:16:16 の記事です。

 

7月26日(日) 決勝 vs キューバ

ワールドポートトーナメント2015、決勝のカードは地元オランダと連覇を狙うキューバ。この大会、過去14回でキューバ勢の優勝はなんと9回。オランダの優勝は2回、そして準優勝6回は全てキューバに負けたもの。観客動員数は上々、主催者にも笑顔が見られるこの大会の最後は、なんとしても地元オランダの優勝でハッピーエンディングを迎えたい所です。

オランダ
予選ラウンド
第1試合 6-5 勝 vs チャイニーズ・タイペイ
第2試合 10-6 勝 vs キュラソー
第3試合 12-7 勝 vs キューバ
第4試合 2-1 勝 vs 日本

決勝ラウンド
第1試合 8-4 勝 vs キューバ
第2試合 19-1 勝 vs キュラソー

キューバ
予選ラウンド
第1試合 4-2 勝 vs チャイニーズ・タイペイ
第2試合 13-5 勝 vs 日本
第3試合 7-12 負 vs オランダ
第4試合 11-7 勝 vs キュラソー

決勝ラウンド
第1試合 4-8 負 vs オランダ
第2試合 4-3 勝 vs チャイニーズ・タイペイ

決勝

キューバ 5-3 オランダ
勝:フランク・モンティート(キューバ) セ:ミゲル・ラヘア(キューバ)負:ロブ・コルデマンス(オランダ)

オランダ先発メンバー
1・セカンド ケフィン・モスキート(コレンドン・キンヘイム)
2・ショート スタイン・ファンデルメールキュラソーネプチューンズ
3・ライト ダニー・ロンブリー(ファエッセン・パイオニアーズ)
4・DH ジアニソン・ブークハウト(キュラソーネプチューンズ
5・サード ドゥウェイン・ケンプ(キュラソーネプチューンズ
6・レフト クリスティアン・ディアス(キュラソーネプチューンズ
7・ファースト ダドリー・レオノラ(コレンドン・キンヘイム)
8・キャッチャー ダシェンコ・リカルド(コレンドン・キンヘイム)
9・センター シャルディマー・ダーンチ(キュラソーネプチューンズ
ピッチャー ロブ・コルデマンス(L&Dアムステルダム・パイレーツ)

オランダ&キューバ国歌

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今大会すでに予選、決勝ラウンドでそれぞれ1回ずつオランダとキューバは対戦しています。ともにオランダの勝利ですが、内容、スコア共に試合の度にキューバが差を詰めて来ています。三度目の対戦でキューバが連覇を決めるのか、オランダが逃げ切るのか注目です。

オランダの先発は大エース、ロブ・コルデマンス。今大会は初戦のチャイニーズ・タイペイ戦で先発をし、8イニング被安打5失点4と勝ちはつかなかったものの試合を作りました。キューバ先発はフランク・モンティート。予選のオランダ戦でも先発、6イニング被安打1失点2で好投しました。にも関わらず、決勝でのオランダとの再戦に備えてか早めに交代、結局後続が打ち込まれ試合には負けました。

1回表、オランダのコルデマンスが早速失点します。初球をキューバ先頭のグリエルに左中間を抜かれ0アウト2塁。続くは今大会ここまで5割の打率を誇る絶好調のサントーヤ。そのサントーヤは2球目をライト前のポテンヒットでグリエルを三塁に進めると、3番グラシアルも初球と同じく早いカウントで打ちに行き6–4–3のダブルプレーの間にキューバが1点先制。失点には繋がらなかったものの、4番バスケスにも初球をレフトオーバーの二塁打を打たれるなど、キューバの積極的なバッティングに押されている様子。変化球が多彩なコルデマンスには追い込まれてからは不利と見て、ファーストストライクから早め早めに仕留めに来ています。コルデマンスの武器はあくまでも制球力。雨が降りしきるこの日のストレートは普段よりも更に遅い80-82マイル(128-131キロ)。スライダーは72マイル(115キロ)。ストレート、スライダー、チェンジアップを低めに集めない事には苦戦が予想されます。

1点を先制されたオランダは3回裏に、四球で出た1番モスキートを進塁打で2塁に送り、打率2割と低迷の4番ブークハウト。その4番のライト前で快足のモスキートが生還。同点に追いつきます。

しかしその直後、キューバが再度突き放しにかかります。4回表、4番のグラシアルから始まる好打順。4本のヒットで3点追加。5回表には1番グリエルの左中間ソロで更に1点。5対1と好投するキューバ先発モンティート相手に、なかなか厳しい点差を付けられます。

今大会のキューバ攻撃陣は特に上位打線が機能していて、1番グリエルが3割中盤、2番サントーヤが5割中盤、3番グラシアル、4番バスケスが共に4割前半と、打ちに打ちまくっています。チーム打率でも3割を超え、上位から下位、どこからでも安打が出る調子の良さを維持しています。

オランダは6回裏に1ヒット1エラーで1点を返すものの、なかなかビッグイニングは作れず。5対2とキューバリードで終盤3イニングを迎えます。

7回表からオランダのマウンドにはルーク・ファンミルが登場。勝ち試合ではクローザーで最終イニングしか出てきませんが、もうこれ以上キューバに点は与えられない試合展開。オランダ代表の中でも圧倒的なピッチングを誇るファンミルに全てを託したとも言えます。

そのファンミル、期待に応え7–9回を散発の2安打、無失点に抑えます。この日最速は97マイル(155キロ)、平均でも94マイル(150キロ)を記録。今シーズン、ほとんど投げる事の無い3イニング目でも球威、コントロールは衰えず。ストレート主体の強気のピッチングで攻め、キューバをシャットアウト。味方の逆転を待ちます。

一方のキューバは6回途中で好投のモンティートを下げます。オランダはなかなかモンティートを攻めきれずにいたので降板で流れが変わるかと思いきや、続いてマウンドに上がったのはホセ・ガルシア。94マイル(150キロ)のストレートと90マイル(144キロ)の高速スライダーを武器に三振を取る、クローザータイプのピッチャー。キューバもファンミル登板のオランダ同様、1点でも取らせないよう早いイニングから締めにきました。

7回裏のオランダの攻撃は先頭のロンブリーが出塁するも、続く4番ブークハウトがダブルプレーに打ち取られ結果は無得点。ブークハウトは4番の役割をなかなか果たせず大ブレーキとなっています。

8回裏、7番レオノラが、8番リカルドが出塁、0アウト1、2塁と好機を広げます。9番ダーンチは見逃三振に倒れるも、1番モスキートのショートへの当たりが相手のエラーを誘います。二塁にいたレオノラが生還、5対3と一点返し2点差。一塁走者のリカルドは三塁、打者のモスキートは二塁へそれぞれ進み、1アウト2、3塁とまだまだチャンスは続きます。しかしチャンスでデュールスマ、ロンブリーが連続で空振り三振。打率1割台のデュールスマに代打を送る駒もなく、せっかくの好機で1点しか取れず。チェンジで9回裏の攻撃に全てを委ねます。

9回裏、最終回の攻撃は4番のブークハウトから始まります。まだ2点差があるので、四球でもいいのでとにかく塁に出たい所。しかしカウント3–1から低めのストレートを詰まらせファーストゴロ。これでブークハウトの打率は.182まで下がりました。それでも5番ケンプがフルカウントからセンター前を放ち、まだ望みを繋ぎますが6番ディアスは2ストライクと簡単に追い込まれてからセカンドゴロでツーアウト。最後の打者になるかもしれない7番レオノラも、2ストライクから不用意に手を出しサードゴロ。5対3でゲームセット。これまで2連勝していた相手に最後の最後で負け、地元オランダの優勝はなりませんでした。

総評

攻撃面では序盤に積極的に振り得点したキューバと、終盤少し慎重になりすぎて振りに行けなかったオランダ。その差が出ました。あまり調子の良く無いコルデマンスの、甘く入ったファーストストライクを打ち得点したキューバ。一方のオランダに積極性はなく、ボールを見ているうちに追い込まれ三振、そのようなパターンが多く見られました。

9イニングを173球で投げたキューバと、97球で投げたオランダ。四球はキューバが5、オランダが0と、キューバの方が制球難で球数が多かったのは事実です。しかし同時に奪三振キューバが8、オランダが3と、オランダの消極的な攻撃が三振を多く生み出していた事も事実です。また前の試合で好投したキューバ先発のモンティート相手に、オランダは何の策もなく臨んだように見えました。

守備面ではそもそもの部分ですが、何でこの試合の先発がコルデマンスだったのか。右腕にしてもヘイステックで良かった気がします。順番ではヘイステックでなくコルデマンスですが、せっかくの大舞台を引退間近のベテランでなく、将来のオランダ投手陣を担う存在であるヘイステックに任せて欲しかったです。

オランダの課題は若手投手陣がなかなか育っていない事。今回の代表は国内組だけで、海外で活躍する若手は含まれておらず、比較的年齢が高くなる事は仕方がありません。それでもそろそろコルデマンス頼みから脱却してもいい時期なのではないでしょうか。

今大会の初戦から決勝までの先発は、ロブ・コルデマンス(40歳・右)、ケフィン・ヘイステック(27歳・右)、オーランド・インテマ(29歳・右)、ケフィン・ケリー(25歳・右)、マイク・ボルセンブローク(28歳・右)、ディエゴマー・マークウェル(34歳・左)、ロブ・コルデマンス(40歳・右)。

シーズンでの登板との兼ね合いもありますが、右腕に関していえばこの登板順そのものが今回の代表の序列だと思います。右のエース、コルデマンスは今年41歳、左のエース、マークウェルは34歳です。その他も20代後半と決して若くはありません。その中でもヘイステックは今後代表を引っ張る存在になると思います。2013年シーズンは国内リーグ最優秀防御率、2014年は最多勝、今季もコルデマンスとチームの二本柱として大車輪の活躍です。欧州代表にも選ばれていて、国際経験も豊富。ここで任せなければいつ任せるのか、と疑問に思いました。

「コルデマンスで優勝を逃したら仕方が無い」と誰もが納得するのかもしれませんが、これまで長年コルデマンスに背負わせ過ぎました。そろそろ右のエースをヘイステックらに任せ、コルデマンスを中継ぎに置くなど配置転換をする頃なのかもしれません。


オランダ代表のスティーフ・ヤンセン監督(中)
観戦に来ていたドイツブンデスリーガのケルン・カージナルス所属、杉尾拓郎投手(左)と廣高竜世選手(右)


日本でもお馴染みルーク・ファンミル投手と